ジャパンナレッジ
日本では65歳以降とされる老年期に発症し、この年代に特有の病像を示すうつ病。老年期うつ病あるいは老人性うつ病ともよばれる。臨床症状としては、本当は問題がないのに身体の不調を訴える心気的傾向を示すほか、不安や焦燥感を訴えたり、周囲への無関心や思考力および集中力の低下などの認知症が疑われる仮性認知症がみられる。また、意欲の低下や、不眠や疲労感の訴え、体重減少、自分を貧乏と訴えるなどの妄想性傾向がみられるほか、意識障害や譫妄(せんもう)、自責感や死にたいと訴える自殺念慮などを呈する。
発症にかかわる要因としては、配偶者や家族との死別または離別、生活上の突発的なできごと、家庭内での役割の変化や孤立感、社会的地位の喪失、経済的状況の変化などに加えて、転居などの環境要因も示唆されている。ほかに加齢に伴う脳の器質的変化や身体機能の衰えも発症要因にあげられ、糖尿病、高血圧、心筋症などの身体疾患を伴うと予後も悪く、遷延化する傾向を示す。薬物服用が原因となることも多い。
[編集部]