日本大百科全書(ニッポニカ)

会計監査人
かいけいかんさにん

意義・制度趣旨

会社外の独立した会計専門家の立場から、株式会社の計算書類とその附属明細書等について会計監査を行う存在。会社法(平成17年法律第86号)上、「役員」ではないが(会社法396条1項。以下の条文番号は、とくに補足のない限りすべて会社法をさす)、「役員等」に含まれる(423条1項)。一般に「機関」と解するかどうか見解が分かれる。監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社において設置が義務づけられる(327条5項)。また、大会社では設置が強制され(328条1項・2項)、中小会社では、規模にかかわらず、定款の定めにより任意に設置できる(326条2項)。会計監査人設置会社では、一定の場合、計算書類等を取締役会で確定することができ(439条)、剰余金の配当等を取締役会で決定する旨を定款で定めることができる(459条1項4号)。
[福原紀彦]

資格・選任等

資格と欠格事由

会計監査人は公認会計士または監査法人でなければならない(337条1項)。会計監査人に選任された監査法人は、その社員のなかから会計監査人の職務を行うべき者を選定し(後掲の欠格事由がある者は選定できない)、これを株式会社に通知しなければならない(同条2項)。
 次に掲げる者は、会計監査人となることができない(欠格事由)。すなわち、(1)公認会計士法の規定により、計算書類について監査をすることができない者、(2)株式会社の子会社もしくはその取締役、会計参与、監査役もしくは執行役から公認会計士もしくは監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者またはその配偶者、(3)監査法人でその社員の半数以上が(2)に掲げる者であるものは、法定の欠格者である(同条3項)。
[福原紀彦]

選任等と監査役の関与

会計監査人は、株主総会の決議によって選任される(329条1項)。員数に規制はない。任期は1年であるが、別段の決議がなければ再任されたものとみなされる(338条1項・2項)。監査役設置会社では、株主総会に提出する会計監査人の選任・解任・不再任に関する議案の内容は、監査役(監査役会)が「決定」する(344条。指名委員会等設置会社では監査委員会が、監査等委員会設置会社では監査等委員会が決定する。404条2項2号、399条の2第3項2号)。会計監査人についても、会社法制定時から、登記事項とされている(911条3項19号)。
 会計監査人と会社との関係は委任の規定に従うので(330条)、会計監査人はいつでも辞任することができ、死亡・破産・成年被後見が終任事由となり、その他、任期満了・解任・資格喪失・会社の解散によっても終任となる。株主総会は、普通決議によって、いつでも会計監査人を解任することができ(339条1項)、監査役(監査役会、監査等委員会、監査委員会)は、一定の場合に会計監査人を解任することができる(340条)。また、会計監査人の報酬の決定には、監査役等の同意が必要である(399条)。
[福原紀彦]

権限・義務・責任

権限

(1)会計監査とその報告

会計監査人は、会社の計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査し(396条1項前段)、計算書類等の監査について、法務省令で定めるところにより、会計監査報告を作成しなければならない(396条1項後段、会社法施行規則110条、会社計算規則126条)。
[福原紀彦]

(2)会計帳簿閲覧・調査・報告徴収権

会計監査人は、いつでも、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧および謄写をし、取締役(指名委員会等設置会社では執行役・取締役)・会計参与・支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができる(396条2項)。また、その職務を行うため必要があるときは、子会社に対して会計に関する報告を求め、また、会社またはその子会社の業務および財産の状況の調査をすることができる(同条3項。ただし、その子会社は、正当な理由があるときは、報告または調査を拒むことができる=同条4項)。
 なお、会計監査人は、その職務を行うにあたっては、欠格事由のある者を使用することはできない(同条5項)。
[福原紀彦]

義務

会計監査人は職務を行うについて会社に対して善管注意義務を負い(330条、民法644条)、会社法上、以下の義務を負う。
 第一は、不正行為の報告義務である。会計監査人は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを監査役(監査役会設置会社では監査役会)に報告しなければならない(397条1項・3項、金融商品取引法193条の3。なお、監査等委員会設置会社では監査等委員会あてに、指名委員会等設置会社では執行役・取締役の職務執行について監査委員会あてに報告する=397条4項・5項)。
 第二は、監査役等からの報告徴収への対応義務である。監査役は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人に対し、その監査に関する報告を求めることができ(同条2項)、会計監査人はこれに対応しなければならない(報告徴収権限は、監査等委員会設置会社では、監査等委員会が選定した監査等委員にあり、指名委員会等設置会社では、監査委員会が選定した監査委員会の委員にある=同条4項・5項)。
 第三は、総会での意見陳述義務である。監査する計算書類等が法令または定款に適合するかどうかにつき、監査役(監査役会設置会社では監査役会または監査役、監査等委員会設置会社では監査等委員会または監査等委員、指名委員会等設置会社では監査委員会またはその委員)と意見を異にするときは、会計監査人(監査法人では職務を行うべき社員)は、定時株主総会に出席して意見を述べることができ(398条1項)、定時株主総会において出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時株主総会に出席して意見を述べなければならない(同条2項)。
[福原紀彦]

責任

会計監査人は、会社外の独立した存在であるが、会社法上、「役員等」に含まれ(423条1項)、会社に対する責任を負う(423条)とともに、第三者に対する責任(429条)を負うことが規定されている。会社に対する責任については、株主代表訴訟の対象となり(847条)、責任の一部免除・軽減の制度(社外取締役と同様。425~427条)の適用がある。その他、金融商品取引法(24条の4、22条1項、21条1項3号)や民法に基づき、不法行為責任・債務不履行責任を追及される余地がある。これまで会計監査人(監査法人・公認会計士)に損害賠償責任が認められた事例も少なくなく、企業不祥事の発生における公認会計士等の責任追及が社会的関心を集めている。
[福原紀彦]