データの収集・配信を目的として打ち上げられる人工衛星。気象衛星は、地球規模での雲、水蒸気、海面温度、海上風、降雨などを一日に何度も観測することで、天気予報や気候変動の研究などに活用される。
気象衛星には静止衛星と極軌道の周回衛星がある。静止気象衛星を利用した地球全体の気象観測は、世界気象機関(WMO)の地球大気開発計画(GARP(ガープ))に基づく五つの静止衛星などで行われている。日本は1977年(昭和52)に最初に打ち上げられた静止気象衛星「ひまわり」で参画している。「ひまわり」は赤道上約3万6000キロメートルの静止軌道から、地球の約3分の1を常時観測する。5号機まではスピン安定式であったが、6号機以降は3軸制御衛星となり、8号機は2014年に打ち上げられ東経140度付近に静止している。8号機の観測センサーの機能・性能は格段に向上し、黄砂と噴煙の識別、集中豪雨の観測、火山灰、煙霧質(エアロゾル)の観測機能が向上した。分解能はこれまで可視光域で1キロメートルが0.5キロメートルに、赤外域では4キロメートルが2キロメートルに、撮像間隔は30分が10分に短縮された(日本付近は2分30秒ごとに常時監視が可能)。観測チャンネルはこれまでの5チャンネルから16チャンネルに増加し、カラー画像の作成が可能となった、8号と同じ機能の9号は2016年11月に打ち上げられ、8号のバックアップとして軌道上で待機している。データは通信衛星(JCSAT)経由で配信される。
世界初の気象衛星はアメリカのタイロス1号TIROS1で、1960年に打ち上げられた。アメリカはその後GOES(ゴーズ)シリーズを1975年から打ち上げ、2016年時点では静止位置に3機(GOES-12、GOES-13、GOES-15)を配置し運用している。ロシアの新世代気象衛星Elektro(エレクトロ)-L(GOMS(ゴムス) 2号)は2015年に打ち上げられ、東経76度のインド洋上で運用中である。ヨーロッパではヨーロッパ気象衛星開発機構(EUMETSAT(ユーメットサット))が運用するMeteosat(メテオサット)シリーズで、7号(東経57度、1997)、8号(東経41.5度、2002)、9号(東経9.5度、2005)、10号(東経0度、2012)、11号(軌道上待機中、2015)がヨーロッパ、アフリカを中心に観測運用を実施している。インドは通信と気象観測機器を搭載したINSAT(インサット)シリーズを2003年から25機打ち上げ、2016年時点で12機を運用している。中国は風雲(FY)シリーズを打ち上げ、FY-2D(東経86度)、FY-2E(東経123度)、FY-2F(東経112度)、FY-2G(東経123度)の4機を配置している。中国は静止気象衛星のほかに、極軌道の周回気象衛星3機を運用している。韓国は海洋観測と気象観測の実証衛星であるCOMS(コムス)(千里眼)を2010年に打ち上げた。
極軌道からの気象観測は、高度約1400キロメートルの円軌道で、軌道傾斜角を約102度にすることで南北両極の近くを通り、太陽の動きに同期させて午前9時あるいは午後3時など、毎日ほぼ同じ地方時に全世界を昼夜各1回観測することができるようにしている。これにより静止気象衛星がなしえないグローバルな気象情報や高緯度地方の海氷情報等を得ることができる。アメリカがNOAA(ノア)衛星、ロシアがMETEOR(メテオール)衛星を運用している。
[森山 隆]