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  11. 菌界
日本大百科全書(ニッポニカ)

菌界
きんかい

植物界、動物界とともに生物界を構成する3要素のうちの一つである。
[寺川博典]

生物観の変遷と菌界

生物には植物と動物があるというのが古来の常識であった。しかし、顕微鏡が発明されて微小な生物群が発見されるようになってからは、それらを含む原生生物界または微生物界が第三の生物界として考えられ、さらに一部では、四界説、五界説が唱えられたが、常識的な生物二元論にかわることはできなかった。たとえば、1969年のウィッタカーの五界説では、次の五つがあげられた。(1)モネラ界(原核生物の細菌類と藍藻(らんそう)類)、(2)原生生物界(単細胞性真核生物の藻類、原生動物および菌類の一部であるネコブカビやサカゲツボカビの仲間)、(3)植物界(多細胞性の真核植物)、(4)菌類界(Fungus kingdom前記(1)と(2)を除く狭義の菌類)、(5)動物界(原生動物以外の動物)。この分類では、(1)と(2)は簡単な体制から複雑な体制へ進む進化段階で上下に二分し、(3)~(5)は(2)に続く進化段階を縦に三分していて、全体の区分法に統一性がない。生物界の分類には、起源と進化を含む縦方向の系統分類が重要である。(3)~(5)はそれぞれの栄養法が光合成、吸収、消化の方向に進んだものであるが、この考え方を(1)と(2)に適用すると次のようになる。藍藻類と単細胞性藻類は、酸素発生型光合成を行う植物類の系統であり、原生動物は消化を行う動物類の系統、残りのものは吸収を行う菌類の系統である。このように現存生物群を整理すると三つの系統群となり、菌界Mycotaには原核菌類と真核菌類が含まれる。この考え方は、進化学的および生態学的に裏づけされて、生物三元論に発展する。
[寺川博典]

菌界の成り立ち

原始地球上での化学進化の結果として、約35億年前に誕生した原始生物(原核性単細胞体)群は、周囲の水中に溶けている原始有機物を吸収して生活と進化を行った。その後、この吸収機能に加えて光合成機能が発達したものが、植物類の祖先の藍藻として進化した。吸収を行っていた単細胞体は何億年もかかって真核性に進み、吸収機能に捕食消化という過程が付け加わって真核性の動物類が進化し、他方では真核性の植物類も進化した。最初の原始生物群の吸収という栄養法を受け継いだのが菌類である。これらの三つの系統群のその後の進化は、それぞれの特徴的栄養法をいっそう効果的にするような体制の進化であった。こうして、植物類は葉を広げて生活し、動物類は動いて生活するのに対して、菌類は基物に潜って生活する体制となった。
[寺川博典]

菌界の菌類という見方の重要性

菌界の原核菌類と真核菌類は、いわゆる細菌類と菌類であって、一般に細菌類は菌類に含まれないものとして教えられている。また、細菌類はバクテリアともいわれるが、バクテリアには藍藻類(シアノバクテリア)も含まれる。さらに、普通に使われる「微生物」は菌類や細菌類のほかに原生動物や藻類も含む。細菌類を菌類と区別したり、バクテリア、微生物といった混乱した生物観からは正しい自然観は得られない。生物群が三つに分化したのは、それなりの理由があった。生物体になくてはならない物質、とくに炭素が滞りなく生物界を循環するには、生産者としての植物類、消費者としての動物類、および還元者としての菌界の菌類の三者が不可欠である。植物類が光合成に使用する二酸化炭素の大半は、この菌類の還元作用によっている。地球上にある二酸化炭素は、補給されなければ250~300年で植物類によって使い尽くされる。物質循環という仕組みは地球上有限の物質を無限に使用する道を開いたものであり、これによって三十数億年にわたる生物界の繁栄が保証されてきた。以上は生物三元論の要旨である。この生態系自然観は、人間のあらゆる活動の背景として欠かすことはできない。それには菌界の菌類という概念の確立が重要である。
[寺川博典]

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