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中国、明(みん)代末の産業技術書。1637年に宋応星(そうおうせい)が書いた。すでに伝来していた西洋の科学技術についての記載は、火器を除いてきわめて少なく、中国在来の産業技術が3巻18部門に分けて記載されている。食品生産関係、衣服、金属加工とその関連部門が大きな比重を占める。製陶の項には登窯(のぼりがま)の記載もある。兵器に1項をあて、とくに火器を取り上げたのは、ヨーロッパの影響と、明末の社会情勢の反映と思われる。この書は読者対象をインテリ層に置いているが、技術の指導書の役割もいくぶん意識し、現場に立ち会って得られたと思われる細かな注意を記しており、例外もあるが、全般に宋代以来顕著になった実証精神で貫かれている。中国では民国の初めに丁文江(ていぶんこう)が高く評価するまでこれを引用する書物は少なく、影響は小さかったが、江戸時代の日本に大きな影響を与えた。
[宮島一彦]