私の新入社員時代のことから書かせていただこう。私が講談社という出版社に入ったのは1970年、25歳の時だった。

 1か月の研修で『月刊現代』に配属され、その日に編集長から「よど号ハイジャック事件のJALパイロットの手記をとって来い」と命じられた。

 JALよど号が赤軍派にハイジャックされ、北朝鮮へ亡命したことはニュースで知っていた。その時の石田真二機長が冷静沈着に操縦したことが称賛され、帰国してからはメディアが英雄のように報じていた。

 予備知識はそれだけ。JALに石田機長の自宅を教えてくれと聞いたがノーコメント。先輩に教えられたブン屋さんを手掛かりに、ようやく神奈川県・川崎市だったと記憶しているが、自宅がわかったのは次の日の夕方。

 そのまま川崎へ直行した。夜、恐る恐る自宅のベルを押すと上品な奥さんが出てきて、すまなそうに「まだ帰っていない」という。

 その日は川崎駅近くの温泉マーク(今のラブホ)に泊まり、次の早朝、前夜買っておいた箱入りメロンをもって訪問。今度も奥さんが「主人は朝早くに出てしまいました」とすまなそう。

 そんなことを3日ほど続けたが機長の影さえ見ることができなかった。あとでわかったのだが、機長には別宅があり、自宅には帰って来なかったのだ。

 それ以降は、先輩の後にひっついて取材や作家、有識者との打ち合わせに同道させてもらって、夜になれば、知ったばかりのブン屋、作家などを呼び出して食事をし、酒が入ればはしご酒となること毎晩。

 研修では、たまには作家と会って食事や酒を飲むこともあるから、相手と別れた時刻までを残業として申請しなさいと教えられた。

 まじめだった私は、言われた通り正直に申告したら、その月は残業時間が220時間になった。今のように三六協定などなかった時代である。

 これが経営陣の中で問題になった。当時の講談社としては初めての長時間労働であったようだ。総務だか人事課に呼ばれ、日ごとに時間外の明細を質された。もとより不正に申告したわけではないから、この日は、6時半に何々さんと会って食事をし、その後、近くで酒を飲んだら、何々さんがゴールデン街へ行こうと言い出し、そこで朝の4時ごろまで飲んで別れた。次の日も誰々さんと会って朝3時まで飲んだ。

 校了日になれば、新人は先輩たちの仕事の手伝いをしなければいけないから、1週間続けて朝帰りになる。家に帰って2~3時間寝て出社する。1か月のほとんどが仕事漬けだった。

 先ごろ、電通の新入女性社員・高橋まつりさんが長時間労働と上司のパワハラで追い込まれ、自殺したことが大きな問題になり、電通は社長まで交代した。

 度を越した長時間労働や心無いパワハラやセクハラは絶対許されるべきではない。だが、悩みを打ち明ける相手や嫌なことを忘れて打ち込める何かがあったら、自殺は避けられたのではないかと、残念でならない。

 人口10万人当たりの若者の自殺者数(自殺死亡率)で、日本は先進国の中で突出して高いと厚労省が5月に発表した。

 競争心が強い、全体の一体感や同調圧力が強いことが理由に挙げられるという。つまり協調性のないやつはいくら優秀でも組織から弾き出されてしまうということだが、自殺にまで追い込まれるのは、仲間や上司に相談できる人間がいない「孤立感」があるのではないだろうか。

 私のつまらない昔のことを縷々書いたのは、私は感受性が鈍いため嫌味やパワハラを深刻に受け止めなかったから組織にとどまれたということもあるが、一番の理由は仕事にかこつけてタダ酒が飲めるということであった。

 意地汚い話で恐縮だが、人間なんてそんな小さなことで、生き死にが左右される弱い生き物なのである。

 話は変わるが、8月29日の夕方、東京・千駄ヶ谷近くのゴルフ練習場へ行くとき、建設中の新国立競技場の前を通りかかった。

 何人かの労働者風の人たちが集まって横断幕を持って声を上げていた。急いでいたのでよくわからなかったが、『週刊文春』(9/7号、以下『文春』)で報じている新国立の建設現場で働いていた高橋昭(仮名・当時23歳)さんが自殺したことへの抗議だったようだ。

