日本大百科全書(ニッポニカ)

ジュールの実験
じゅーるのじっけん

気体の内部エネルギーの体積・温度依存性を調べた実験。イギリスの実験物理学者ジュールは、コックでつながれた二つの容器A、Bを使用したが、この装置全体を熱絶縁物で十分に保温して、外部との間に熱量の出入りがないようにした。初め、Aに気体を詰め、Bは真空にしておく。ついでコックを開いて、気体がA、B両方を占めるようにする。この状態を十分に長時間保持したのちに気体の温度を測る。その結果は、気体の温度はコックを開く前と変わらないということであった。この装置には外部との間に熱量の出入りはなく、また明らかに、外部から仕事をされたり外部へ仕事をするということはまったくない。したがって、熱力学第一法則により、この気体の内部エネルギーはずっと一定に保たれているはずである。このこととジュールの実験結果とから、気体の内部エネルギーは温度にはよるが体積には無関係であるということになる。
 しかし、この実験は少量の気体を用いて行われたもので、実験精度は高くない。ジュールとトムソンは、管の途中に有孔栓を置き、気体が左側から右側へ定常的に流れるようにした。この際左右それぞれにおける気体の圧力はそれぞれ一定に保たれるように調節する。また、装置全体が外部と熱量の交換をしないように保温してある。この実験はジュール‐トムソンの(有孔栓の)実験とよばれる。実験結果によると、実在気体では、ジュールの実験の結果とは異なり、気体の温度が変化(上昇または下降)し、またその変化量は有孔栓の両側での圧力差に比例する。この事実をジュール‐トムソン効果という。この事実に基づいて熱力学的考察を行うと、実在気体では、内部エネルギーは温度だけでは決まらないで体積にもより、理想気体では、内部エネルギーが温度だけで決まることが結論される。
 ジュール‐トムソンの実験において、気体の温度が上昇するか下降するかは、気体の種類、実験を行う温度、圧力によって決まり、かなり複雑である。しかし、どのような気体でも、その気体に特有な温度(たとえば水素では絶体温度200K)以下では、かならず温度は低下する。この事実は、気体の液化技術ひいては低温工学の発展を大いに促進した。
[沢田正三]