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仿製鏡

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仿製鏡
ぼうせいきょう

語意では模倣製作した鏡のことであるが,普通は中国鏡をその周辺地域において模倣製作した鏡をさす。この種の仿製鏡とされるものは,中央アジアやインドシナ,さらに朝鮮半島にもあるが,日本列島における製品が質量ともに顕著で,早くから研究対象となり,仿製鏡の名も日本の研究者の中から始まった。

日本列島の最初の仿製鏡は,前漢鏡を手本として朝鮮半島で開始された中国鏡の模倣製作に起源する。しかし朝鮮半島では,わずかな製品をとどめるのみで,ひきつづいて北部九州地方を中心に,製作・流布されたものが多い。弥生時代のことである。弥生仿製鏡あるいは小型仿製鏡,古式仿製鏡などと呼ばれるこれら一群の仿製鏡は,平均面径7cm程度の小型品で,鏡背の図像文様もあいまい模糊として粗製品が多い。

日本列島の仿製鏡では,古墳時代の遺跡の出土品,とくに古墳の副葬品が圧倒的に多い。古墳時代の仿製鏡のほとんどは,4~5世紀,のちの畿内にあたる地域で製作されたものだが,さきの弥生時代の小型仿製鏡との関係は不明である。その図像文様をみると,中国鏡の忠実な模倣の努力の認められるものがまずあげられる。手本となった中国鏡は,内行花文鏡,方格規矩四神鏡,三角縁神獣鏡をはじめ,平縁の神獣鏡や獣帯鏡,盤竜鏡,画像鏡など各種に及ぶ。その努力のほどは,中国鏡の図像文様を見えるがままに写し仿製鏡の鋳型に彫りこんだため,製品では中国鏡の図像文様の左右逆転したものに仕上がっていることが少なくないところにもうかがえる。しかし,中国鏡のそれぞれの図像文様の形と,その意味するところを理解しえなかったため,製作を重ねるとともに,急速に手本の図像文様とは似つかないものに変化していく。この変化の系列の途中を省略し,最後に近いものだけを取り出すと,それがもともと中国鏡を手本としたものに始まったとは,とうてい判定しえないものとなっている。あるいはまた,いずれの中国鏡の神仙霊獣の像に起源するのか,判定しえない獣状の図像を連ねた獣形鏡,霊獣の羽毛表現のみを取り出して配列したかのような捩文鏡(ねじもんきよう),大型の突起である乳(にゆう)や空間を充塡する小さな珠文で鏡背をうずめた乳文鏡や珠文鏡など,中国鏡の図像文様から直接一部分を取り出し,それを変化させていったものか,中国鏡の模倣製作以後の変化のなかで派生した図像文様なのか,判定困難なものも少なくない。なお,中国鏡を直接鋳型土に押しつけて図像文様を写し取り,鋳型として製品を作ったいわゆる踏返し鏡があり,この類も中国鏡の忠実な模倣品に加えることができよう。

仿製鏡には,中国鏡の図像を換骨奪胎し,独得の主要図像とした類もある。その代表は〓竜鏡(だりゆうきよう)で,あたかも一つの頭部に正面形と側面形の二つの胴部がついたような怪獣像が配されている。しかしこの怪獣像は,その製作にあたった工人,または工人グループが考案した図像であって,広く認知されていた怪獣のイメージを図像化したものではなかったらしい。それが図像として定着して製作され続けることはなく,少数の製品を残すのみで,図像としても急激に変化するからである。その状況は,仿製鏡における中国鏡起源の図像文様の変化と共通する。いずれにせよ仿製鏡の図像文様は,ほとんどが一般に認知理解しえたものではなかったのであろう。ましてや現代人には,きわめて理解し難いものが多い。

これらに対して,直弧文鏡(ちよつこもんきよう)や家屋文鏡,あるいは狩猟文鏡など,もともと中国鏡にはなく,古墳時代人の理解しえた独自の図像を主要図像として採用したものがある(直弧文)。図像の模倣性が希薄である点を強調すれば,仿製鏡の語意の範囲からはずれたものといえよう。とはいえこれとても,円盤形で背面中央に鈕(ちゆう)をそなえる中国鏡の原則から脱することはできていない。しかしさらに進んで,中国鏡の原則から明らかに逸脱したものがある。鈴鏡(れいきよう)である。本来光の反射具であった鏡の,円盤形の周囲に鈴をつけた鈴鏡は,音響を発する道具であり,埴輪の巫女の腰部に着装されているところからみれば,呪術具であったといえよう。

中国鏡とくらべると,日本列島の仿製鏡は,一般には青銅鋳製品として,そのなかのスズの含有率が低く,鏡面の研磨も不十分で,映像具としての良好な機能の発揮は保証されていない。これらの点をあわせ考えると,映像機能を否定し,鏡には異質の音響機能をそなえた呪術具としての鈴鏡の存在は,日本列島の仿製鏡の特質を象徴している,といえよう。なお奈良時代以降に,唐・宋代の中国鏡を模倣して製作された鏡については,和鏡と呼んで仿製鏡と区別している。
→鏡
[田中 琢]

[索引語]
弥生仿製鏡 小型仿製鏡 古式仿製鏡 捩文鏡 踏返鏡 〓竜鏡 鈴鏡 和鏡
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