NHK大河ドラマ「光る君へ」特集
ジャパンナレッジは約1700冊以上の膨大な辞書・事典などが使い放題の「日本最大級のオンライン辞書・事典・叢書」サービスです。
➞ジャパンナレッジについて詳しく見る
  1. トップページ
  2. >
  3. カテゴリ一覧
  4. >
  5. 文化
  6. >
  7. >
  8. ノーベル賞
  9. >
  10. 生理学

生理学

ジャパンナレッジで閲覧できる『生理学』の日本大百科全書(ニッポニカ)のサンプルページ

生理学
せいりがく
physiology

生体の機能、すなわち生物の体の働きを研究する自然科学の一分野。生体の構造を研究対象とする形態学と対置されるが、両者は本来、不可分の関係にある。
[高橋景一] [真島英信]

生理学の対象

生命そのものは、自然科学の方法のみで完全に理解することはできない。しかし、心臓の拍動や呼吸など、生体の現す個々の生命現象は観察し実験することが可能であり、自然科学的な研究の対象になりうる。こうした考え方から、生理学とは、生命現象の仕組みを自然科学の方法を用いて解明する科学であるということができる。より具体的には、一つの生命現象を、それを構成しているいくつかの現象に分析できるとき、またそれらの部分現象を組み合わせて、もとの現象を説明できるとき、その現象の仕組みがわかったというのである。ある現象がこのようにして説明されると、さらにその部分現象の説明が必要となり、研究はしだいに分析的に発展していく。19世紀以来、生命の最小の単位は細胞であるとする考えが一般的になると、細胞の機能を研究することが生命現象を解明するうえで先決とされるようになり、細胞生理学が生まれた。細胞にみられる機能は多くの生物に共通したもっとも一般的な生命現象であるとする考えから、この立場からの研究は一般生理学ともよばれる。細胞の微細構造がわかってくると、細胞をさらに細分化して、種々の細胞内小器官を扱う細胞下生理学や、それらを構成する分子を扱う分子生理学といった分野も現れた。このように分析的研究が微視化の途をたどる一方で、脳の働きに代表されるような高次の生命現象、さらに個体全体を合目的的に総合し、制御している生命の仕組みも、生理学の対象として自然科学的に追究されている。すなわち、生理学は個々の生命現象の仕組みを明らかにするだけでなく、その合目的的意味までをも明らかにすることを目標にしている。
[高橋景一] [真島英信]

生理学の分類

生理学はその対象や研究方法によっていろいろに分かれる。対象とする生物によって、動物生理学、人体生理学、昆虫生理学、植物生理学、微生物生理学などがあり、生理機能によって、消化生理学、呼吸生理学、感覚生理学、運動生理学、生殖生理学などがある。電気生理学は、生物が示す電気現象の解明を目的とする生理学の一分野である。なお、人体生理学では、生理機能のなかで栄養、成長、生殖など動植物を通じて認められるものを植物性機能とよび、これに対して動物においてよく発達している運動、感覚、神経による相関の三者を動物性機能とよぶ習慣がある。また、生物体の構造上の準位に応じて、前述の細胞生理学のほかに組織生理学、器官生理学などがあり、組織や器官の種類によって筋肉生理学、神経生理学、心臓生理学、大脳生理学などが区別される。さらに、個体の行動のメカニズムを生理学的方法で研究する行動生理学、生体の機能に対する環境の影響を研究する環境生理学などの分野がある。発生生理学、遺伝生理学(生理学的遺伝学)などは、もともと形態学の領域に属していた発生学、遺伝学に生理学的研究法が導入されて生まれたものである。生理学を医学の基礎学問として考えるときは、人体生理学が中心となるが、病的状態を取り扱うものは病態生理学、臨床生理学である。
生理学はまた、研究の立場、方法論の点で一般生理学と比較生理学とに区別される。一般生理学は前述したように生物に共通した一般的な生命現象を研究することによって、生体の機能の基本的原理を追究しようとするもので、理論的、演繹(えんえき)的研究を特徴とする。これに対し、比較生理学は、多様な生物種間の比較研究を通じて生命現象の仕組みを理解しようとする立場で、経験的、帰納的研究に特色がある。しかし、これらの両者は相補的なものである。たとえば、最近の神経生理学の進歩はイカの神経を用いた一般生理学的研究の成果に負うところが多いが、その結論を人体を含めた他の生物の神経にどこまで拡張して適用できるか、また動物界を通じて神経の機能はどのように進化してきたかというような基本的な問いに対する答えは、比較生理学的研究によってのみ得られるものである。
[高橋景一] [真島英信]

