拠出された掛金が個人ごとに明確に分離され、掛金とその運用収益との合計額をもとに給付額が決定される年金。従来型の確定給付年金(厚生年金基金や税制適格退職年金)は、中小零細企業や自営業者に十分普及していなかったこと、転職時の年金資産の移管が不十分であったこと、さらに2000年(平成12)4月から退職給付にかかる新会計基準が導入され、積立不足をバランスシートに負債として計上することとされたことなどを背景として、2001年の確定拠出年金法により創設された。アメリカの内国歳入法401条k項に基づく制度を参考にしたことから「日本版401k」とよばれることもある。確定給付年金と比べると、加入者自身が運用の方法を決めることができるというメリットがある一方、投資リスクを加入者自身が負うというデメリットがある。
確定拠出年金には、事業主が従業員を対象として実施する「企業型」と、国民年金基金連合会が自営業者のほか、国民年金の第3号被保険者、企業の従業員(企業型確定拠出年金加入者については規約に定めた場合に限る)、公務員等共済加入者を対象として実施する「個人型」がある(第3号被保険者や公務員等共済加入者の加入は2017年1月から)。企業型の掛金は、原則として事業主が負担するが、加入者である従業員も一定の範囲内で事業主の掛金に上乗せ拠出ができる(これを「マッチング拠出」という)。一方、個人型の掛金は、加入者本人が負担するが、中小企業(従業員100人以下)に限り、個人型に加入する従業員の拠出に追加して事業主が拠出することができる「個人型確定拠出年金への小規模事業主掛金納付制度」がある(2017年1月から実施)。
掛金には一定の拠出限度額が定められている。拠出された掛金の運用の指図は、加入者が行うが、企業型の場合は運営管理機関や事業主が指定するリスク・リターン特性の異なる三つ以上の運用商品(株式や債券など)のなかから加入者が選択して行う。離転職した場合には年金資産を他の確定拠出年金や確定給付年金に移管することができる。なお、加入者のうち、掛金を行わず、過去に積み立てた資産の運用のみを行う者を「運用指図者」という。
給付には、老齢給付金のほか、障害給付金、死亡一時金、脱退一時金がある。税制上の扱いは、事業主拠出分は全額が損金算入、加入者拠出分は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)とされ、積立金には特別法人税が課せられ(ただし、2017年3月末までは凍結され非課税)、年金は公的年金等控除、一時金は退職所得控除が適用される。
[山崎泰彦]