安倍政権が2017年6月、新たな看板政策として掲げた。その狙いについて、安倍首相は「誰もが生きがいを感じ、その能力を思う存分発揮することができる、一億総活躍の日本をつくりあげていかなければならない。その本丸はあらゆる人にチャンスをつくることだ」(2017年6月19日の記者会見で)と強調した。

 日本経済の再生には、従来の「働き方改革」に加えて「人づくり」でも改革が必要との判断だ。改革の具体的な中身は、有識者会議を発足させて練り上げる方針。返済不要の給付型奨学金の拡充などが検討されている。

 要は「家庭の経済事情に関わらず、誰でも十分な高等教育まで受けることができるようにする」ということらしい。将来的には安倍首相が憲法改正の項目に掲げた「教育無償化」の実現も視野に置いているという。

 教育無償化は大いに結構。しかし、問題はその財源だ。自民党内には「教育国債」や「こども保険」などの構想があるが、「教育国債」は赤字国債にほかならず、年金保険料に上乗せして徴収する「こども保険」も国民や企業に新たな負担を強いるものだ。実現に向けてハードルは高い。

 第2次安倍政権の発足から4年半。森友学園や加計(かけ)学園の問題の対応などで、ここに来て安倍政権の内閣支持率が急落した。「人づくり革命」は文字通り看板の「付け替え」ではないか。焦りなのか、掛け声だけの「絵に描いた餅」のような感じがしてならない。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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