2015年度の「国民栄養・健康調査」によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は、2007年の28.4%から2015年は39.5%に増加。8年間で11.1%も増えている。

 理想的な睡眠時間については諸説あるが、死亡率がもっとも低いのは6.5~7.5時間の睡眠をとっている人というイギリスの研究が有力だ。

 1日6時間の睡眠をとっている場合、2~3時間しか寝ていないなどの極端な睡眠不足ではないものの、理想よりもわずかに足りない。このわずかな睡眠不足が借金のように蓄積していくと「睡眠負債」となり、日常生活での行動や健康に大きな影響を与えるといった研究結果が話題となっている。

 睡眠時間と脳の働きの関係の調査結果によると、徹夜をすると1日目、2日目と急激に集中力や注意力が衰える。6時間睡眠でも、まったく問題ないとはいえない。

 6時間睡眠だと、最初の2日間はほとんど変化がないが、徐々に脳の働きが低下していき、2週間後には2晩徹夜したのとほとんど同じレベルまで、集中力や注意力が低下してしまったのだ。

 睡眠不足はがんや認知症の発症リスクとも関係するといった研究結果もある。また、睡眠負債がひどくなると、肥満や糖尿病などの生活習慣病、うつ病などの精神疾患になることも指摘されている。「たかが睡眠不足」では済まされない事実が明らかになってきているのだ。

 自分に睡眠負債があるかどうかは、光が入らない暗い部屋で、目覚まし時計などをセットしないで時間を気にせずに寝てみるとわかる。眠気がなくなるまでぐっすりと寝てみて、睡眠時間が通常よりも2時間以上長くなる人は睡眠負債があるという。

 この実験で睡眠負債があったり、毎日の睡眠時間が6時間以下というような人は、意識的に毎日の睡眠時間を多めにとるように工夫したい。

 夜、布団に入ってもなかなか眠れないという人は、眠る数時間前から眠れる体にもっていくための準備を習慣づけたい。

・カフェインやアルコールを摂りすぎると目が冴えてしまうので、これらの摂取はおそくとも寝る3時間前までに抑える。
・運動や入浴をすると、汗が出て体温が下がって寝付きやすくなるので、夕方に散歩など軽い運動をするとか、寝る30分前に入浴でいったん体温を上げてあげる。
・パソコンやスマートフォンのブルーライトは、眠りにつく準備をする脳内ホルモンのメラトニンの分泌を抑制してしまうので、寝る2時間前にはパソコンやスマートフォン、ゲームなどから離れる。
・寝ている間にトイレに起きないように、寝る前にトイレを済ませておく。
・日中の15~20分程度の昼寝を活用する。

 近年の睡眠に関する研究結果が示す通り、寝不足の集中力や注意力の衰えた頭や体で仕事や家事をしてもパフォーマンスが悪く、二度手間になるのは目に見えている。よい結果を出すためには、1日6.5~7.5時間の睡眠は確保する必要がある。

 残業が多かったり、通勤時間が長ければ、それだけ睡眠時間を確保するのも難しくなる。人が健康を保ちながら、仕事のパフォーマンスを上げていくためには、まずは労働時間を短縮できる社会への転換が求められている。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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