日本大百科全書(ニッポニカ)

新開発銀行
しんかいはつぎんこう
New Development Bank 英語

BRICS(ブリックス)とよばれるブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国の新興5か国が運営する国際金融機関。略称NDB。アジア、アフリカ、中南米など開発途上国のインフラ整備のための融資を目的とする。第二次世界大戦後の世界経済を支えた欧米主導の国際通貨基金(IMF)・世界銀行(国際復興開発銀行)体制に対抗・代替するねらいがある。2012年にインドが創設を提唱し、2014年7月にブラジルで開かれたBRICS首脳会議(フォルタレザ・サミット)で正式に設立が決まり、2015年7月に第1回総会を開いて発足した。BRICS開発銀行、BRICS銀行ともよばれるが、近い将来、トルコ、メキシコ、インドネシア、ナイジェリアなどが参加することを想定し、正式名称は「新開発銀行」となった。いわば新興国版の世界銀行である。発足時の資本金は5か国均等出資の500億ドルで、7年後に1000億ドルに増やす計画である。いずれの国も他の4か国の同意なしに資本金割合を増やすことはできない。新規加入を認めるが、5か国の出資比率が55%を下回ることはない。トップは総裁で任期は5年。総裁人事は5か国の持ち回りとし、初代総裁にはインドの経営者・銀行家のカマートKundapur Vaman Kamath(1947― )がついた。本部を中国の上海(シャンハイ)に置き、南アフリカ共和国に「アフリカ地域センター」を設け、アフリカ向け融資の拠点とする。途上国の道路、発電、空港、下水道などのインフラ整備計画を対象として2016年から融資を始め、2017年の融資額は25億~30億ドルになる見通しである。なお、BRICS首脳会議は新開発銀行の設立決定と同時に、通貨危機に陥った際などに対応する「緊急時外貨準備金基金」の設立でも合意した。
 現在のIMF・世界銀行体制に対し、かねてBRICSなど新興国は、(1)勃興するアジアやアフリカの資金需要をまかないきれていない、(2)支援に際し、新興国に求める財政規律や市場改革内容が厳しすぎる、(3)欧米先進国が人事や運営を独占している、などの不満をもっていた。このためアジア・アフリカ諸国は新開発銀行設立を歓迎したが、新開発銀行以外にも、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)や同じく中国によるシルクロード基金など新興国への融資を目的とした国際金融機関が相次いで発足した。このため日米などの先進国からは、野放図(のほうず)な融資を招き、開発途上国の環境破壊につながる、などの批判が出ている。
[矢野 武]