7 用法・語法上の各種の指示

7-1  スピーチラベル
単語・語義・用例について,それらが用いられる地域的な差異や場面・文体上の性質が限定されている場合は,以下のような略号で示した.誤読の恐れのない場合,複合ラベルの形で掲げた.
best [動] ⦅米略式・英古⦆
7-2  地域的差異
主にその地域で用いられることを示す.以下の地域名は略称で表した.
⦅米⦆米国
⦅英⦆英国
⦅豪⦆オーストラリア
⦅南ア⦆南アフリカ共和国
⦅NZ⦆ニュージーランド
⦅スコット⦆スコットランド
⦅アイル⦆アイルランド
⦅ニューイング⦆ニューイングランド
⦅イング⦆イングランド
7-3  場面・文体的差異
⦅形式⦆形式ばった (formal) 響きをもつ書き言葉・話し言葉で,公の文書や商業文,または公的な場面での改まったスピーチで用いられる.
⦅略式⦆くだけた (informal) 響きをもつ書き言葉・話し言葉で,家族や友人など親しい者同士での会話や手紙で用いる.
⦅話⦆日常の話し言葉で,会話でもっぱら用いられる.
⦅文語⦆今日では主に文学作品の中で文体的な効果をねらって用いられる.
⦅俗⦆俗語で,⦅略式⦆よりもいっそうくだけた,やや品位に欠ける表現.学生同士や同業の仲間など,限られた親しい間柄で用いる.
⦅卑⦆非常に下品な,しばしば差別的な意味合いをもつ表現で,人前で用いるとひんしゅくを買うおそれのある表現.
⦅タブー⦆使用を極力避けるべき単語.
⦅古⦆今日一般にはほとんど使われることのない古めかしい表現.古い文学作品や格言などで用いられる.
⦅古風⦆今日では,やや古めかしい響きをもつ書き言葉・話し言葉.若い世代の人々の間ではあまり用いられない.
⦅詩⦆詩または雅文調の文章の中で用いられる表現.
⦅もと⦆本来その意味で用いられていた起源を示す表現.
⦅まれ⦆
⦅今はまれ⦆
今日ではごく限られた場面でしか用いられない表現.
⦅廃⦆今日では廃れてしまった廃語.
⦅幼児語⦆主に子供・幼児が用いる語.
⦅非標準⦆英語を母語とする教養ある人々の間で,正式と認められない表現・用法.
⦅常套句⦆慣用的な表現で,使い古された感のある陳腐な表現.
以上のほかに,⦅軽蔑的⦆ ⦅よい意味で⦆ ⦅ほめて⦆ ⦅ユーモア⦆ ⦅皮肉⦆ ⦅強調⦆ ⦅強意⦆ ⦅比喩的⦆ などの具体的な指示を用いて,語(句)のニュアンスがわかるよう配慮した.
7-4  専門分野の表示
特定の専門分野で多く用いられる専門語義には,〔化学〕のように分野名を訳語の前に示した.ただし,訳語からその分野が明らかな場合は表示を省いてある.以下の例外を除き,原則として分野名は略さずに示した.
〔アメフト〕 アメリカンフットボール
7-5  動詞・形容詞の特定の結びつき(選択制限)
その動詞の主語・目的語になる特定の名詞を 〈 〉で示した.ただし,他動詞の目的語にあたる名詞を「…を」で示せる場合は,煩雑さを考慮して〈 〉に入れていない.同様にその形容詞と結びつく特定の名詞を〈 〉で示した.
col・lapse ... [動] ━━ 1…をつぶす,崩壊させる; 〈計画などを〉くじけさせる,つぶす,だめにする 2〈いす・望遠鏡・傘などを〉折り畳む 3〈肺・血管などを〉虚脱させる
ex・pend・a・ble ... [形] ⦅形式⦆〈物品などが〉使い捨ての; 〈人が〉いなくても済む; 〈兵員が〉(戦略上)犠牲にしてよい
7-6  コロケーション(連語関係)
その語と結びつきの強い副詞・前置詞・to不定詞などを,語義の後に ⦅ ⦆ に入れて示した.前置詞は ⦅in...⦆ のように3点リーダーを付けて副詞 ⦅in⦆ と区別した.それに対応する訳語は,( )で語義の前に示した.
i・de・a 5 [C][U](…について;…しようと;…だと)考える[想像する]こと,(漠然とした)感じ,予感,想像 ⦅of...; of doingthat節⦆(×to do は不可)
7-7  同意語・反意語
同意語は ( ) で,反意語は(⇔ )の形で訳語の後に示した.ここでいう同意語とは「意味内容がほぼ同じ語」ほどの緩やかなものをさし,常に置き換え可能ということではない.
7-8  名詞の可算,不可算の表示
固有名詞を除くすべての名詞(分離複合語は除く)について,可算名詞には [C](countable),不可算名詞には [U](uncountable)の表示を付した.ただし ⦅a ~⦆ ⦅~s⦆ ⦅the ~⦆などの表示がある場合には [U][C] の表示をしていない.
