日本大百科全書(ニッポニカ)

制動放射
せいどうほうしゃ

荷電粒子が強い電場によって加速度を受けたときに放射する電磁波をいう。その放射の機構をさすこともある。荷電粒子が原子核の近くを通過するとき、核のクーロン力によって進路を曲げられ、荷電粒子は加速度を得て、制動放射を生ずる。放射のエネルギーについては、荷電粒子と原子核の衝突の仕方によって、荷電粒子がその全運動エネルギーを放出する場合からゼロまでスペクトルは連続的に分布する。放射の確率は加速度の二乗に比例するので、荷電粒子の質量の二乗に反比例する。したがって、電子や陽電子のような軽い粒子による制動放射が目だっておこる。また標的の原子核は重いほうが放射は大きい。
 高エネルギーの電子が物質を透過するときに制動放射によって単位長さを進む間に失うエネルギー(阻止能)は、ベーテとハイトラーによって計算されている。制動放射により入射電子のエネルギーが1/eに減少する物質の厚さを放射長という。衝突するときの入射電子と原子核の最近接距離が原子の半径より小さければ、原子核のクーロン力が入射電子にそのまま及ぶが、大きい場合には原子内電子によって遮蔽(しゃへい)され、弱められる。
 高エネルギーの電子を固体の標的に当てて制動放射により発生させるγ(ガンマ)線は、高エネルギー物理の実験に利用される。X線管でも電子を陽極の金属に衝突させてX線を発生させるが、その連続スペクトルの部分は、電子が金属中で出す制動放射によるものである。
[菊田惺志]

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