生理学の歴史

生理学にあたる「フュシオロギア」physiologiaというラテン語は「フュシス」physis(自然、体の意)と「ロゴス」logos(ことば、学問の意)というギリシア語に由来し、古代イオニアの自然学に発するとされるが、これを現在に近い意味で使い始めたのは、静脈内の弁を実験的に発見したイタリアのファブリキウスである。その弟子ハーベーは血液循環の発見者として有名であるが、その研究は、定量的把握をはじめ、実証的な近代生理学の方法を開拓したものとして重要である。18世紀の生理学はA・フォン・ハラーによって体系化された。19世紀に入ると、神経生理学がC・ベル、マジャンディらにより進歩した。19世紀後半から生理学は非常な勢いで発展するようになる。マジャンディの弟子であるC・ベルナールは一般生理学的立場を強く唱えるとともに、自ら実験的方法により多くの画期的業績をあげ、J・P・ミュラーの業績とともに現代につながる実験生理学の道を確立した。デュ・ボア・レイモンの電気生理学、ヘルムホルツの感覚生理学、一般生理学の創始者とよばれるフェルウォルンの刺激生理学、ロイブの走性や単為生殖の研究なども、19世紀後半から20世紀にかけての生理学上の重要な業績である。
[高橋景一] [真島英信]

現在の生理学

現在では、生物科学全体がかつてない規模で発達、変貌(へんぼう)を遂げるなかで、生理学も大きく変化しつつある。たとえば、細胞をはじめ、生体の微細な構造が分子のレベルで解明されてきた結果、生命現象を分子レベルで論ずることが可能になり、これまで、生理学と生化学、形態学等の間に存在した境界は薄れ、あるいは消滅した。これに伴って、生物物理学や分子生物学、細胞生物学などが新しく発展し、生理学の基礎に重要なかかわりをもつようになった。また、新しい測定技術の発達や、コンピュータの利用によって、従来厳密な解析が困難であった脳の活動や高等動物の個体レベルでの活動など複雑な生命現象の研究が盛んになった。さらに、人類の活動範囲が広がるにつれて、宇宙生理学のような新しい環境生理学の分野が生まれた。このように、生体の機能の研究は、その方法においても、対象においても多様化するとともに、生命科学のきわめて広い分野に直接に関係をもつようになった。
現在、わが国の生理学関係の主要な学会としては、医学部出身者を中心とする日本生理学会(1922設立)のほか、日本植物生理学会(1959設立)、日本動物生理学会(1979設立)などがあるが、生理学に関連する研究の発表は、このほかの多数の学会においても盛んに行われるようになっている。また、国際的な組織としては国際生理科学連合があり、3年ごとに国際会議を開いている。
なお、生理学的の語は、病理学的に対し正常状態をさして用いられることがある。
また、「植物生理学」については別項目とする。
[高橋景一] [真島英信]

上記は、日本最大級のオンライン辞書・事典・叢書サービス「ジャパンナレッジ」のサンプル記事です。

ジャパンナレッジは、自分だけの専用図書館。
すべての辞書・事典・叢書が一括検索できるので、調査時間が大幅に短縮され、なおかつ充実した検索機能により、紙の辞書ではたどり着けなかった思わぬ発見も。
パソコン・タブレット・スマホからご利用できます。


