日本大百科全書(ニッポニカ)

メッセンジャー
めっせんじゃー
Messenger 英語

世界初の水星周回探査機。英語のMErcury Surface, Space ENvironment, GEochemistry and Rangingの頭文字をとって「Messenger」と命名された。NASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)のディスカバリー計画に位置づけられる水星探査ミッションで、2004年8月にケープ・カナベラル空軍基地からデルタ型ロケットで打ち上げられた。地球、金星、水星でスイングバイ(天体の重力を利用して加速させる技術)を重ね、2011年3月に水星の周回軌道(約200キロメートル×1万5200キロメートル、軌道傾斜角82.5度)に投入された。大きさは1.27メートル×1.42メートル×1.85メートルで総重量は1093キログラム。搭載観測機器は撮像カメラ、γ(ガンマ)線・中性子スペクトロメーター、X線スペクトロメーター、磁力計、レーザー高度計、水星大気・表面組成スペクトロメーター、エネルギー粒子・プラズマスペクトロメーターなどである。メッセンジャーの目的は、水星の密度、地質の歴史、核の構造、磁場の性質などを解明するための観測を行うことである。
 メッセンジャーは、水星の磁場の定期的な観測により、理論モデルとの比較で地形形成の歴史や過去の磁場の存在などを知る手がかりを収集した。その結果、過去において地殻磁場は現在よりも強く、逆向きであった可能性があることがわかった。またダイナモ理論による惑星磁場も長い間存在していたと考えられる。水星表面の化学組成に関しては、北半球の酸素やケイ素の濃度は大きな変動はなかったが、カリウムは緯度によって3倍以上もの差があることがわかった。また、水星の極域にはレーダーで明るく光るクレーターがあり、そこに氷の存在が期待されたが、表面にはなく、10センチメートル程度地下にもぐれば、数十億年は安定して氷が存在し続けられることがわかった。
 水星の最後の画像は2015年4月29日に撮影され、メッセンジャーは2015年5月1日に水星表面へ落下し、ミッションを終了した。
[森山 隆]