NHK大河ドラマ「光る君へ」特集
ジャパンナレッジは約1700冊以上の膨大な辞書・事典などが使い放題の「日本最大級のオンライン辞書・事典・叢書」サービスです。
➞ジャパンナレッジについて詳しく見る
  1. トップページ
  2. >
  3. カテゴリ一覧
  4. >
  5. 自然
  6. >
  7. 植物
  8. >
  9. 菌類
  10. >
  11. 菌界

菌界

ジャパンナレッジで閲覧できる『菌界』の日本大百科全書(ニッポニカ)のサンプルページ

菌界
きんかい

植物界、動物界とともに生物界を構成する3要素のうちの一つである。
[寺川博典]

生物観の変遷と菌界

生物には植物と動物があるというのが古来の常識であった。しかし、顕微鏡が発明されて微小な生物群が発見されるようになってからは、それらを含む原生生物界または微生物界が第三の生物界として考えられ、さらに一部では、四界説、五界説が唱えられたが、常識的な生物二元論にかわることはできなかった。たとえば、1969年のウィッタカーの五界説では、次の五つがあげられた。(1)モネラ界(原核生物の細菌類と藍藻(らんそう)類)、(2)原生生物界(単細胞性真核生物の藻類、原生動物および菌類の一部であるネコブカビやサカゲツボカビの仲間)、(3)植物界(多細胞性の真核植物)、(4)菌類界(Fungus kingdom前記(1)と(2)を除く狭義の菌類)、(5)動物界(原生動物以外の動物)。この分類では、(1)と(2)は簡単な体制から複雑な体制へ進む進化段階で上下に二分し、(3)~(5)は(2)に続く進化段階を縦に三分していて、全体の区分法に統一性がない。生物界の分類には、起源と進化を含む縦方向の系統分類が重要である。(3)~(5)はそれぞれの栄養法が光合成、吸収、消化の方向に進んだものであるが、この考え方を(1)と(2)に適用すると次のようになる。藍藻類と単細胞性藻類は、酸素発生型光合成を行う植物類の系統であり、原生動物は消化を行う動物類の系統、残りのものは吸収を行う菌類の系統である。このように現存生物群を整理すると三つの系統群となり、菌界Mycotaには原核菌類と真核菌類が含まれる。この考え方は、進化学的および生態学的に裏づけされて、生物三元論に発展する。
[寺川博典]

菌界の成り立ち

原始地球上での化学進化の結果として、約35億年前に誕生した原始生物(原核性単細胞体)群は、周囲の水中に溶けている原始有機物を吸収して生活と進化を行った。その後、この吸収機能に加えて光合成機能が発達したものが、植物類の祖先の藍藻として進化した。吸収を行っていた単細胞体は何億年もかかって真核性に進み、吸収機能に捕食消化という過程が付け加わって真核性の動物類が進化し、他方では真核性の植物類も進化した。最初の原始生物群の吸収という栄養法を受け継いだのが菌類である。これらの三つの系統群のその後の進化は、それぞれの特徴的栄養法をいっそう効果的にするような体制の進化であった。こうして、植物類は葉を広げて生活し、動物類は動いて生活するのに対して、菌類は基物に潜って生活する体制となった。
[寺川博典]

菌界の菌類という見方の重要性

菌界の原核菌類と真核菌類は、いわゆる細菌類と菌類であって、一般に細菌類は菌類に含まれないものとして教えられている。また、細菌類はバクテリアともいわれるが、バクテリアには藍藻類(シアノバクテリア)も含まれる。さらに、普通に使われる「微生物」は菌類や細菌類のほかに原生動物や藻類も含む。細菌類を菌類と区別したり、バクテリア、微生物といった混乱した生物観からは正しい自然観は得られない。生物群が三つに分化したのは、それなりの理由があった。生物体になくてはならない物質、とくに炭素が滞りなく生物界を循環するには、生産者としての植物類、消費者としての動物類、および還元者としての菌界の菌類の三者が不可欠である。植物類が光合成に使用する二酸化炭素の大半は、この菌類の還元作用によっている。地球上にある二酸化炭素は、補給されなければ250~300年で植物類によって使い尽くされる。物質循環という仕組みは地球上有限の物質を無限に使用する道を開いたものであり、これによって三十数億年にわたる生物界の繁栄が保証されてきた。以上は生物三元論の要旨である。この生態系自然観は、人間のあらゆる活動の背景として欠かすことはできない。それには菌界の菌類という概念の確立が重要である。
[寺川博典]

上記は、日本最大級のオンライン辞書・事典・叢書サービス「ジャパンナレッジ」のサンプル記事です。

ジャパンナレッジは、自分だけの専用図書館。
すべての辞書・事典・叢書が一括検索できるので、調査時間が大幅に短縮され、なおかつ充実した検索機能により、紙の辞書ではたどり着けなかった思わぬ発見も。
パソコン・タブレット・スマホからご利用できます。