生理学の関連キーワードで検索すると・・・
検索ヒット数 4262
※検索結果は本ページの作成時点のものであり、実際の検索結果とは異なる場合があります
検索コンテンツ
1. 生理学
日本大百科全書
生理機能によって、消化生理学、呼吸生理学、感覚生理学、運動生理学、生殖生理学などがある。電気生理学は、生物が示す電気現象の解明を目的とする生理学の一分野である。 ...
2. 生理学
世界大百科事典
理学,植物生理学,細菌生理学などと呼ぶ。また人体生理学を動物機能の生理学と植物機能の生理学に分ける。動物機能の生理学は動物に特有の脳・神経系と筋肉を扱い,植物機 ...
3. せいり‐がく【生理学】
デジタル大辞泉
生命現象を物理的、化学的手法によって研究する学問。  ...
4. せいり‐がく【生理学】
日本国語大辞典
い、ズングリ、ムックリとした生理学上の美人で」*福翁百話〔1897〕〈福沢諭吉〉七八「人身の構造組織を示すは解剖学(〈注〉アナトミー)にして、其働を説くものを生 ...
5. shēnglǐxué生理学
ポケプロ中日
[名詞]生理学.  ...
6. 生理学
プログレッシブ和英
physiology ...
7. せいり【生理】
ポケプロ和独
Organismus (月経) Menstruation 女性名詞 , Periode 女性名詞 生理学 Physiologie 女性名詞  ...
8. 생리-학生理學
ポケプロ韓日
[名詞]生理学.  ...
12. 生理学研究所
日本大百科全書
NIPS。1967年(昭和42)11月、日本学術会議から人体基礎生理学研究所を設立するよう内閣総理大臣に勧告があり、1977年5月に生理学研究所が創設された。所 ...
13. 生理学的心理学
日本大百科全書
た名称で、生理学的方法を用い、生理学的知識に基礎を置く心理学。生理学的方法と知識の進歩によって生理学的心理学の内容も大きく変化し、実験心理学との区別も明確になっ ...
14. 生理学的心理学
世界大百科事典
心理学的現象と生理学的機構の対応関係を研究する学問であり,19世紀後半の精神物理学や実験心理学の確立とともに始まった。ブントはその主著に〈生理学的心理学〉の名を ...
15. せいりがくてき‐しんりがく【生理学的心理学】
日本国語大辞典
〔名〕生理学的方法を用いて、生理過程との関連から心理学的事象をとらえ研究する学問の一分野。感覚精神生理学、神経心理学、内分泌心理学などを含む。*青草〔1914〕 ...
16. 生理学者
プログレッシブ和英
a physiologist ...
17. National Institute for Physiological Sciences 【生理学研究所】
Encyclopedia of Japan
Interuniversity physiological research facility; one of the three institutes tha ...
28. 運動生理学[スポーツ科学]
イミダス 2016
生理学は消化、呼吸、代謝、感覚などの生理機能を研究する医学の一分野である。運動生理学は運動を人間の基本的な機能の一つとしてとらえ、特に運動中における生理機能を ...
30. 社会生理学
日本大百科全書
研究する部門であり、広く道徳社会学、宗教社会学、法社会学、言語社会学などを包括するものである。なお、社会生理学の用語はこれに先だってフランスの思想家サン・シモン ...
31. しゃかい‐せいりがく[シャクヮイ:]【社会生理学】
日本国語大辞典
〔名〕({フランス}physiologie sociale の訳語)社会の生活的機能としての宗教、道徳、法律、経済などを研究する学問。フランスの社会学者デュルケ ...
32. 植物生理学
日本大百科全書
研究対象によって、代謝生理学、栄養生理学、水分生理学、成長(生長)生理学、運動生理学などに分かれてはいるが、これらには互いに密接にかかわり合った部分がある。また ...
33. しょくぶつ‐せいりがく【植物生理学】
日本国語大辞典
〔名〕植物を対象とした生理学。植物体内における物質代謝・呼吸・生長などを研究対象とする生物学の一分科。*医語類聚〔1872〕〈奥山虎章〉「Phytobiolog ...
34. 心理生理学
日本大百科全書
精神生理学とよぶ人もいる。心理生理学と生理心理学との関連については、ドイツからアメリカに亡命した心理学者スターンJohn A.Stern(1925― )のように ...
35. 精神生理学
日本大百科全書
生理心理学(生理学的心理学)と同義語とする人もあるが、これと対立する語であるとする人もいる。また、近年は心理生理学とよぶ人がある。psychoは古来、哲学や医学 ...
36. 精神生理学
世界大百科事典
人の正常な行動や精神活動あるいは病的な精神状態の身体的側面を生理学的に研究する学問をいい,精神機能を営むうえで基盤となっている生理学的な機序を解明することを目的 ...
38. 大脳生理学
日本大百科全書
視床下部に情動行動を形成する生理学的機序(メカニズム)のあることが実験的に示されたほか、アメリカの脳生理学者マグーンらによって、意識の生理学的機序が脳幹の網様体 ...
40. 電気生理学
日本大百科全書
電気が生体に及ぼす作用と、生体によりおこされる電気現象を主として研究する生理学の一分野。神経細胞や筋細胞などの興奮性細胞は、電気刺激に敏感に反応する。しかも電気 ...
41. でんき‐せいりがく【電気生理学】
デジタル大辞泉
生体に対する電気の作用と、生体における電気発生現象を主に研究する生物学の一分野。  ...
42. でんき‐せいりがく【電気生理学】
日本国語大辞典
筋電図までその範囲は広い。*電気訳語集〔1893〕〈伊藤潔〉「Electro Physiology 電気生理学」デンキセ ...
43. 動物生理学
日本大百科全書
で、動物生理学を比較生理学と同一視する人もあるが、正しくは、一般生理学的なものから比較生理学的なものまで、広い範囲の立場から行われる研究を包括するものと理解すべ ...
44. 日本運動生理学会
デジタル大辞泉プラス
Exercise and Sports Physiology」、略称は「JSESP」。運動・スポーツの生理学に関する研究の発展を図る。事務局所在地は茨城県つくば ...
45. ノーベル医学・生理学賞(2015年)[イミダス編 社会・健康]
イミダス 2016
ノーベル賞6部門の一つで、医学や生理学の分野で優れた業績があった人を顕彰する賞。2015年10月5日、選考元であるスウェーデンのカロリンスカ医学研究所は、同年 ...
46. ノーベル医学・生理学賞(2009年)[イミダス編 社会・健康]
イミダス 2016
2009年10月5日、スウェーデンのカロリンスカ医学研究所は同年のノーベル医学・生理学賞を、「テロメアとテロメアの作る酵素テロメラーゼによる染色体保護の仕組み ...
47. ノーベル医学・生理学賞(2011年)[イミダス編 社会・健康]
イミダス 2016
残りをボイトラー博士、ホフマン博士で等分される。ノーベル医学・生理学賞はストックホルムのカロリンスカ医学研究所が選考し、医学または生理学の分野で功績のあった人に ...
48. ノーベル医学・生理学賞(2010年)[イミダス編 社会・健康]
イミダス 2016
1000万スウェーデンクローナ(約1億2000万円)。ノーベル医学・生理学賞は、ノーベル賞6部門のうちの1つで、医学または生理学の分野で功績のあった人に贈られる ...
49. ノーベル医学・生理学賞(2013年)[イミダス編 社会・健康]
イミダス 2016
ノーベル賞6部門の一つで、医学や生理学の分野で功績があった人を顕彰する賞。2013年10月7日、選考元であるスウェーデンのカロリンスカ医学研究所は、同年の賞を ...
50. ノーベル医学・生理学賞(2014年)[イミダス編 社会・健康]
イミダス 2016
ノーベル賞6部門の一つで、医学や生理学の分野で優れた業績があった人を顕彰する賞。2014年10月6日、選考元であるスウェーデンのカロリンスカ医学研究所は、同年 ...
「生理学」の情報だけではなく、「生理学」に関するさまざまな情報も同時に調べることができるため、幅広い視点から知ることができます。
ジャパンナレッジの利用料金や収録辞事典について詳しく見る▶

