日本大百科全書(ニッポニカ)

還城楽
げんじょうらく

雅楽の曲名。『見蛇(げんじゃ)楽』『還京楽』ともいう。唐楽曲、太食(たいしき)調、舞人1人による走舞で別装束。眉間(みけん)にこぶのある怪奇な面をつけ、左手は剣印という印を結び、右手には赤い桴(ばち)を持つ。同一楽曲で左方(唐楽)、右方(高麗(こま)楽)両方の舞がある珍しい曲で、前者は2拍と4拍の交互拍子(只(ただ)拍子)、後者は2拍と3拍の交互拍子(夜多羅(やたら)拍子)で舞う。全体は、(1)新楽乱声(しんがくらんじょう)、(2)陵王乱序、(3)還城楽音取(ねとり)、(4)当曲、(5)案摩(あま)乱声の5部分よりなり、陵王乱序には「蛇持ち」と称する人が舞台に木製の蛇を置き、これをみつけた舞人が飛び上がる有名な振(ふり)がある。当曲ではこの蛇を左手に持ち勇壮な舞を披露する。一説に、中国西域(せいいき)に住む野蛮人(胡(こ)人)が好物の蛇をみつけて喜ぶようすを舞にしたといわれる。奈良・興福寺の常楽会(2月15日)に古伝承がある。番舞(つがいまい)は『抜頭(ばとう)』など。
[橋本曜子]

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