11 各種解説記事およびコラム

本辞典では, 3-2 で掲げた〈語根〉表以外に, 以下のようなコラム記事を収録した.

11-1   [語法ノート][語法]
日本人が誤りやすい文法上の注意事項や語法上の重要事項について, 最新の言語学の成果やBNCなどのコーパス情報を取り入れながら詳しく解説した.解説が比較的短いものは 語法とした.
always
語法ノート

(1)always の位置 ふつう always はbe動詞・助動詞の直後,一般動詞の直前に置く.ただしbe動詞・助動詞が強調される場合はその前に置く

He always is [íz] late.

彼は本当にいつも遅刻する.

often, sometimes とは異なり,文頭には置かない.ただし命令文では文頭にくるのが普通

Always do your best if you want to succeed.

成功したいなら,常に最善を尽くしなさい.

(2)頻度の順位 類語・関連語を頻度の高い順に並べるとおよそ次のようになる:alwaysusually, generally たいていoften, frequently よくsometimes 時々occasionally 折りに触れてseldom, rarely めったに…ないnever 決して…ない

anything
語法ノートanything を用いる条件

(1)原則として否定文・疑問文・条件文では anything を,肯定文では something を用いる. ⇒any [形]

(2)条件文でも,if only を含む文は,肯定的な態度を話し手が示していることが明らかなので,something を用いる

If only John had said something, we'd know what is going on.

ジョンが何か言ってくれさえしていたら,何がどうなっているのかわかるのだが.

(3)動詞の doubt, refuse, prevent;副詞の hardly などは否定的な文脈をつくるので,anything を用いる

I doubt that Mary did anything special yesterday.

メアリーはきのう特に何もしなかったのではないかと思う.

(4)1の語義の anything を否定文の主語とすることはふつう不可.この場合は nothing を用いる

Nothing is wrong.

何も悪いところはない×Anything isn't wrong. や×Not anything is wrong. とは言わない

dangerous
語法「危ない!」と注意を促す時には×Dangerous! とは言わない.Watch out! や Be careful! などを用いる.
11-2   [ここが違う]
語法や類語の中で, between と among のように, 原則として特に紛らわしい2者を取り上げ, その違いをわかりやすく解説した.
between
ここが違うbetween と among

(1)between はふつう二者について用い,三者以上については among を用いる.

この原則に基づき,相互関係を意識している場合や,地理的な位置を明確に述べる時には三者以上にも between を用いる場合がある

a treaty between the three nations

三国間の条約

Switzerland lies between France, Germany, Austria, and Italy.

スイスはフランス・ドイツ・オーストリア・イタリアに囲まれている.

(2)between each [every] act などのように単数形を従えることは好ましくない.

any
ここが違うany と some

(1)原則として疑問文・否定文・条件文では any を,肯定文では some を用いる.

(2)肯定の答えを期待している時は,疑問文や条件節の中でも some を用いる

Is there some milk in the bottle?

びんの中に牛乳がありませんかあるはずですが〓Is there any milk...? は牛乳があるかないか知らずに問う

Would you like some candy?

キャンデーはいかがですか〓ほしいという前提で問う丁寧な言い方.any ではほしいかほしくないかを問うことになる

If you give me some money, I'll do the job.

お金をくれるのなら,その仕事をします〓お金をくれることが前提となっている

(3)any は全体に関わり,some は部分に関わる

I love any jazz.

私はどんな種類のジャズも大好きだ

I love some jazz.

私は幾つかの種類のジャズは大好きだ中には大好きな種類のジャズがある

11-3  [構文ノート]
同じ意味内容を違う品詞や構文で表現する場合の書き換え例を示した.
walk
構文ノート「歩いて5分」の言い方

Five minutes' walk will take you to the library. ⇌Walk five minutes, and you will get to the library. (5分歩けば図書館に着きます).前者は無生物主語の文,後者は「命令文+and...」の構文.

11-4  [コーパスパネル]
英語コーパスBNCによる表現の使用頻度情報をグラフで示した.
different
コーパスパネルdifferent from [than,to]...

…とは違ったと言う場合の different の後の from, than, to の頻度を比較すると,書き言葉では90%近くが from である.話し言葉では from が50%以上を占めるが,to も40%ほど使われている.than は5%弱と少ないが,to, than は from より口語的である.

11-5  [類語ノート]
同義語のニュアンスの違いを適宜, 用例つきで解説した.
choose
類語ノート選ぶ

choose選ぶ意味の最も一般的な語.

select は熟慮の上最良,最善のものを選択する意味のやや堅い語

carefully select the jury

陪審員を慎重に人選する.

pick は手軽に選び出す

pick a card

任意のカードを選ぶ.

11-6  [活用ノート]
用例では取り上げることができない関連語, 百科事典的な事項をまとめた.
that
活用ノート「it is... that節」構文で用いる主な形容詞

certain (確実な),clear (明白な),deplorable (嘆かわしい),essential (肝要な),evident (明らかな),important (重要な),likely (しそうな),unlikely (ありそうにない),natural (自然な),necessary (必要な),obvious (明らかな),peculiar (妙な),possible (可能性がある),probable (ありそうな),sad (悲しい),strange (奇妙な),true (確かな),vital (絶対に必要な)など.

11-7  [背景]
同義語のニュアンスの違いを適宜, 用例つきで解説した.
Achílles(') héel
背景母親が両足首をもって Achilles を Styx(黄泉(よみ)の国の川)の水に浸した時に,足首だけが水につからなくて不死身にならなかった.そのかかとに矢を射られて死んだという伝説より.
moon
背景

(1)月全体を顔に見立てて目鼻を描く習慣があり,カレンダーによく使われる.

(2)月は女性の象徴で,ローマ神話では Diana, Luna,ギリシャ神話では Artemis, Selene が月の女神.月は人に狂気を起こすとされた. ⇒moonstruck, lunatic

11-8  [参考]
語(句)に関連する有益なワンポイント情報がつかめる.
academic year
参考英米ではふつう9月,または10月から翌年6月まで.オーストラリア,ニュージーランドではふつう2月から11月まで.
apple
参考

(1)日本ではリンゴというとまず赤いリンゴを思い浮かべるが,英米では赤のほか緑色のリンゴを思い浮かべる人も多いので apple green (青リンゴ色)という表現がある.

(2)リンゴは健康・家庭などよいイメージをもつが,Eden の園の禁断の木の実や不和のリンゴ(the apple of discord ⇒成句) もあり,人を警戒させるマイナスのイメージもある.

11-9  動詞のタイプ別解説欄
動詞は意味と構文によってさまざまなグループを作っている。
その中でも以下の8つの動詞グループは重要で、英語の基本的な仕組みが概観できる。
これらのグループに属する動詞から解説欄が参照できるようリンクを付与した。
[名付け・任命動詞] call, name, nickname, etc.
[授与動詞] give, make, sell, tell, etc.
[接触動詞] hit, catch, pull, kiss, etc.
[使役動詞] make, let, have, force, etc.
[天気の動詞] rain, drizzle, snow, thunder, etc.
[知覚動詞] see, hear, feel, etc.
[五感の動詞] look, sound, taste, smell, etc.
[移動動詞] go, walk, swim, drive, etc.