スマートフォンの普及によって、手軽に動画が見られるようになったことで、料理レシピの世界も様変わりしている。

 「Kurashiru(クラシル)」「DELISH KITCHEN(デリッシュキッチン)」「Tastemade(テイストメイド)」「クックパッド料理動画」など、料理を作る工程を1分程度の動画で紹介する「レシピ動画」サイトが人気となっているのだ。

 たとえば、日本最大級のレシピ動画サイトの「Kurashiru」には、「鶏肉と大根のとろとろ煮」「丸ごと玉ねぎスープ」「もやしと豆苗(とうみょう)の豚巻き」など、プロ並みの本格レシピから、家の冷蔵庫の残り野菜で作れるような簡単レシピまで並んでいる。そして、料理の工程を俯瞰する動画映像にして、使う食材や分量、切り方、混ぜ方、加熱時間などをわかりやすく紹介している。

 テレビの料理番組では、料理の先生が作り方を話しながら説明する。だが、レシピ動画では、混ぜ方や火入れのタイミングなど、ポイントになる工程は文字にして印象付けるようにして、料理が苦手な人や初心者にもわかりやすく解説している。

 既存の料理本やレシピサイトなどでは文字や写真によって料理の作り方を伝えているが、表現方法は伝え手のスキルによって異なるし、受け手の知識によっても理解度は異なる。

 たとえば、野菜の切り方ひとつにしても、「大根をイチョウ切りにする」と書いても、料理が苦手でそもそも「イチョウ切り」がわからなければ、材料の切り方ひとつでも迷ってしまう。

 だが、動画なら自分の目で見て確認できるので、「イチョウ切り」がなんたるかわからなくても、文字だけでは伝えにくい料理の知識やコツが一目瞭然でわかるようになる。

 また、動画とともに流れる軽快な音楽も、見ていると「これなら、私にも作れそう」「おいしそう、作ってみたい」という気分にさせてくれる。レシピ動画が受け入れられるのもうなずける。

 世界に残る最古の料理レシピは、紀元前3000年頃にシュメール人が石板に記したビールのものだといわれている。それが、5000年が経過した現代は、レシピを記すものは動画に変わったが、大切な人たちとおいしい料理を食べることは、古今東西、いつの時代も変わらない喜びだ。

 今夜も、あなたの食卓が美味しさと幸せに満ち溢れていますように。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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