7-9  数の一致
主語の名詞(句)が単数か複数かによって,動詞も単数・複数に変化する.これを数の一致というが,語尾に -s をもち一見複数形に見える名詞(biophysics,measles など)や複数名詞(people,trousers など)では,数の一致の仕方を ⦅単数扱い⦆ ⦅複数扱い⦆ ⦅単数・複数扱い⦆ のように示した.
e・co・nom・ics ... [名]⦅単数扱い⦆ 経済学 ...;⦅複数扱い⦆(一国の)経済状態
7-10  名詞句
見出しの名詞を含む名詞句が a number of のように成句を成す場合は[a ~ of A]の形で示した.この場合,A が主要部(head)になり,A が数の一致を起こすのが普通である.そのために a plenty of money は money に合わせて全体として ⦅単数扱い⦆,a plenty of eggs は eggs に合わせて全体として ⦅複数扱い⦆.中には a group of students のように時に group が主要部になり,⦅単数扱い⦆ になるような場合もある.
7-11  集合名詞
同じ種類の人・物からなる集合体を表す集合名詞は,⦅集合的⦆ と表示した.個別の構成員を意識すると ⦅複数扱い⦆,一つの単位ととらえると ⦅単数扱い⦆ になる.
fam・i・ly ... [名] 1 [C] ⦅集合的⦆ 家族,一家
bea・ver ... [名] (複 ~s [-z],1で⦅集合的⦆ ~) 1 [C] 《哺乳類》 ビーバー,海狸(かいり)
7-12  〈数量の扱い〉欄
[U]名詞でも種類を念頭に置いたとき [C] 扱いできる「種類の[C]」や,集合名詞について,その語の具体的な使用上の数の問題を,以下の見出しで解説している.
bamboo,clothes,crew,equipment,family,food,fruit,juice
7-13  名詞の語形・用法指示
[U]名詞でも種類を念頭に置いたとき [C] 扱いできる「種類の[C]」や,集合名詞について,その語の具体的な使用上の数の問題を,以下の見出しで解説している.
⦅the ~⦆the を付けて用いる.
⦅a ~⦆ ⦅an ~⦆a または an を付けて用いる.
⦅~s⦆ ⦅~es⦆複数形で用いる.
⦅one's ~⦆my,your,his,herなどの所有格の代名詞を付けて用いる.
⦅単数形で⦆the ~,one's ~,a [an] ~ のどの形ででも用いる.
以上については常にこの形で用いるので,原則として[U][C]表示をしていない.ただし,「ふつう…」「時に…」などが前に付される場合は [U][C] 表示をした.
[U]⦅またa ~⦆[U]名詞であるが,a ~ の形でも用いることがある.
⦅形容詞的に⦆形容詞同様にふつう限定用法で用いられる.
7-14  形容詞の用法指示
形容詞には,(イ)名詞の前に置かれて名詞を直接的に修飾する働きと,(ロ)動詞(be,becomeなど)の後に置かれて補語となる働きの2つがあり,本辞典では,(イ)を ⦅限定⦆(限定用法のこと),(ロ)を ⦅叙述⦆(叙述用法のこと)と表示をして区別した.
7-15  動詞の用法指示
⦅受身で⦆常に受身形で用いる.訳語は受身の形を掲げた.
⦅ふつう受身で⦆受身形で用いることが多いが,常に受身で用いるわけではない.訳語は能動態の形を掲げた.
⦅命令形・命令文で⦆命令形・命令文で用いる.訳語は命令形の形を掲げた.
⦅~ oneself⦆再帰代名詞(myself,himselfなど)を目的語として用いる.訳語は自動詞の形を掲げた.
ほかに ⦅疑問文で⦆ ⦅否定文で⦆ ⦅it を伴って⦆(受身不可)(進行形不可)などの用法指示がある.
7-16  自動詞と他動詞の後のthat節
もともと自動詞用法しかない動詞が that節や直接話法をとっても,本辞典ではその語義を他動詞扱いとせず,自動詞のままとした.
例えば care のような自動詞用法しかないものが that節をとる場合,I don't care (about it) that... のように,「前置詞+it」の省略と考えられ,「care that節」のcareは自動詞扱い.直接話法をとる場合も同様に考える.
7-17  副詞の用法指示
文全体を修飾する場合は常に ⦅文修飾⦆ と表示したが,「語修飾」については,注意を要するもののみ注記した.
7-18  ⦅社会的婉曲表現⦆ ⦅男女共通表現⦆
社会的な差別や男女差別を避けるための表現であることを示す.
chal・lenged ... [形] ⦅社会的婉曲表現⦆ 努力を要する(〓disabled「障害のある」の言い換え)
ánchor・pèrson [名] [C] ⦅男女共通表現⦆ ⦅米⦆ ニュースキャスター
7-19  関連形容詞・関連結合形
直接的な派生関係にない形容詞や接頭辞・接尾辞をあげた.
cit・y ... (〓関連形容詞 civil,municipal,urban
mind ... (〓関連形容詞 mental;関連結合形 psycho-