 『文春』によれば、高橋さんは5大ゼネコンの一つ大成建設の一次下請として、地盤改良工事を担当している専門業者の新入社員だった。

 彼は現場監督として重機の管理などをしていたが、今年3月2日に失踪して、4月15日に長野県内で変わり果てた姿で発見された。

 ネットの「数字で見る芸能ニュース情報・考察サイト」では、高橋さんが残した手紙にはこうあったと報じている。

 「突然このような形をとってしまい、もうしわけございません。身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」

 その後、弁護士が会社・元請けから提供された資料に基づいて分析したところ、明らかになったのは異常な長時間労働であった。16年12月は94時間、今年の1月が143時間、死ぬ直前の2月には212時間というものだった。

 当初、現場監督は3人でやっていたが、1月に1人異動して2人になり、さらに工事の遅れを取り戻すために重機が増え、彼は昼休憩をとる時間もなかったという。

 新入社員に現場監督が務まるのかという疑念があるが、人の多い工事現場では、とりあえず“名称”を付けておくということなのだろう。

 私の大学時代の友人が大手建設会社のOに就職した。京都のはずれの建設現場にあるプレハブ小屋に数か月住み込んでいたから、「慰問」を兼ねて遊びに行った。

 ヒゲづらで作業服姿なので最初はわからなかった。奴も一応現場監督の一人だった。

 高橋さんは、それに加えて、「作業が遅い」と職長や部長に暴言を吐かれていたそうだ。そのくせ、自分たちは喫茶店に行って若手に多くの業務を押し付けていたと、同じ現場で働いていた人間が話している。

 「異常な長時間労働、暴力……。あの現場は地獄でした」とも『文春』に話している。

 「元請の大成の社員は、残業時間を八十時間以内で申告するよう指示を受けていますが、現場社員の多くは百五十時間近く働いています」と、大成の社員も下請けは長時間働かせられていたと証言している。

 高橋さんは失踪する直前、俯(うつむ)きながらフラフラの状態だったという。

 それほど地獄の現場になったのは、元をただせばJSC(日本スポーツ振興センター)が公募でザハ・ハディド氏のデザインを選び、批判が出たからと白紙撤回したためである。

 五輪組織委員会の森喜朗や当寺の文科相・下村博文(しもむら・はくぶん)らによる無責任体制のため、ようやく工事が始まったのは昨年12月、この時点で1年2か月の遅れが出てしまっていた。

 大成建設と森喜朗との「癒着構造」も多くのメディアで報じられた。

 新国立は東京五輪のプレ大会が開かれる19年11月末までには完成させなければいけない。

 そのためには、死人が出てもいいから、なんとしてでも完成させろと上から指示が出て、そのしわ寄せが下請けの労働者にいくという構図は、相も変わらずである。

 五輪に間に合わせるために建設ラッシュが続いているが、会場だけではなく周辺の工事も必要になるため、知り合いの他の建設会社の人間は、「こんな工期でできるはずはない」と言い切った。

 こんなことをしていれば第2、第3の自殺者が出ることは間違いない。

 あの夕方、垂れ幕を持っていた人たちは、大成に対して、「労働者の権利を守れ、長時間労働をなくせ」と抗議していたのだろう。

 これほどまでして東京五輪などやらなくていい。私はそう思う。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 9月3日、北朝鮮は昨年9月以来6回目となる核実験を実施した。ついに来るところまできてしまったかという思いである。ここから一歩進めば米朝戦争必至だが、日米はどうするのだろう。米朝ともに対話ができるリーダーではない。だが、トランプが北朝鮮の核基地を攻撃すれば、北からの報復で、日韓は火だるまになる。キューバ危機の時のように、ケネディがいてくれれば。どこの国にも、真のリーダーがいないことが、今世紀最大の危機を招いたのである。

第1位 「北朝鮮危機」(『週刊現代』9/16号)/「使えないJアラートに100億円超の価値はあるのか」(『フライデー』9/15号)/「撃ち落とせない『北朝鮮弾道ミサイル』」(『週刊新潮』(9/7号)
第2位 「日野皓正74歳が中学生を『往復ビンタ』動画」(『週刊文春』9/7号)
第3位 「認知症で『行方不明』激増! 1万5000人の衝撃」(『週刊ポスト』(9/15号)

