ビジネスの世界で有名な「AIDMA(アイドマ)の法則」は、消費者が商品を購入するまでの心の動きを段階的に示した用語だ。Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)の頭文字をとったもの。たとえば、テレビや広告で商品を認知したとき(=Attention)を起点として、興味が出てくる→欲しくなる→商品について心に焼きつけられる……という過程をたどり、購入に至る(=Action)わけである。

 AIDMAの法則は戦前から語られているもので、購買行動プロセスとしては最もポピュラーといえそうだが、類似のモデルはいくつか提唱されている。電通がインターネット時代を反映して2005年に発表(商標登録)した「AISASの法則」は特に知名度が高い。

 AISASでは、Attention→Interestまでは同じだが、その後は、Search(検索)→Action(行動)→Share(情報共有)という流れで説明される。なるほど、関心を持ったらまずは「ググって」みることは、日常的になっている。そこで商品が信頼に足ると思えば、さっそく購入となる(いまやネットショッピングが全盛で、リアルの店舗にわざわざ足を運ぶ必要もない)。さらに実際に使ってみて、よいものとなればSNSなどでシェアされる。現代型の口コミは、またたく間に拡散する強力な「広告」といえ、AIDMAの法則はこの視点が抜けている点で少しオールドな印象も受ける。

 これらの消費モデルを理解した上で、ヒットに向けた様々な仕掛けを繰り出しているのがマーケティング業界だ。やみくもに商品の宣伝をしても効果は期待できない。まずは人の心を理解して、戦略的に宣伝することが重要なのである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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