日本大百科全書(ニッポニカ)

マーズ・パスファインダー計画
まーずぱすふぁいんだーけいかく

惑星着陸探査の革新的技術実証を目的としたアメリカの火星探査機計画。1976年のバイキングの火星着陸以来、21年ぶりに火星着陸に成功し、初のマーズ・ローバー(火星探査車)走行にも成功した。着陸機が地球に送信したカラーの火星地上写真は、即時にインターネットに掲載され、世界中から4億件のアクセスを受けた。
 探査機は1996年12月4日、ケープ・カナベラル基地から打ち上げられ、1997年7月4日のアメリカ独立記念日に計画どおり火星のアレス渓谷に着陸した。計画を簡素化し、低予算で実行するために、革新的で大胆な技術が用いられた。バイキングのように火星を周回してから降下する飛行法をとらずに、火星大気の抵抗を利用して、ほとんどすべての必要な減速を行った。着陸寸前に逆噴射ロケットを一瞬働かせて、落下速度を緩めた。この方式では、どこにどの姿勢で着地するか予想ができないが、等方性の膨張エアバッグと、起きあがり小法師(こぼし)のような花弁型展開機構を使って、着地、展開、正立を予定通り実行し、カメラ撮影を行い、さらにローバー導出にも成功した。
 探査機は、花弁型パネルを閉じた四面体の形状をもち、高さは90センチメートル、重さは打上げ時で895キログラム、推進薬を除くと801キログラムであった。科学観測の機器として、カメラ、地表物質の磁性を調べる磁石、風速計、大気測定装置を搭載。電源は太陽電池と蓄電池で最大160ワットを発生。ローバーは長さ65センチメートル、幅48センチメートル、高さ30センチメートル、重さ10.6キログラムで、観測用にカメラ3機とアルファ線・陽子線・X線分光計を搭載し、電源は太陽電池と一次電池で最大16ワットの仕様であった。ローバーと地球との通信は着陸機による電波通信中継によった。「ソジャーナ」と名付けられたこのローバーは、着陸機から見える範囲で岩石を測定してまわり、地球以外の惑星で稼働した初めての探査車となった。その技術は、2003年に打ち上げられ火星広域の詳細な探査に成功した火星探査ローバー(MER)計画に引き継がれた。
[岩田 勉]