地球周辺や宇宙空間に関する科学的観測を行うことを目的として打ち上げられる人工衛星。
科学衛星はその目的によって二つに分類される。一つは地球周回軌道を飛行しながら、地球大気や電離層などの観測、天体観測(光や赤外線を発する天体、高エネルギーの宇宙線(X線、γ(ガンマ)線など)を発する天体の観測)などの科学観測を行うものである。二つ目は、地球周回軌道から離脱して月、小惑星、太陽系惑星に近づき、その引力により周回軌道に入り科学観測を行うものや、目的の天体に軟着陸して土壌や岩石のサンプルを収集し、地球に帰還するものである。これらは「探査機」とよばれる。科学衛星は最先端の技術を駆使して宇宙や地球の起源の解明、人類の活動領域を宇宙に拡大するなど、最先端の科学研究に貢献している。
日本の科学衛星の実績を振り返ると、地球周辺の電子密度やプラズマ波の観測を目的とした衛星では、「しんせい」(1971)が打ち上げられた。これに続き「きょっこう」(1978)、「じきけん」(1978)、「おおぞら」(1984)、「あけぼの」(1989)、「ジオテイルGeotail」(1992)などが打ち上げられている。高エネルギー天体の観測を目的とした衛星では、「はくちょう」(1979)、「てんま」(1983)、「ぎんが」(1987)、「あすか」(1993)、「すざく」(2005)などが打ち上げられた。「ひりゅう」(2000)は打ち上げ失敗、「ひとみ」(2016)は、打ち上げそのものは成功したが、軌道投入直後に制御を失い観測はできなかった。太陽表面の磁気活動やコロナの観測を目的とする衛星では、「たいよう」(1975)、「ひのとり」(1981)、「ようこう」(1991)、「ひので」(2006)が打ち上げられた。惑星分光観測衛星では、「ひさき」(2013)、赤外線天体観測衛星では、「あかり」(2006)が超新星爆発やその残骸の観測を実施した。電波天文衛星「はるか」(1997)は、超長基線電波干渉法(VLBI:Very Long Baseline Interferometry)で活動銀河核の高解像度観測を実施した。火星大気の構造などを観測する「のぞみ」(1998)は、火星周回軌道への投入に失敗した。ハレー彗星(すいせい)の分光観測衛星では、「すいせい」(1985)が太陽周回軌道に投入された。「かぐや」(2007)が月周回軌道に投入され、日本初の月面観測が行われた。小惑星探査機「はやぶさ」(2003)は、小惑星イトカワからのサンプルリターンに成功し、世界の注目を集めた。金星探査機「あかつき」(2010)は、金星周回軌道投入に当初失敗したが、再度のチャレンジで無事周回軌道に乗せることに成功した。
[森山 隆]