日本大百科全書(ニッポニカ)

児童福祉法
じどうふくしほう

憲法の理念に基づく児童の福祉に関する総合的基本法。昭和22年法律第164号。1947年(昭和22)に新憲法下の第一特別国会で制定された。第二次世界大戦後、親や家族、家を失って食糧に事欠く児童が焦土にあふれ、彼らを一刻も早く救い保護することが焦眉(しょうび)の課題であった。第二次世界大戦後の福祉立法のなかで旧生活保護法に次いで本法が制定されたのもそのためである。
 当初は、少年教護法、児童虐待防止法、母子保護法などの第二次世界大戦前の「保護法」を統合化して構想立案されたが、中央社会事業委員会などの批判を受け、次代を担う児童の健全な育成支援、「福祉法」としてその積極的増進を基本精神とした。総則の冒頭には、(1)すべての国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ育成されるよう努めるべきこと、(2)すべての児童が平等にその生活を保障され、愛護されるべきこと、(3)国および地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負うべきことが明記されており、この児童の福祉を保障するための原理は、すべての児童に関する法令の施行にあたって、つねに尊重されなければならないとしている。
 法律の内容は、以下のとおりである。
(1)児童福祉に関する事項を調査審議する機関である児童福祉審議会、児童相談所、児童福祉司、児童委員、保育士、福祉事務所および保健所に関する規定
(2)療育の指導・給付等、障害福祉サービスの措置、子育て支援事業(放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業、地域子育て支援拠点事業など)、助産施設・母子生活支援施設・保育所等への入所、障害児施設給付費・障害児施設医療費等の支給、要保護児童の保護措置、被措置児童等虐待の防止など福祉の保障に関する規定
(3)児童自立生活援助事業・小規模住居型児童養育事業、養育里親、児童福祉施設などに関する規定
(4)児童福祉にかかわる費用に関する規定、罰則などに関する規定
 児童福祉法は制定以来、時代の変化にあわせて逐次改正され、それに基づいて制度の改善が図られてきた。とくに、1997年(平成9)の第五〇次改正では、制定後50年の経過による環境の変化に対応するとともに、締約国に条約の実効に関する報告が義務づけられている「子どもの権利条約」批准後の大幅な改正であった。おもな改正事項は、(1)多様な保育需要に対応した保育所への入所の仕組み、保育料負担の公平化、保育所における子育て相談の充実など、保育所に関する事項の改善、(2)放課後児童健全育成事業の法制化、(3)児童自立支援施策の充実、(4)児童福祉施設の名称および機能などの見直し、(5)児童相談所の機能強化、(6)児童家庭支援センターの創立、(7)母子家庭施策の充実などであり、1998年4月より施行された。
 その後も、2000年(平成12)の児童虐待の防止等に関する法律の成立、2003年の少子化社会対策基本法や次世代育成支援対策推進法の成立に関連した改正など、おもに少子化社会の進行や児童虐待の増加を背景にした法改正が行われている。少子化社会の進行にかかわっては、乳児家庭全戸訪問事業や一時預かり事業などの「子育て支援事業」の新設や整理、保育に欠ける乳幼児を保育者の自宅で預かる「家庭的保育事業」の創設などがあげられる。児童虐待の増加に対する施策としては、要保護児童を養育者の自宅で養育する「小規模住居型児童養育事業」の新設、施設入所している児童に対する職員の虐待を防止する「施設内虐待の防止」規定の創設があげられる。
 2016年5月には大幅な法改正が行われた。(1)児童福祉法の理念の明確化等、(2)児童虐待の発生予防、(3)児童虐待発生時の迅速・的確な対応、(4)被虐待児童への自立支援、の大きく4点に分かれる。そのうち重要な点は制定後初めて児童福祉法の総則(原理)が改正されたことである。改正後第1条は「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する」、同2条第1項では「全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない」となり、子どもの権利条約の精神を生かした子どもの権利が強調された。
[中村強士]