ドラマ『カルテット』(TBS系)が3月21日に最終回を迎えたことにより蔓延する喪失感のこと。最高視聴率は第9話で11.0%、平均8.9%と、数字だけ見ればそれほどでもないのだが、視聴者一人ひとりのドラマにのめり込む度合は相当深度が深かったようで、「ロス状態」に軽く悩む御仁も少なからず……といった現象が起きている。

 松たか子・松田龍平・満島ひかり・高橋一生(いっせい)を中心とする演技派揃いのキャスティングと、一話ごとに多々交わされる哲学的なセリフの数々がとくに話題となっており、それをまんま合コンやデートに使うカルテット男子やカルテット女子も激増していると聞く……いや、「聞く」ではなく、実際に筆者は何度か目の当たりにしている。

 たとえば、とある居酒屋でとなりの席に座っていた見知らぬカップル。女性が「から揚げに勝手にレモンをかけた」との理由で「レモンをかけることは不可逆! 二度と元には戻れないの!」(第1話より)と男性に向かって説教を垂れていた。

 あと、とあるバーで、やはり偶然横に座っていた男性が「告白は子どもがすること、大人は誘惑するんだよ」(第3話より)と連れの女性を口説いていた。

 こうやって、ドラマの(しかも地上波の)受け売りを臆面もなくサンプリングできる面の皮の厚い人種にとって、“名言の宝庫”を失う傷手は思いのほか大きいのかもしれない。立て続けに“カルテットなヒトたち”に出くわしてしまった筆者としては、さすがにもうお腹がいっぱいではあるが……(笑)?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


山田ゴメス(やまだ・ごめす)
日曜日「ゴメスの日曜俗語館」を担当。大阪府生まれ。エロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、漫画原作まで、記名・無記名を問わず幅広く精通するマルチライター。『現代用語の基礎知識』2005年版では「おとなの現代用語」項目、2007年版では「生活スタイル事典」項目一部を担当。現在「日刊SPA!」「All About」の連載やバラエティ番組『解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)の相談員で活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など。趣味は草野球と阪神タイガース。
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