 第3位。『ポスト』の巻頭特集。昨年1年間で全国の警察に届け出があった行方不明者のうち、認知症を患っていた人数は1万5432人で、前年に比べ26.4%も急増した。今や行方不明者全体のおよそ2割を占めるという。

 「認知症の行方不明者は、届けが出た当日から数日の間に見つかっているケースが大半です。ただ、昨年も471人が死亡した状態で見つかっています。決して少ない数字ではない」(介護施設情報誌『あいらいふ』佐藤恒伯編集長)

 認知症患者が起こした交通事故も13年が63件だったが、15年には78件と増加を続けている。

 「厚生労働省が14年に調査したところ、身元不明のまま保護されている認知症患者は全国に35人存在することがわかっている」(『ポスト』)

 姿が見えないと気づいたときには1時間以内がデッドラインになるという。

 「初動が重要です。1時間以内に捜索願を出せば同じ町内で発見される可能性が高まる。“周囲に迷惑をかけては……”と遠慮しがちですが、そうしているうちに1時間以上経過すると、町内を出てしまい、顔を知る人物もいなくなる。途端に発見・保護の確率が下がります」(「認知症の人と家族の会」阿部佳世事務局長)

 北海道釧路市や福岡県大牟田市では「SOSネットワーク」という新たな取り組みも始まっている。「行方不明者の届け出があれば、警察だけでなく、自治体や地元のFM局が連携して情報を発信し、早期発見につなげる取り組みだ」(『ポスト』)

 「10年に500万人だった独り暮らしの高齢者は35年には1.5倍の760万人になるといわれています。独居老人が認知症で徘徊を始めたら、行方がわからなくなっても行方不明になっていることすら知られない。そうして孤独に見知らぬ土地で死んでいく悲劇を今のところ防ぐ手立ては存在しません」(前出・佐藤氏)

 独り暮らしで認知症では……絶望的になる。

 第2位。今週の文春砲は、世界的トランぺッターの日野皓正(てるまさ)(74)の狼藉現場
 自分が「校長」を務める世田谷区の中学生たちのジャズコンサートで、ソロドラムを叩いていた男子中学生A君に駆け寄り、スティックを奪い取って「馬鹿野郎!」と一喝。さらにA君の髪を鷲掴みにして往復ビンタを食らわせたというのである。
 このコンサートは世田谷区の「新・才能の芽を育てる体験学習」の一環として行なわれ、今年で13回目を迎えた。
 日野は区の教育委員会から依頼され、第1回から「校長」をしている。日野は現在活動拠点をニューヨークに移しているから、このコンサートへの意気込みが分かる。
 区内の中学生が集められ、4か月間練習し、8月にその成果を発表する。入場料は大人4500円だというから、本格的なものだ。
 ワイドショーでは、日野が中学生に駆け寄り、スティックを放り投げたり、大声を上げ、ひっぱたいている映像が流れた(区の教育委員会は暴力があったと認めていない)。
 なぜ、日野はここまで大人げない振る舞いをしたのか? メンバーの保護者は、A君が長々とソロを続けたため腹を立てたと話している。
 また、このA君、「ドラムの技術が高く、天才肌」(このバンドの関係者)で、個性的な性格から周囲と衝突することも少なくなかったという。練習中にも日野が手を上げたことがあったそうだ。
 このシーンを見ていて、ジャズ映画『セッション』を思い出した。ドラマーを目指す若者と厳しい指導者の激しいぶつかり合いを描いた名画だ。最後に若者が指導者の言い付けを守らず、迫力あるドラムソロを叩き続ける。曲は『キャラバン』。その見事なドラムにみなが引きずり込まれたところで突然、映画は終わる。
 A君が何の曲でドラムを叩いていたのかここには書いていないが、彼も『セッション』を見ていたのかもしれない。
 私は、新宿のピット・インができたばかりの頃に入り浸っていた。日野や、渡辺貞夫、山下洋輔たちが出ていたと記憶している。若い粗削りな日野のペットをビール1本だけとって、飽きずに聞いていた。
 ジャズの神髄はインプロビゼーション(即興演奏)にある。日野も自分の若いころを思い出して、自由にやらせてやればよかったのにと思う。
 A君が自ら『文春』に電話をしてきて、自分が悪かった、今回の件で『ドリバン(ドリームジャズバンド)』がなくなってほしくないと訴えている。
 才能があるからこそ厳しくした。日野はそう言って、A君を名ドラマーとして育てたらどうだろう。私もジャズが好きだ。オフィスでは四六時中ジャズをかけている。

