構造上、人が乗ることのできない飛行機や回転翼航空機などの機器のうち、遠隔操作や自動操縦により飛行させることができるもの。小型無人飛行機の別称。軍事目的などで使用される遠隔操作飛行体を、無人機(UAV:unmanned aerial vehicle)とよぶことがある。「ドローン」は英語で雄ミツバチの意である。おもな形状は、ハンググライダーのような固定翼航空機型か、シングルローターやマルチローターを搭載し、ヘリコプターのように水平垂直飛行や旋回などが容易にできる回転翼航空機型である。大きさは全長10センチメートルほどの小型のものから、通常の航空機のような大型のものまである。一般的に利用されているドローンは、小型で、ローターの枚数が4枚から8枚ほどのマルチローターヘリコプター(マルチコプター、回転翼機)とよばれるものである。マルチコプターの場合、積載可能重量が大きくなるほどローターの枚数が多くなる。近年主流になっているものは、低空、近距離の飛行に適したマルチコプターであるが、将来的には中空から高空域で、数十キロメートル飛行できるエンジン式や電動式の固定翼型も利用されることが予想される。
日本でドローンを飛行させる場合、航空法と電波法の規制を受ける。航空法においてドローンは、無人航空機の一種として分類される。ただし、本体とバッテリーをあわせた重さが200グラム未満のものは模型航空機とされ、それ以上の重さのものが該当する。従来、航空法により空港などの周辺(航空機の進入表面など)の上空空域で、航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為は禁止されていたが、2015年(平成27)12月に改正航空法が施行され、無人飛行機に関する規定が設けられた。これにより従来の飛行禁止空域に加え、高さ150メートル以上のすべての空域や人口密集地の上空については、国土交通大臣の許可を受けなければ飛行させることはできず、違反すれば、50万円以下の罰金が科せられることになった。また、以下の六つの飛行ルールも定められた。(1)日中に飛行させること。(2)目視範囲内で常時監視しながら飛行させること。(3)人や建物、車両などとの距離を30メートル以上に保つこと。(4)祭礼、縁日など多数の人が集まる場所の上空を飛行させないこと。(5)爆発物など危険物を輸送しないこと。(6)無人航空機から物を投下しないこと。さらに、2016年3月に議員立法として成立したドローン規制法により、首相官邸や国会議事堂、最高裁判所、皇居、外国公館、原子力発電所などの重要施設の敷地周囲およそ300メートルの地域の上空は飛行禁止区域に指定された。
業務利用を踏まえた電波システムのあり方については、専用周波数帯と運行管理システムの策定が進められている。電波政策懇談会は、これまで共用されてきた免許不要の無線LAN(ラン)周波数帯に加え、免許の必要な周波数帯をドローン専用として割り当て、数十キロメートル離れた位置から遠隔操作もできるよう、制度の改正を検討している。
ドローンは、もともと無人偵察機や無人攻撃機など軍事用に開発されたものであったが、小型・軽量化されたセンサーやバッテリーが低コストで入手できるようになり、いわゆるラジコン飛行機のような趣味・娯楽用としての需要が急速に拡大した。今後は産業用としての用途の拡大が見込まれており、情報通信研究機構の予測によれば、2023年までの世界のドローンの市場規模は10兆円規模に達するとみられる。おもな用途としては、近距離では、農薬散布や農・林・漁業におけるモニタリング、インフラ点検、警備、映像撮影などがあげられる。また、中・長距離では、気象や海洋の観測、災害モニタリングや災害時の通信中継、広域のインフラ点検や測量、物流などでの活用が進んでいる。すでに農林水産省では、2016年産米の農薬散布においてドローン操作の認定制度を開始し、ドローンに監視カメラを搭載するなどして鳥獣被害対策にも使えるようにした。また、政府はドローン特区や実験飛行場などを指定し、全国各地で実証実験を行っている。たとえば、国家戦略特区に指定された千葉市では、2019年の実用化を目ざしてドローンを使った宅配事業を実験している。しかし、建物の多い地域における安全性やプライバシー保護の問題で、実用化のめどはたっていない。一方、離島や過疎地域においては、航空法における許可基準の新設が容易であることからも、買い物弱者の支援や物流合理化などの観点から実用化への期待が高まっている。
[編集部]