この春の大卒の就職率は、前年比0.3ポイントアップの97.6%。比較可能な記録が残る1997年3月末以降で、最も高い就職率となった(厚生労働省「大学等卒業者の就職状況調査」)。

 良好な就活環境は今年も続いており、「2018年卒マイナビ大学生就職内定率調査」によると6月15日時点の内々定率は67.7%。6月1日に大手企業の就活面接が解禁されたばかりだというのに、大学生や院生の7割が内々定を得ているという「内定インフレ」が起きている。

 学生に有利な売り手市場が続いているおかげで、複数の企業から内定をもらう学生も多い。就職氷河期時代とは異なり、内定を出した学生のすべてが、その企業に就職するわけではなくなっている。せっかく選考した学生に内定を辞退されると採用のコストや労力が増える。2015年頃には、優秀な学生が他社に流れないように就職活動の終了を強要する「オワハラ(就活終われハラスメント)」が目立つようになった。だが、問題が表面化したため、企業は内定辞退を見越して多めの採用枠を用意して、内定を乱発。それが今回の内定インフレにつながっているようだ。

 いくら売り手市場だからといって、礼儀を欠いた内定辞退は許されるものではない。だが、就職は人生を大きく左右するものだ。学生たちが、多くの選択肢のなかから納得できる企業に就職したいと思うのは当然のことだろう。

 とはいえ内定インフレはいつまでも続くものではない。経済環境が変われば、学生だけではなく労働者の雇用状況は大きく揺らぐ。かつて、就職氷河期時代に就活生だった年代には、いまだ安定した雇用につけない人もいる。

 かつて、バブル経済に踊った日本経済は、その後、後始末に追われて、失われた20年を経験することになった。雇用にとっても、行き過ぎたインフレ、行き過ぎたデフレによいことはない。就職活動する学生も、雇用する側の企業も、内定インフレに踊らされないように、地に足のついた就職活動、採用活動が必要なのではないだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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