少子高齢化が進む中、安倍政権は2017年6月下旬、国家公務員と地方公務員の定年延長を目指す検討会議を設置した。国家公務員と地方公務員の定年を、早ければ2019年度から段階的に、65歳まで引き延ばすことを視野に置く。2017年度中にも対策をまとめ、2018年の通常国会に関連法案を提出する。

 公務員の定年は現在、原則として60歳である。しかし、年金の受給開始年齢は2025年度には65歳までに引き上げられる。65歳までの延長は、年金も給与も受け取れない無収入の高齢者が出てくることを防ぐ狙いがある。

 また、定年延長は、団塊世代のリタイアが進み、国内の労働人口の減少が加速することから、人手不足を補う側面もある。

 課題は、公務員の総人件費をどう抑えるかだ。

 定年延長だけでは公務員の総人数が増えて、当然だが、その分、総人件費も膨れ上がる。そのため、政府の検討会では、人件費の抑制策も話し合う。

 人件費抑制のポイントは、中高年層の給与の減額だ。例えば50歳代の給与水準を全体として抑制、また60歳以降を管理職から外す「役職定年制」の導入も検討する。

 ただ、50歳以降は子どもの大学進学などで、教育費の負担が大きく増す時期と重なっている。最近は晩婚化で、子どもが大学に進学する時点で親が60歳をすぎているケースも少なくない。そうした家庭からは「子どもを大学に出せない」といった悲鳴が聞こえてきそうだ。

 一方、公務員の定年延長には、民間企業の定年延長を後押しする狙いもある。

 民間企業などに対しては「高齢者雇用安定法」が、65歳までの雇用確保を念頭に(1)定年制の廃止、(2)定年延長、(3)再雇用など3つの対応を求めているが、再雇用を選択する企業がほとんど。定年延長が進んでいないのが実情だ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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