日本大百科全書(ニッポニカ)

コイル
こいる
coil 英語

電気導線を円筒状に巻いたもの。線輪(せんりん)ともいう。コイルに直流電流を流すと、巻き数と電流の強さの積に比例した磁界を生じる。いわゆる電磁石はコイルの中央に鉄心を入れたものである。このコイルに流れる電流が変化すると、電流の変化を妨げるような起電力がコイルに生じる。この起電力は電流の変化率に比例し、交流電流に対しては抵抗と同じ役割をする誘導性リアクタンスとして、周波数に比例して働くが、その比例定数をインダクタンスとよぶ。インダクタンスを形成するコイルを誘導子ともいい、大別すると有心型と空心型に分けられる。有心型はコイルの中央に金属磁性体か酸化物磁性体の磁心を入れ、インダクタンスを大きくしたものである。この場合、金属磁性体磁心は渦(うず)電流による損失が大きいので、10キロヘルツ以上の周波数ではほとんど用いない。逆に10キロヘルツ以下では、酸化物磁性体磁心は飽和磁化、透磁率が小さいので、金属磁性体磁心がおもに使われる。空心型はコイルの内部に磁心を含まない。インダクタンスは小さく、高周波用のチョークコイルなどに使用されるほか、大電力が要求される電力用の直列リアクトルにも、磁心による飽和現象を避けるために使われる。
 コイルの巻き方には、単層巻きと多層巻きとがある。コイルのインダクタンスは巻き数の2乗に比例するので、大きなインダクタンスを得るためには多層巻きが有利である。しかし、巻き数が多くなると分布キャパシタンスが大きくなることから、とくに高い周波数域では巻き方がむずかしくなる。このため、バンク巻き、ハニカム巻き、パイファイラ巻きなど、キャパシタンスを小さくする巻き方がくふうされている。大電力用の場合は電気導体もそれなりに太くなり、板棒状の銅を積み上げて各層を接合させる巻き方をすることもある。高周波用にはホルマール線などを用い、周波数が高くなるにつれ細い線を用いる。
 磁心に用いる金属磁性材料には、ケイ素鋼板、パーマロイ、パーミンバールなどがある。いずれも商用周波数、可聴周波数など低い周波数域で用いられ、渦電流による損失を減らすため、薄板を積み重ねた成層磁心としている。酸化物磁性材料としては、高周波域ではフェライトが用いられ、さらに高い周波数域では圧粉鉄心が用いられる。
[岩田倫典]