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  11. 平中物語
日本大百科全書(ニッポニカ)
平中物語
へいちゅうものがたり

平安時代の歌物語。作者不明。『貞文(さだふん)日記』『平中日記』ともいい、『平仲物語』とも書く。成立は『後撰(ごせん)集』と相前後し、950年(天暦4)ごろであろう。内容は平貞文(?―923)を主人公とする歌物語で、39段よりなり、短歌150首、長歌一首、連歌(れんが)二首を含む。平貞文は右近(うこん)中将平好風(よしかぜ)(桓武(かんむ)天皇の曽孫(そうそん))の子で、891年(寛平3)内舎人(うどねり)に初任、以後、右馬権少允(うまのごんのしょうじょう)、右兵衛少尉(うひょうえのしょうじょう)、三河介(みかわのすけ)、侍従、右馬助(すけ)、左兵衛佐(さひょうえのすけ)、さらに極官では三河権介(ごんのすけ)を兼ね、従(じゅ)五位上に達した。武官コースを歩き、その間、侍従職として醍醐(だいご)天皇側近にあるなど、一時代前の在原業平(ありわらのなりひら)の官歴によく似ている。「平中」は、中世・近世では「平仲」と書くことが多く、貞文の字(あざな)とする説があるが、根拠はない。また「平中」の称も、古来のものであるが、その意味につき、父好風の中将の官職によるとか、業平の「在中将」に引かれたものとか、種々の説があるが、なお決着をみない。
 貞文の官職は低かったが、歌人としては名があり、『古今集』に九首入集(にっしゅう)。その邸宅で催された歌合(うたあわせ)は三度あり、『古今集』撰者(せんじゃ)らとの交遊もあった。また在原棟梁(むねやな)の娘(藤原時平室)や伊勢御(いせのご)たちとの交渉もあって、好色者(すきもの)としても名高かったらしい。この物語は明らかに、先行する『伊勢物語』を倣った跡があるが、主人公の人間像にはかなりの差がある。『伊勢物語』のそれには奔放不羈(ふき)の強さがあるが、平中像は、世俗の栄達浮沈に心を労し、女に逃げられて、不如意の恋に泣く小心者である。そのいわば日常的で卑近な甘さが一種の魅力を生んでいるともいえる。
 伝本は国立国会図書館静嘉堂(せいかどう)分館所蔵の伝藤原為相(ためすけ)筆本が唯一の孤本であり、その内容が知られたのは昭和年代に入ってからであった。ほかに『大和(やまと)物語』御巫(みかなぎ)本・鈴鹿(すずか)本に混入した部分や、同じく『大和物語拾穂抄(しゅうすいしょう)』系統本巻末付載説話として若干あるが、本文の異同が甚だしい。
[今井源衛]

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日本国語大辞典
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日本国語大辞典
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35. いさか・う[いさかふ]【叱】
日本国語大辞典
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