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鋳鉄鋳物を製造するための直立する鋳鉄溶解炉で、古くから用いられている。埼玉県川口市は鋳物工場の多い街として有名であるが、ここを舞台とした小説で映画化もされた『キューポラのある街』で一般にも親しまれている。
炉の構造は簡単で、鉄板を巻いて立型円筒形とし、内側に耐火れんがで裏張りする。炉底は開閉できるようにし、溶解終了後開いて炉内容物を落下させる。炉壁には下方から、溶融鋳鉄の取出し口、溶融滓(さい)の取出し口、燃焼用の空気吹込み口(羽口(はぐち))、原料地金や燃料コークスや造滓剤を投入する装入口などがついている。
炉底より羽口上のある高さまでコークスを詰め、その上に地金(銑鉄、鋼くず、鋳鉄くずなど)とコークス、造滓剤(石灰石)を一定の量比で交互に装入し、羽口から空気を送風機により送り込み、コークスを燃焼させて地金を溶解し、炉底近くの取出し口から溶融鋳鉄を取り出して取鍋(とりべ)に受け、これを鋳型まで運び鋳造する。溶解能力は1時間当りの溶解重量で示され、炉の大小によって小は1トンから大は25トン程度のものまである。工芸品工場などでは、粘土でつくった樽(たる)状の円筒を3段くらい重ねて「こしき」と称して鋳鉄溶解炉としている。キュポラの名もラテン語の樽を意味するcupaに発するといわれる。現在では低周波誘導電気炉が鋳鉄溶解に広く用いられるようになったが、依然としてキュポラも広く用いられている。
[井川克也]