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戦国期~江戸期の武家文書の一形式。手印状、朱印ともいう。古くは禅僧の発給文書に朱印を用いたものがあるが、戦国期には、東国地方を中心に各地の大名が花押(かおう)にかわり印章を捺(お)した印判状をもって政務・軍事などの命令をすることが多くなった。そのうち朱印を使用した公式文書が朱印状で、今川氏の「如律令(にょりつりょう)」印、後北条(ごほうじょう)氏の「虎」の印判、武田氏の「龍」朱印、織田信長の「天下布武(てんかふぶ)」印、上杉氏の「立願勝軍地蔵摩利支天飯縄明神(りつがんしょうぐんじぞうまりしてんいいづなみょうじん)」印などが有名である。この形態は近世まで継承され、将軍による所領安堵(あんど)や海外渡航許可などの際に用いられた。近世末期になると、印章の色にかかわらず将軍の発給した印判状を朱印というようになった。
[大久保俊昭]