旅行新聞新社が主催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」といえば、毎年業界が注目するランキング。旅行会社の投票で選出され、「もてなし」「料理」「施設」「企画」の4つの部門、またそれらの合計ポイントによる「総合」で評価される。石川県和倉温泉の老舗旅館・加賀屋が、36年連続で1位という偉業を成し遂げたことでも有名だ。

 しかし2017年度の第42回において、その牙城はついに破られることになる。新たな「総合」1位は、福島県・母畑(ぼばた)温泉の八幡屋。部門別ではどれも1位ではなかったが、総合では前年度の9位からのジャンプアップとなった。じつはこの温泉、業界では評価が高い一方、福島の関係者でも知らないことがある。屋外プールなどの施設面もさほど珍しくなくベーシックといえるし、ビジュアルが贅沢な旅館はほかにいくらでもある。特に周囲に観光名所があるわけでもないのだ。だが、シーズンによらず一年を通して賑わい、その居心地の良さからリピーターも多いという。つまり、昔ながらの湯治場による、「無欲の勝利」なのだ。

 ちなみに、母畑温泉には「八幡太郎」こと源義家が戦(いくさ)で傷ついた愛馬を癒やした伝説が残る。八幡屋はその霊泉の上にあるとされ、ここから「八幡」の名前は来ているそうだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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