日本大百科全書(ニッポニカ)

アピアランスケア
あぴあらんすけあ
appearance care 英語

がんの治療に伴う身体の形態変容や、脱毛や皮膚症状といった副作用など、がん患者の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ、QOL)を低下させる要因となる外見(アピアランスappearance)の変化の問題について、学際的・横断的に扱い解決を目ざすケアの総称。
 がん治療に伴う代表的な外見変化には、次のようなものがあげられる。
[化学療法]
 脱毛(頭髪、まつげ、まゆげ)、手足症候群、皮膚色素沈着、爪の割れやはがれ、変色など
[分子標的治療]
 手足症候群、瘡(ざそう)様皮疹(ひしん)、皮膚乾燥(乾皮症)、爪囲(そうい)炎など
[放射線治療]
 放射線皮膚炎など
[手術療法]
 手術痕(こん)、身体の部分的な欠損、むくみなど

 これらの外見に関する変化は従来、「命が助かればやむを得ないもの」「生命とは直接関係ないもの」として、医学的に解決すべきものとはみなされない傾向があり、長らくその予防法やケアについて顧みられることがなく、科学的検証が十分になされていない状況があった。
 近年になり、がん医療の進歩により治療を継続しながら社会生活を送るがん患者が増加するなかで、治療に伴う外見変化に対する患者側の意識が高まり、医療現場におけるサポートの重要性が認識され始めるようになった。
 文部科学省科学研究費助成事業「がん患者の外見変化に対応したサポートプログラムの構築に関する研究」(2009~2011年(平成21~23)、研究代表者・野澤桂子)において行われた調査では、外来化学療法を受けている638名のがん患者(男性264名、女性374名、平均年齢59.54歳)のうち80.3%の患者が、治療により変化した外見に懸念をもっており、かつ97.4%の患者が、外見の変化とケアの情報は病院で与えられるべきと回答しており、外見に関するサポートのニーズがきわめて高いことが示されている。
 こうした患者ニーズに対応するため、2013年には、治療に伴う外見変化に対処し、がん患者がより自分らしく生活できるよう支援することを目的として、国立がん研究センター中央病院に「アピアランス支援センター」が開設された。また2016年には、治療や患者指導、情報提供を行う医師や看護師、薬剤師、その他の医療従事者がよりよいアピアランス支援の方法を選択するための基準を示す目的で、アピアランスケアに必要な情報をエビデンスに基づき整理した『がん患者に対するアピアランスケアの手引き』が作成されている。
[渡邊清高]