日本大百科全書(ニッポニカ)

児童買春児童ポルノ処罰法
じどうかいしゅんじどうぽるのしょばつほう

児童買春・児童ポルノを取り締まり、児童(18歳未満)の権利を擁護することを目的とした法律。平成11年法律第52号。法律の正式名称は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」である。国の内外を問わず18歳未満の児童に金品を与えて性的行為をすることや、児童を被写体としたポルノの製造や提供などを禁止する。従来からある売春防止法は、売春そのものについては処罰せず、売春を公然と勧誘する行為や助長する行為等を処罰するが、本法は、金品を与えて行う児童との性的行為(買春)の処罰と、猥褻(わいせつ)に対する表現規制とは異なった観点からの、児童ポルノの製造や提供等を処罰する日本で初めての法律である。
[園田 寿]

成立までの背景

児童ポルノの製造過程では、児童に対する悲惨な性的虐待が行われ、被写体となった児童の性的被害が児童ポルノによって半永久的に記録され、被害が深刻化する点に、児童ポルノを処罰する理由がある。
 児童ポルノに対する世界的な規制の流れを受けて、1998年(平成10)5月、当時の与党(自由民主党・社会民主党・新党さきがけ)による法案が議員立法として国会に提出されたが、継続審議となった。その間、同年6月に国連子どもの権利委員会が、日本に対して児童ポルノ・児童買春防止についての包括的な行動計画を策定するよう勧告し、日本での積極的な法規制を求める国際世論がいっそう高まった。
 継続審議となった法案については、児童ポルノの定義や規制対象に「絵」が含められていたこと、また「児童ポルノの単純所持」が禁止されていたことなどについて、表現の自由と抵触するのではないかと多方面から批判された。結局、与野党の超党派が、継続審議となっていた原案を取り下げ、修正案を再提出し、1999年5月18日に成立に至った。
 その後、2004年(平成16)には、インターネット上の児童ポルノを取り締まるための法改正が行われ、さらに2014年には性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持や盗撮などが犯罪として規定された。また、他人から児童ポルノの提供を受けて単に所持・保管している行為については、その者のプライバシーを優先させて禁止の対象とはされていなかったが、児童ポルノ根絶のためには需要も絶つべきであるとの意見が強く、「性的好奇心を満たすため」という限定を付して単純所持が処罰されることになった。
[園田 寿]

法の目的・内容・課題

本法は、性的搾取および性的虐待からの児童の保護を目的としている。
 「児童買春」とは、児童に対して金品などの対償を与えたり、その約束をしたうえで児童と性交などを行うことである。買春は「5年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処せられ、仲介や勧誘も処罰される。児童買春罪は、被害児童の告訴がなくても処罰できるようになっている。
 「児童ポルノ」とは、(1)児童との性交や性交類似行為における児童の姿態、(2)児童の性器等を触ったり、児童に他人の性器等を触らせたりしている姿態(ただし性欲を興奮・刺激するもの)、(3)ことさらに児童の性的部位が露出・強調された全半裸の姿態(ただし性欲を興奮・刺激させるもの)を描写した写真やDVD、電磁的記録などである。
 児童ポルノに関して処罰される行為は、(a)児童ポルノの公然陳列(5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または併科)や、(b)有償無償を問わず、また特定少数人か不特定多数人かを問わず、およそ他人への提供行為、さらに(c)提供を目的とした児童ポルノの製造、輸入などの行為(特定少数人に対する場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、不特定多数人に対する場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または併科)である。また他人へ提供する目的がなくとも、(d)児童との性的行為の場面などを撮影し、それを記録する行為(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)も処罰対象とされている。2014年の改正では、(e)「性的好奇心を満たす目的で」児童ポルノを所持する行為が禁じられ(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)、(f)児童の裸などを盗撮する行為も処罰されることになった(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)。
 児童ポルノを禁止する目的は、児童ポルノの製造過程で現実に性的搾取・虐待を受けた児童の権利保護であるから、児童との性的行為を描いた架空の「絵」(アニメやコミックなど)は、本法にいう「児童ポルノ」ではない。しかし、コンピュータ・グラフィックス(CG)の技術が飛躍的に進歩しており、実際に児童に対する性的虐待行為を行わなくとも、実写に近い、きわめてリアルな(架空の)「児童ポルノ」を作成することが可能となっている。これは、現実の児童に対する性的虐待の記録としての児童ポルノという本法の定義からは外れるが、このような表現物も「準児童ポルノ」として取り締まるべきであるとの意見も強く、表現の自由の観点から議論になっている。
[園田 寿]