 今週の第1位は北朝鮮問題を扱った『現代』、『文春』、『新潮』の記事。特に『現代』の記事は、これが本当なら国際的スクープである。
 北朝鮮は9月3日に昨年9月以来6回目となる核実験を実施した。

 「朝鮮中央テレビは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に『完全に成功』したと発表した。軍事力行使も辞さない構えをみせてきたトランプ米大統領は、過去最大規模の核実験を強行した北朝鮮をツイッターで批判した。朝鮮半島情勢がさらに緊迫するのは必至だ」(朝日新聞9月4日付)

 それに先立って5日にワシントンで予定されていた麻生副総理とペンス米副大統領との非公式会談が中止された。
 こうした動きをアメリカが知っていた可能性がある。
 一つ間違えれば休戦協定は破棄され、第二次朝鮮戦争が起こる可能性はあるが、どうも日本の対応はイマイチ後手後手と回っているようだ。
 『文春』によれば、8月29日の日本列島越えミサイル発射は予告されていたというのである。日朝外交筋は、朝鮮労働党幹部が「はやく日本列島越えのミサイル実験をやりたい」と話していたという。

 「ロフテッド実験(垂直に近い形で打ち上げ、飛距離を出さない=筆者注)だとあくまで理論上の数値しか得られないという焦りが彼らにはあったようです」(日朝外交筋)

 それを水平に近い実戦形式で発射したのが今回のミサイル実験だったというのだ。
 さらに北朝鮮は、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)実験の動きも観測されているというから、挑発はエスカレートしていくのかもしれない。
 だが、『新潮』によれば、こうしたミサイルを日本の防衛力ではとても撃ち落とすことができないというのである。現在はイージス艦と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の二段階で撃ち落とす仕組みだが、イージス艦はSM3という迎撃ミサイルだから、弾道直下から撃たないと精度が落ちるそうだ。
 どこからいつ発射するという確度の高い情報をつかめなければ、艦を移動させることは不可能だから、相当難しい。
 またPAC3も、34基配備されているものの、射程範囲は半径20㌔しかない。仮に撃ち落とせたとしても破片が音速で周囲に降り注ぐという。
 防衛省はイージス艦の陸上版、イージス・アショアを導入することを決めたが、これまた、迎撃の最高高度は1200キロしかない。北朝鮮が5月に打ち上げた火星12型は高度2100キロ超だから、これも迎撃不可能だそうである。
 こんな脆弱な防衛体制に大金を注ぎ込んでいるのはいかがなものかと思わざるを得ないが、そのうえ、Jアラート(全国瞬時警報システム)の評判がすこぶる悪いのだ。
 『フライデー』によれば、先のミサイルが発射された29日、北海道から北関東の広範囲で、ミサイルが発射された4分後にJアラートが作動した。
 そして12分後に「ミサイルが上空を通過した」という情報が届いたが、こんなわずかの時間では、避難できるわけはない。
 Jアラートについては当時総務相だった麻生太郎が、各自治体に迅速に情報を送るJアラートの開発などを提案した。
 それによって総務省消防庁で04年から開発が始まり、07年に運用を開始している。
 総務省はJアラートを導入した全国の自治体に92億円余りの整備事業費を交付し、メンテナンスに年間数億円かかるから、これまでに100億円以上の税金が投じられていると『フライデー』は報じている。
 このシステム、実際に発信するのは首相官邸地下1階にある内閣官房の危機管理センターで、責任者は安倍首相、不在の時は菅官房長官になるそうだ。
 避難する間もないアラートに100億円は高いが、正確に「ミサイルは東京都中野区の何丁目をめがけて飛んできています。すぐに避難して!」といわれるのも怖いだろうが。
 次に『現代』のスクープ記事。内容はすこぶる興味深い。なるべく多くを紹介したい。
 「本誌はある信頼できる人物を介して、平壌(ピョンヤン)の朝鮮労働党幹部との接触に成功した」という書き出しで始まる。
 なぜ頻繁にミサイル実験を繰り返すのか、それは日本に向けたものか?

