観光とホテル、旅先までの飛行機や新幹線などがセットになった旅行会社のパッケージツアー。旅行の当日、参加者は決められた時間までに、空港や駅の待ち合わせ場所に集合する。ただ、多くの飛行機や列車が発着する空港や主要駅は、敷地も広く、通路も入り組んでいるため、慣れていないと集合場所をなかなか見つけられないこともある。また、道に迷って集合時間に遅れてツアーが出発してしまったということにもなりかねない。

 そんな不安を抱えている人は案外多いのか、このところ、空港や駅でのパック旅行の集合場所を事前に確認する下見ツアーが人気となっている。

 「集合場所確認ツアー」を提供しているのは、旅行会社の「クラブツーリズム」で、ひとり旅限定プランのプレ企画として2015年に始められた。羽田空港や成田空港、東京駅、関西国際空港などの集合場所を事前に確認してもらうことで、不安を解消し、安心してひとり旅に参加してもらうのがツアーの目的だ。参加者の年齢層は、20~80歳代までと幅広い。

 下見ツアーでは、たんに集合場所を確認するだけではなく、羽田空港の第1ターミナルと第2ターミナルを歩いて移動したり、空港につながるモノレールの駅の名称がそれぞれのターミナルと対応していることを確認したりする。旅なれた添乗員が空港や駅を利用するときに役立つ知恵を教えてくれるので、知っておけば個人で旅行するときにも応用できる。

 集合という旅のスタートで失敗すると、落ち込む人もいるし、せっかくの楽しい旅が台無しになることもある。何事も準備万端に整えておきたい人には、願ったり叶ったりの下見ツアーだ。

 ふだん自分が暮らしている場所を離れ、非日常を過ごすのが旅というものだ。自分が知らない場所では、迷ったり、道を聞いたりするのも醍醐味で、そうしたふれあいから旅の思い出が生まれたりする。下見をして準備しておけば、失敗はなくなるかもしれないが、思い出をつくるきっかけが減るのは寂しい気もする。

 集合場所確認ツアーが人気となる背景には、失敗が許されない社会と生真面目な日本人の気質があるのかもしれない。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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