生理学と同じノーベル賞カテゴリの記事
イグノーベル賞(日本大百科全書(ニッポニカ))
ノーベル賞のパロディとして1991年に創設された、世界中の独創性に富んださまざまな研究や発明などに対して贈られる賞。イグノーベルIg Nobelという名称は、ノーベル賞と英語の「ignoble(あさましい、不名誉の)」を組み合わせたもの。接頭語としてのigには否定的な意味があり、「裏ノーベル賞」ともいわれる。
生理学(日本大百科全書(ニッポニカ))
生体の機能、すなわち生物の体の働きを研究する自然科学の一分野。生体の構造を研究対象とする形態学と対置されるが、両者は本来、不可分の関係にある。[高橋景一] [真島英信]生理学の対象。生命そのものは、自然科学の方法のみで完全に理解することはできない。しかし、心臓の拍動や呼吸など
オートファジー(日本大百科全書(ニッポニカ))
生物の細胞が、細胞内のタンパク質を分解し、自らの栄養源などとして再利用するシステム。autophagyは、ギリシア語のauto(自ら)、phagy(食べる)からきている。日本語では自食作用と表現される。一般的に、動物では「リソゾーム(リソソーム)」、植物や酵母では「液胞」という細胞内小器官がオートファジーを担う。


「生理学」はノーベル賞に関連のある記事です。
その他のノーベル賞に関連する記事
オートファジー(日本大百科全書(ニッポニカ))
生物の細胞が、細胞内のタンパク質を分解し、自らの栄養源などとして再利用するシステム。autophagyは、ギリシア語のauto(自ら)、phagy(食べる)からきている。日本語では自食作用と表現される。一般的に、動物では「リソゾーム(リソソーム)」、植物や酵母では「液胞」という細胞内小器官がオートファジーを担う。
生理学(日本大百科全書(ニッポニカ))
生体の機能、すなわち生物の体の働きを研究する自然科学の一分野。生体の構造を研究対象とする形態学と対置されるが、両者は本来、不可分の関係にある。[高橋景一] [真島英信]生理学の対象。生命そのものは、自然科学の方法のみで完全に理解することはできない。しかし、心臓の拍動や呼吸など
イグノーベル賞(日本大百科全書(ニッポニカ))
ノーベル賞のパロディとして1991年に創設された、世界中の独創性に富んださまざまな研究や発明などに対して贈られる賞。イグノーベルIg Nobelという名称は、ノーベル賞と英語の「ignoble(あさましい、不名誉の)」を組み合わせたもの。接頭語としてのigには否定的な意味があり、「裏ノーベル賞」ともいわれる。


ジャパンナレッジは約1700冊以上(総額750万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題の「日本最大級のインターネット辞書・事典・叢書サイト」です。日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。
ジャパンナレッジの利用料金や収録辞事典について詳しく見る▶