日本大百科全書(ニッポニカ)

スチュワードシップ・コード
すちゅわーどしっぷこーど
stewardship code 英語

銀行、証券、保険会社、年金基金などの機関投資家に対して、投資先企業の中長期的な成長を促すために求められる行動規範。スチュワードstewardとは執事や財産管理人という意味で、機関投資家にとって重要な投資先である上場企業との対話を通じて、その企業の経営に誤りがないように働きかけるとの意がこめられている。日本では「機関投資家の行動指針」「機関投資家の行動原則」「機関投資家の責務」などと訳される。
 投資先企業への監視や対話が不十分であったことが2008年のリーマン・ショックを招いたとの反省から、2010年にイギリスで初めて定められた。日本ではこれを参考に、金融庁が2014年(平成26)に日本版スチュワードシップ・コード(「責任ある機関投資家」の諸原則)を制定・公表し、2017年に改訂した。
 日本版コードは機関投資家について、(1)明確な行動指針をつくり、公表する、(2)親会社や取引先などとの利益相反を回避するため、議決権行使を監督する第三者委員会設置など明確な方針をつくり、公表する、(3)投資先企業の状況を的確に把握しチェックする、(4)株価指数に連動して投資する「パッシブ運用」をする投資家を含め、中長期視点で投資先企業と「目的を持った対話」を通じて、投資先企業との認識を共有し、問題の改善に努める、(5)議決権行使の方針をつくり、個別の投資先企業および議案ごとに賛否を公表する、(6)機関投資家としての責務をどう果たしているか、顧客・受益者に対し、少なくとも年に一度は報告する、(7)投資先企業の持続的成長に役だつように、対話や行動を適切に行うための実力を備える、の七つの原則を定めている。2016年12月時点で、日本版コードの受入れを表明した機関投資家は内外で214に上る。金融庁は受入れを表明した投資家をホームページで公表し、随時更新している。
 日本では、機関投資家が企業の株式を大量に保有しながら、株主総会などで経営に口を出さない「物言わぬ株主」の状況が続いてきた。スチュワードシップ・コードの制定は、機関投資家を「物言う株主」に変えて投資先企業の経営監視機能を強化することで、企業の持続的成長や株主への還元を後押しするねらいがある。なおスチュワードシップ・コードが機関投資家を対象とするのに対し、上場企業が守るべき規範を示したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)がある。スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードは企業価値の向上を促す車の両輪とされている。
[矢野 武]