(まくらのそうし)
清少納言
季節感や後宮の華やかさを、きらめく感性で執筆した代表的随筆
〈春はあけぼの……〉で始まる、日本を代表するエッセイ。作者は、一条天皇の中宮定子(ていし)に仕える女房・清少納言。「をかし」の美を基調にして、人事や季節感を独創的かつ鮮やかにとらえる。「すさまじきもの」「うつくしきもの」などのものづくし(類聚章段)、後宮の日常の記録(日記的章段)、随想章段など、約300章段からなる。『源氏物語』と並ぶ王朝女流文学の傑作。
[平安時代(1001年ごろ成立)][随筆]
《校注・訳者/注解》 松尾 聰 永井和子
(ほうじょうき)
鴨長明
人の世の無常を流麗な文体で記す、中世を代表する随筆
〈ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず〉の書き出しで有名な、鎌倉時代の仏教的随筆。50歳のころに出家した鴨長明が都(京都)の郊外(日野山)の庵に隠棲し、そこで体験したことをつづったもの。世の無常さ、庵での日常、天災(大火、辻風、大地震など)や飢饉、遷都などが、和漢混交文で簡明に書かれている。一丈四方(方丈)の狭い庵を結んだことから、「方丈記」という。
[鎌倉時代(1212年成立)][随筆]
《校注・訳者/注解》 神田秀夫
(つれづれぐさ)
卜部兼好(吉田兼好)
心に浮かぶままを簡潔につづった鎌倉時代末期の名随筆
〈つれづれなるままに、日くらし硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を〉思いつくまま書き記したという卜部兼好(うらべかねよし)による随筆。江戸時代になって広く読まれるようになり、吉田兼好という俗称が一般的になった。全244段で構成され、無常観に基づく人生観、世相観、趣味などが、切れのいい和漢混交文と和文で記される。『枕草子』、『方丈記』と並び、「日本三大随筆」のひとつ。
[鎌倉時代(1330~31年ごろ成立か)][随筆]
《校注・訳者/注解》 永積安明
(きんせいずいそうしゅう)
松永貞徳、戸田茂睡、本居宣長ほか
江戸知識人の教養と知的センスの結晶を示す傑作エッセイ4本
江戸時代に生まれた、傑作随想を収録。松永貞徳による古今伝授についての聞き書き集『貞徳翁の記(ていとくおうのき)』(1633年ごろ)、和学者・戸田茂睡(もすい)の江戸名所巡り『紫の一本(ひともと)』(1682年)、本居宣長の和歌論の処女作『排蘆小船(あしわけおぶね)』(1757年ごろ)、学者の裏話を暴露する『しりうごと』(1832年)の計4編。江戸期の知識人の教養と知的センスの高さを示す。
[江戸時代][随筆]
《校注・訳者/注解》 鈴木 淳 小髙道子