オゾン層破壊や地球温暖化の原因となるフロン類の排出を抑えることを目的とした法律。正式名称は「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」(平成13年法律第64号)。2001年(平成13)に制定されたフロン回収・破壊法を全面改正し、2015年4月に施行された。エアコンや冷蔵・冷凍機の冷媒として使われるフロン類について、従来はその回収・破壊を規制対象としていたが、フロン排出抑制法では製造から使用、回収、処理にいたる全過程(ライフサイクル)で漏洩(ろうえい)しないよう適切な対策を実施し、フロン類に携わるすべての事業者・利用者に設備の点検や整備・修理履歴の記録・保存などの義務を課した。また、機器の整備不良や経年劣化でフロン類が漏洩しないよう、適切な場所への設置、任意充填(じゅうてん)の禁止などの義務も課している。二酸化炭素換算で1000トン以上漏洩した場合に報告義務があるほか、フロン類の再生量についても公表する義務がある。フロン類の製造・輸入事業者や機器メーカーには、温暖化効果の低い代替フロンへの転換を求めた。また、フロン類の充填事業者の登録制、再生事業者の許可制も導入された。
同法に違反した場合には罰則がある。フロン類をみだりに放出した場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金、機器点検などの義務について都道府県知事の命令に違反した場合は50万円以下の罰金、漏洩量の虚偽報告・未報告の場合は10万円以下の過料を課す。
1987年に採択されたモントリオール議定書は、オゾン層を破壊する特定フロンの2020年(途上国は2030年)までの全廃を定めており、温暖化の原因となる代替フロンについても生産規制することで加盟国は合意した。このため、フロン排出抑制法による代替フロンの漏洩防止だけでなく、生産・排出を直接制限する法律が必要との指摘が環境保護団体などから出ている。
[矢野 武]