桑田忠親 著
悲運の戦国大名の家に生を受け、父母を滅ぼし弟を串刺しにした仇敵信長の部将秀吉の愛妾となり、秀頼を生んでその寵を一身に集め、太閤なき後は落日の大坂城に君臨して家康の前に節を屈せず、愛児とともに自滅して果てた勝気な女性。本書は著者の多年渉猟の史料による脚色ぬきのその生涯。興味は却って稗史や戯曲にもまさる。
[安土桃山|江戸][その他|女性]
児玉幸多 著
芝居に講談にわが国義民の代表者として有名な佐倉惣五郎は、いままで実在の人物なのかどうかさえ疑われて来た。庶民・農民の歴史に深い関心をよせる著者が、この至難な問題に対決すべく研究を進めて遂に有力な実証史料を発見し、更に事件発生の背景をも究明したのち、改めて伝説を検討しながら謎をときほぐす異色ある伝記。
[江戸][その他]
近盛晴嘉 著
ヒコは漂流して渡米、日本人として禁教後最初にキリスト教の洗礼を受け、また帰化第一号の米国市民権を得る。ハリスに伴われて開国日本に帰り、わが国最初の新聞『海外新聞』を発行し、幕末明治の文化の恩人となった。著者はヒコ研究に三十年、この“新聞の父”の生涯と功績とを克明に記し、また『ヒコ自伝』を正確にした。
[江戸|明治][その他]
洞富雄 著
北辺急を告げる際、身を挺して蝦夷および樺太を探検し、ついに間宮海峡を発見してシベリア大陸に渡り、世界地理学史上に不滅の名を残す。彼はこの輝しい前半生に反し、その後半生は“シーボルト事件”摘発の発頭人となり、さらに幕府の隠密として活躍した。新しい史料を基礎に、当時の世界情勢を背景として、その生涯を描く。
[江戸][その他]
亀井高孝 著
伊勢白子の船頭光太夫は、露領の北海小島に漂着してつぶさに辛酸をなめ、国都ペテルブルグに至り、女帝に拝謁を許され、日露国交開始の橋渡しとして漸く11年後に送還された。著者はこの数奇な運命児を単に漂泊中の足跡をたどって追究するだけでなく、わが鎖国下の国際情勢を緻密に分析しつつ、ダイナミックに描き出した。
[江戸][その他]
西尾陽太郎 著
中江兆民に私淑し、社会主義から無政府主義へ。日露戦争中には非戦論を絶叫し、弾圧に屈せずやがて直接行動論を唱え、遂に大逆事件の首謀者として死刑に処された典型的革命家。その人物は?思想は?行動は?果して彼は大逆を企てたのか。今やその伝記は改めて必読を要する。日本社会主義運動の源流を解明する好伝記。
[明治][その他]
島谷良吉 著
鋭い科学的洞察力をもって、蝦夷・千島・樺太をしばしば探検、アイヌ民族と接し、ロシア語に精通した幕吏最上徳内。北方の防衛、開発・保護などに寄与した数々の先駆的業績は、今日の領土・漁業問題にも深い史的掛り合いを持つ。多年、厖大な資料を精査し徳内の足跡を究めた著者が、敬愛をもって描いた本書は多くの人々に読まれるべき好著である。
[江戸][その他]