日本大百科全書(ニッポニカ)

いぶき
いぶき

宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))が2009年(平成21年)にH-Aロケットにより打ち上げた温室効果ガスを観測する衛星。環境省および国立環境研究所(NIES)との共同プロジェクトである。計画名はGOSAT(ゴーサット)(Greenhouse gases Observing SATellite)。地球温暖化のおもな原因とされる二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、オゾン(O3)や大気中に浮遊するエアロゾル(大気粒子状物質)などの全球規模の濃度と分布、季節変動や年ごとの変動を長期にわたりモニタリングする衛星である。「いぶき」は、高度約667キロメートルの太陽同期準回帰軌道を軌道傾斜角約98度で、約98分かけて地球を周回する。大きさは3.7メートル×1.8メートル×2.0メートルで、打上げ時の質量は約1750キログラムである。「いぶき」には二つのセンサーが搭載された。
 温室効果ガスを観測するTANSO-FTS(Thermal And Near infrared Sensor for carbon Observation-Fourier Transform Spectrometer)は、地表面で反射された太陽光(短波長赤外線)と、地球大気から放射される熱赤外線のスペクトルをフーリエ分光する。大気中に存在する二酸化炭素とメタンは、特定の波長の光を吸収する性質があるので、大気中を透過してきた光の吸収の度合いにより、光の通り道に存在した二酸化炭素とメタンの量を算出することができる。短波長赤外域(1.6マイクロメートル付近および2.0マイクロメートル付近)の二酸化炭素の吸収帯は、地表面付近の情報を多く含む波長帯として重要である。一方、熱赤外域(14マイクロメートル付近)の吸収帯は、おもに2キロメートルより高い高度の情報を得るために利用される。
 雲や大気中のエアロゾルを観測するTANSO-CAI(CAI:Cloud and Aerosol Imager)は、TANSO-FTSが二酸化炭素を測定する際に誤差要因となる雲の有無の判定やエアロゾルの測定に用いる画像センサーで、TANSO-FTSから得られるデータの補正に使われる。欧米や中国などでも温室効果ガスを観測するセンサーが開発されており、なかでもNASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)のOCO(Orbiting Carbon Observatory、軌道上炭素観測衛星)とは共同で校正検証を行うなど国際協力が進んでいる。
 「いぶき」の観測成果は、NIESが中心となって解析を行っている。これにより、二酸化炭素の推定経年平均濃度が2016年2月ころに400ppmを超えた(400.2ppm)ことがわかった。また、1年間で増加した濃度については、2015年夏ごろから2016年4月にかけて2.5ppm以上という過去最高レベルで推移したことなどもわかった。
[森山 隆]