ブーム全盛のときと比べれば、カラオケ業界に元気がないとはよく言われる。そもそもヒットソングが少ない時代、「歌う場所」としての経営はたしかに厳しい。だが、業界もただ手をこまねいているだけではない。いま、カラオケルームを歌以外の目的で活用する在り方が模索されている。

 この動向は急に現れたわけではない。カラオケルームには、防音性のある個室、加えて昼間は安価という特性がある。バンドマンが楽器の練習をしたり、学生が勉強の場にしたり、仕事のミーティングが行なわれたり。静かすぎないところが仕事などの集中を高めるという声もある。一部の利用者は、すでにその使い勝手に気づいていたのだ。

 カラオケルーム側でも、多様な活用法に対応することで、なんとかお客を確保しようと躍起だ。最近注目されているのが、ママ会の場所としてカラオケルームにたどりついた子連れの母たち。ファミレスやカフェではどうしても他人の目が気になる。個室なら騒ぐ我が子を自由に転がしておけるわけだ。業界大手のパセラでは、なんとおむつ(無料)や授乳室まで用意。この動きには、おそらく他店も追随するのではないか。

 また、若い世代の間では、DVDやブルーレイを仲間どうしで鑑賞する場としても機能しているようだ。カラオケ仕様の機器で、迫力ある大音量が楽しめる。映画もいいが、ライブビデオにも適しているだろう。友だちを呼ぶには狭いし、隣人を気にして静かにせねばならない都会の住宅事情を考えると、なるほど、これは「発見」である。一部の店舗では再生機の貸し出しも始まっている。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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