公益財団法人日本障がい者スポーツ協会、文部科学省、ならびに開催地都道府県・政令指定都市および開催地市町村等が主催する国内最大規模の障害者スポーツの総合大会。毎年約3200人の選手と約2100人の役員が参加する。障害のある選手がこの大会に参加し、競技等を通じてスポーツの楽しさを体験すること、国民の障害に対する理解を深めること、障害者の社会参加の推進に寄与することを目的としている。毎年1回、国民体育大会を開催した都道府県で、原則として同会場を利用し、国民体育大会終了後に3日間の会期で実施される。
1965年(昭和40)から2000年(平成12)まで実施されていた全国身体障害者スポーツ大会と1992年(平成4)から2000年まで実施された全国知的障害者スポーツ大会(ゆうあいピック)を統合し、2001年に第1回大会が宮城県で開催された。2008年には精神障害者が正式に参加することとなり、身体障害者、知的障害者、精神障害者の3障害の選手が参加する大会となった。
出場できる選手は身体障害者手帳の交付を受けた身体障害者、療育手帳の交付を受けた知的障害者またはその取得対象に準ずる障害のある知的障害者、精神障害者福祉手帳の交付を受けた精神障害者またはその取得対象に準ずる障害のある精神障害者のうち、その年の4月1日現在で13歳以上の人である。
個人競技と団体競技があり、それぞれの競技・種目により出場できる障害の種類が決まっている(以下、肢体不自由:肢体、視覚障害:視覚、聴覚障害:聴覚、内部障害:内部、知的障害:知的)。個人競技には陸上競技(肢体、視覚、聴覚、内部、知的)、水泳(肢体、視覚、聴覚、知的)、アーチェリー(肢体、聴覚、内部)、卓球・サウンドテーブルテニス(肢体、視覚、聴覚、知的)、フライングディスク(肢体、視覚、聴覚、内部、知的)、ボウリング(知的)がある。各個人競技はアーチェリーとフライングディスクを除き、身体障害者は1部(39歳以下)と2部(40歳以上)に、知的障害者は少年の部(19歳以下)、青年の部(20~35歳)、壮年の部(36歳以上)に分かれて競技する。
団体競技にはバスケットボール(知的)、車椅子(いす)バスケットボール(肢体)、ソフトボール(知的)、グランドソフトボール(視覚)、バレーボール(聴覚、知的、精神障害:精神)、サッカー(知的)、フットベースボール(知的)がある。これら正式競技のほかに障害者へのスポーツ普及に有効だと考えられる競技がオープン競技として実施される場合がある。
個人競技に出場する選手は同一競技内で原則2種目まで出場できる(リレーに出場する場合は3種目まで可能)。ただし、個人競技と団体競技の両方に出場することはできない。
個人競技の選手の選考は各都道府県・政令指定都市において障害者団体や障害者スポーツ関係者等からなる選手選考委員会によって行われる。このとき、地域での障害者スポーツ大会の成績を参考にするが、かならずしも地域の大会の優勝者が選考されるわけではない。団体競技では、原則、全国に八つあるブロック大会で優勝したチームに出場権が与えられるが、チーム数が少ないなどブロックでの予選開催が困難な場合はスポーツ協会が選考したチームが出場する場合がある。
大会に出場する肢体不自由者、視覚障害者は障害の種類や軽重(障害区分)によってクラス分けされ、同じクラスの人と競技を行う。肢体不自由者の場合、陸上競技や水泳など競技によって障害区分が異なる。また、この障害区分は本大会独自のもので、パラリンピックなど国際大会や他の国内大会のクラス分けの方法とは異なる。一方、聴覚障害者、知的障害者、精神障害者は区分をしない。内部障害者は2015年時点で、膀胱(ぼうこう)または直腸機能障害の人のみ出場可能となっている。
[藤田紀昭]
50メートル、100メートル、200メートル、400メートル、800メートル、1500メートル、スラローム、4×100メートルリレー、走高跳び、立幅跳び、走幅跳び、砲丸投げ、ソフトボール投げ、ジャベリックスロー、ビーンバッグ投げが実施され、障害区分により参加できる種目が決まっている。視覚障害者の場合、障害区分によって伴走者が認められているほか、フィニッシュライン後方から発せられる音を頼りに走る音源走などがある。スラロームは車椅子に乗った選手が全長30メートルの直走路に置かれた赤白の旗門を前進、後進等しながら通過し、そのタイムを競いあう。ジャベリックスローは槍(やり)投げに類似した種目で、長さ70センチメートルのターボジャブとよばれるものを投げ、飛距離を競う。ビーンバッグ投げは重さ150グラムの袋を投げて飛距離を競う。ビーンバッグを足にのせてけり出すことも含め、投げ方は自由である。
[藤田紀昭]
自由形、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ、個人メドレー、リレーが実施されている。距離は、種目により、25メートル、50メートル、75メートル、100メートルで行われる。障害の種類や状況により、水中スタートや浮力を補助する用具の使用が認められている。視覚障害によりターンやゴールの位置が見えない選手には指示棒(タッピングバー)などによって合図をすることができる。
[藤田紀昭]
視覚障害者用に日本で開発された卓球競技。金属球の入った音の出る卓球用ボールを、ラバーの貼(は)られていない卓球ラケットで転がしてプレーする。視力による有利不利をなくすためアイマスクを着けて行う。ダブルヒット(ラケットに続けて2回当てること)やホールディング(ボールをラケットで打ったときに明確な音がしないこと)などの反則がある。
[藤田紀昭]
アキュラシー競技とディスタンス競技がある。アキュラシー競技は5メートルまたは7メートル離れたアキュラシーゴール(直径91.5センチメートルの円形)にディスクを10回投げてその通過数を、ディスタンス競技はディスクを3回投げてその飛距離を競う。
[藤田紀昭]
車椅子使用者が行うバスケットボール。コートの広さ、リングの高さ、使用するボールは一般のバスケットボールと同じ。ただし、ボールを保持したまま2プッシュまで車椅子をこぐことができ、ドリブルを入れるとさらに2プッシュできる。したがって一般のバスケットボールにおける反則のダブルドリブルは適用されない。障害の程度に応じて個々の選手に持ち点があり、1チーム(5名)の持ち点の合計が14点を越えてはいけない。全国障害者スポーツ大会におけるチーム編成では男女を問わない。
[藤田紀昭]
視覚障害者を対象に開発された球技。1チーム10名でプレーする。ハンドボールを使用する。投手(ピッチャー)には全盲の選手が起用され、捕手(キャッチャー)の拍手を頼りにボールを転がして投球する。打者(バッター)は、転がってくるボールの音を頼りに打撃を行う。プレー中の衝突などが起こらないよう、守備用ベースと走塁用ベースが設けられている。全盲プレーヤーの守備では、転がってきた打球であってもボールをキャッチすればアウトとなる。
[藤田紀昭]