日本大百科全書(ニッポニカ)

解離性障害
かいりせいしょうがい

本来一つにまとまっている意識や記憶および知覚、あるいは自分は自分であるという自己同一性(アイデンティティ)などの感覚を統合する心的機能が、一時的に分離もしくは破綻(はたん)した状態。過去のある期間の出来事の記憶がまるごとすべて抜け落ちる(解離性健忘)、自己同一性が失われ失踪(しっそう)して知らない場所で生活する(解離性遁走(とんそう))、それは自分に起きていることではないと感じられるなど現実感を失う(離人症)、あるいは体の感覚を一部失ったり体が動かせなくなるなどの症状が深刻となり、日常生活や社会生活にさまざまな支障をきたすようになる。解離性健忘や離人症は、ストレスや心的外傷など、過去の耐えられないほどつらいと感じた体験の記憶を、自分から切り離し思い出さないように封じ込めようとする防衛機制の一つと考えられている。こうした解離現象は、健康人にも病的にではなく一時的に現れる場合がある。
 解離性障害でもっとも重い症状が解離性同一性障害(多重人格障害)で、感情や記憶を絶つことによって、自分のなかに別の複数の人格が交互に現れるようになり、ある人格が現れていたときには、その他の人格が現れているときの記憶がないため、周囲の理解が得られず生活に支障をきたすようになる。DID(Dissociative Identity Disorder)と略称される。
 世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)では解離性(転換性)障害として、過去の記憶、同一性と直接的感覚の意識、身体運動のコントロールの間の正常な統合が一部ないし完全に失われた状態と定義されているが、アメリカ精神医学会の『精神障害の診断と統計の手引き 第5版(DSM-5)』では、意識、記憶、同一性、環境の知覚というふだんは統合されている機能の混乱というやや狭義の内容となっている。
[編集部]