 「そんなことはない。将軍様(故・金正日(キム・ジョンイル)総書記)は『アメリカは、こちらが強硬に出ないと振り向かない。そして核とミサイルを手放した時に襲ってくる』という遺訓をのこされた。現在の元帥様(金正恩(キム・ジョンウン)委員長)も、まったく同様に考えておられる。(中略)
 わが国は現在、3人のアメリカ人を拘束しているので、アメリカはわが国を軽々にはできない」

 日本を超えるミサイルを撃つのは日本を標的にしているからか?

 「中でも首都、東京にほど近い横須賀基地を叩くのが、一番効果があるに違いない」

 アメリカが平和協定を結ぶと約束したら、核兵器とICBMのどちらを放棄するのか?

 「まずは平和協定を締結することが先決だ。平和協定が締結されれば、わが国の軍事的リスクが軽減されるのだから、もし必要でないものがあるなら、持っていることもないだろう」

 トランプ米大統領が北朝鮮空爆を決断したら?

 「核兵器を搭載したICBMを、アメリカ帝国の首都ワシントンに向けて撃ち込む。『ただ一発だけワシントンにブチ込めれば本望だ』と、元帥様も常々おっしゃっている」

 そうなればアメリカは総攻撃に出るが?

 「それは覚悟している。アメリカとの問題は、究極的にはプライドの問題なのだ。われわれはいかなる脅しにも屈することはなく、本気だということを示すまでだ」

 8度目の制裁決議が採択されたが?

 「おそらく輸出が半減するだろう。すでに平壌市内でも、配給の遅滞やガソリンの使用制限が始まっている。
 だが石油に関しては、こういう事態を予期して、昨年のうちに中国から大量に仕入れている。そのため当面の使用分は確保している。
 加えて、ロシアから鉄路などで輸入している。ロシアは石油供給に、非常に協力的だ。
 また、労働者の輸出については、相手国と水面下で合意すればよいだけの話で、楽観視している。
 いずれにしても、わが国は1953年以降、常に制裁を受けてきており、耐えることには慣れている

 現在、北朝鮮をバックアップしている大国は、中国ではなくロシアと考えてよいのか?

 「その通りだ。プーチン政権とは、蜜月時代を築いている」

 ICBMの技術もロシアから得ているのか?

 「現在の朝ロ関係は、過去最高のレベルにあり、ロシアが多くのことを支えてくれている。
 一例を挙げると、72回目の祖国解放記念日(8月15日)に、ロシアは40人ものメンバーから成るモスクワ交響楽団を平壌に派遣し、祝賀の演奏会を開いてくれた。
 それに較べて中国は、祖国解放記念日の式典に、金日成(キム・イルソン)総合大学の中国人留学生さえ顔を見せなかったのだ」

 プーチン大統領は、9月6日、7日にウラジオストクで行なわれる東方経済フォーラムに合わせて、安倍首相と日ロ首脳会談を行なう予定だが、その時、平壌に立ち寄る計画はあるのか?

 「その予定はない。だがわが国は、年内のプーチン大統領の訪朝を要請していて、ロシア側は前向きに検討してくれている。
 もしかしたら、元帥様が先にモスクワを訪問するかもしれない。元帥様のモスクワ訪問はもともと、15年5月にモスクワで戦勝70周年記念軍事パレードが開かれたときに検討していた。
 ともあれ、元帥様の初外遊が、モスクワであって北京でないのは確かだ

 北朝鮮と中国との関係は、かなり悪化していると考えてよいのか?

 「1949年に国交を結んで以来、最低レベルまで落ち込んでいると言える。朝鮮戦争(1950~53年)以降、朝中両国は互いに『血盟関係』を唱え続けていたが、いまやむしろ敵対関係に近い」
 「すべての原因は、習近平が変節したことにある。習近平は信用ならないから、わが国のミサイルは、いつでも向きを変えて北京を狙えるようにしてある

 これが真実の声なら、トランプが話し合うべきは習近平ではなくプーチンなのだ。だが、したたかなプーチンでは、トランプはもちろん、安倍総理などでは歯が立つまい。
 トランプが暴走して、空爆を指示しないか、それが心底心配だ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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