「もったいない」という美しい日本語を、いま一度思い返したい。農水省によると、平成27年度の食品の食べ残し量は、食堂・レストランが3.6%であるのに対し、宴会では14.2%にも及ぶ(調査範囲は東京・大阪)。我々は、宴会のあとに料理が放っておかれた光景を、あまりに見慣れてしまったのではないだろうか。

 しかし、上司にお酌したり、会社の愚痴をがなっていたりするあいだに、食べるタイミングを失うことはままある。そこで2011年から長野県松本市が始めた取り組みが「30・10運動」だ。宴会の最初の30分間は席から離れずに料理を楽しむ、シメの前の10分間は席に戻って残りの料理をたいらげる。この「30分・10分」を、幹事などがコントロールして徹底しようというものだ。同様の発想の取り組みは他でも見られたが、ゴロもよく明快で、全国的に波及している。

 日本の食品ロス(年間約500~800万トン)は、世界全体の食料援助量の約2倍だ(消費者庁)。宴会のみならず、本来は食べられてしかるべきだった、家庭からの生ゴミの量も著しく多い。そこで松本市では、「おうちで残さず食べよう!30・10運動」も設定している。毎月30日は、賞味期限が近い食品などを使い切る「冷蔵庫クリーンアップデー」。毎月10日は、野菜の茎や葉など本来は食べられる部分を調理に用いる「もったいないクッキングデー」。これらの取り組みに注目が集まる。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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