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[諏訪 彰][中田節也]
新岳は、古岳の北西に開いた崩壊地形内に成長した火山である。最近1万年の噴火は古岳・新岳を中心に発生している。古岳では数百年前に火砕流噴火が発生した。噴火記録は新岳の1841年(天保12)の噴火以降存在しており、1931年(昭和6)~1935年と1966年~1980年にかけて活発に噴火した。1933年の噴火では火口から1.7キロメートル東の七釜(ななかま)集落に火山礫(れき)が降下し、13戸が全焼し8名が死亡した。また、この噴火の約1年後、大規模な土石流が発生し死者5名の被害者を出した。1945年に水蒸気噴火、1966年に開始した噴火は1970年代まで断続的に続いた。1980年には水蒸気噴火が発生した。
1999年(平成11)夏ごろから新岳の地震活動が活発化、2001年からは地殻変動が観測され、2005年ごろからは火口付近の温度が上昇、2008年からは火口から放出される二酸化硫黄量の増加がみられ、新岳火口の直下にマグマが貫入したと考えられた。その後、2014年8月3日には、山頂部の隆起が傾斜計で認められ、その1時間半後に水蒸気噴火が発生した。この噴火によって低温の火砕サージが火口から約2キロメートル西に流れ下り、同日、噴火警戒レベルは3(入山規制)に引き上げられた。この後も活発な噴煙活動が続き、2014年末から二酸化硫黄量がそれまで以上に増加し、2015年1月24日と5月23日に有感地震がおこった。同年5月29日には、2014年より規模の大きいマグマ水蒸気噴火が発生。この噴火の数日前から山頂部の地震回数の増加と二酸化硫黄の放出量の低下が認められていた。この噴火に伴って発生した火砕流は火口から全方向に流れ出し、北西方向では居住区である向江浜(むかえはま)海岸まで達した。この噴火直後に噴火警戒レベルが5(避難)に引き上げられ全島避難となった。その後は同年6月19日にごく小規模な噴火があったものの、以降噴火は発生しておらず、二酸化硫黄の放出量が大幅に減少し火山性微動も観測されていないことから、2016年6月14日、火山噴火予知連絡会は「爆発的な噴火の可能性は低下している」との見解を出し、噴火警戒レベルは3(入山規制)に引き下げられた。
[中田節也]