自民党が2017年2月に導入の検討に着手した新型国債。使い道を限定し、大学などの高等教育の授業料を無償化した場合の財源(約5兆円)とする。当面、政府が毎年まとめる「骨太の方針」への明記を目指す方針。

 高等教育の無償化を巡っては、民進党が子育て・教育に限定して使う「子ども国債」の発行を提言。自民党の教育国債に先立って表明したもの。無償化の財源については、子ども国債の発行とともに、消費税率10%への引き上げの際の税収分1%などで充当する。民進党は次期衆院選で掲げる政権公約の柱に掲げ、「人への投資」を訴える構え。

 名前は違うが二つの新型国債はよく似ている。そのため、民進党の間からは「自民党の教育国債は、民進党の子ども国債のパクリだ。選挙向けで看板に掲げるだけ。自民党政権でできるかあやしい」との批判も出ている。

 実際、その実現性については、?マークがつく。財務省が強く反対しているからだ。麻生太郎財務相は同月の衆院予算委員会で「借金を子どもの世代に送ることと同じにならないか。親の世代が子どもに借金を回すということだ」と指摘。また「名を変えた赤字国債という意見は前々からある。極めて慎重にやらないといけない」と述べた。

 教育国債については、憲法改正との絡みで「自民党が日本維新の会を取り込むための方策」との見方が出ている。維新の憲法改正案に「教育の無償化」が盛り込まれているからだ。教育国債が実現するかはどうか不透明だが、その背景をみると、なにやら政局がらみの生臭さも漂う。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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