菌界の関連キーワードで検索すると・・・
検索ヒット数 47
※検索結果は本ページの作成時点のものであり、実際の検索結果とは異なる場合があります
検索コンテンツ
1. 菌界
日本大百科全書
整理すると三つの系統群となり、菌界Mycotaには原核菌類と真核菌類が含まれる。この考え方は、進化学的および生態学的に裏づけされて、生物三元論に発展する。寺川博 ...
2. アルカロイド
日本大百科全書
キンポウゲ科、アカネ科、ナス科などの植物に多く存在するが、シソ科やバラ科などの植物にはみられない。また、菌界(麦角アルカロイド)や単子葉植物(ユリ科、ヒガンバナ ...
3. 隠花植物
世界大百科事典
要》の12版(1954)では植物界17門中15門が,寺川博典・前川文夫の分類表(1977)では菌界15門と植物界9門中の8門および残り1門中の17綱中12綱がこ ...
4. かい【界】
日本国語大辞典
各五十疋」(7)生物の分類学上の用語。分類群の最上位に設けられる階級。生物は動物界、植物界、菌界などに分けられる。(8)地質時代の時代区分「代」に相当する地質 ...
5. 寄生
日本大百科全書
かつては菌類の寄生菌を、寄生植物に含める場合もあったが、現在では、菌類は独立した一つの生物界(菌界)となっている。栄養法から寄生植物を分けると、自らも光合成を行 ...
6. キノコ
日本大百科全書
意味して用いられるが、いずれも訓で「たけ」とも読み、音はキン、ジョウ、ジンである。 菌は、現在では菌界を構成する菌類を意味するが、元来はキノコ、すなわち英語のマ ...
7. 菌学
日本大百科全書
学校教育においても細菌類と菌類とは区別して教えられてきたが、この二つは菌界を構成する二大生物群で、前者は原核菌類、後者は真核菌類である。菌学は、菌界を構成する菌 ...
8. 菌類
日本大百科全書
植物界と動物界とに並ぶ菌界を構成する生物群。寺川博典菌類観の変遷大昔の人間の目に最初に映った菌類は大形のキノコであった。微小な菌類をみたのは顕微鏡の発明後である ...
9. 菌類
世界大百科事典
系統的な面からも,菌類を菌界Mycotaとし,生物5界説(動物界Animalia,植物界Plantae,原生生物界Protista,原核生物界(モネラ界)Mon ...
10. きん‐るい【菌類】
デジタル大辞泉
寄生や腐生で生活し、胞子や分裂・出芽で増える。生物を動物・植物の二界に分けるときは植物に含めるが、独立の菌界を立てることも行われる。  ...
11. 菌類[生物・動物]
現代用語の基礎知識 2017
体制・栄養摂取法・生殖法などの違いから、これらの生物に、動物界や植物界と対等の界(菌類界 Fungi/菌界 Mycota)が与えられている。一般的な特徴としては ...
12. 原核菌類
日本大百科全書
真核菌類とともに菌界を構成する菌類で、細胞内構造は比較的に簡単である。寺川博典 ...
13. 五界説[生物]
イミダス 2017
アノバクテリア(ラン藻)が属する。原生生物界には原生動物、ラン藻以外の藻類と粘菌類が含まれる。菌界は、俗にキノコ、カビと呼ばれるものと、より原始的な菌類よりなる ...
14. 植物
世界大百科事典
藻類は原核性で,原核生物と別の群にまとめることができる。そこで,生物の世界を,動物界,植物界,菌界,原生生物界,原核生物界(モネラ界)の5界に大別する5界説が提 ...
15. 真核菌類
日本大百科全書
膜で包まれた核を細胞内にもつ菌類で、原核菌類とともに菌界を構成する。編集部 ...
16. しんかく‐せいぶつ【真核生物】
デジタル大辞泉
静止核に核膜があり、核と細胞質とが明瞭に区分される細胞をもつ生物。古細菌・真正細菌以外の全生物で、原生生物界・菌界・植物界・動物界に分類される。→原核生物  ...
17. 生物
日本大百科全書
スピロヘータ、放線菌などを原核菌亜界とし、変形菌、細胞粘菌、子嚢(しのう)菌などの真核菌亜界とあわせて菌界とする分類もある。この分類の場合には地衣界を別に設け、 ...
18. 生物
世界大百科事典
みても,動物,植物のいずれかに含めるのは難があるとして,今日では〈第三の生物〉といわれる菌類(菌界Mycota)なるグループが設定されている。 ウイルスが生物で ...
19. 生物三元論
日本大百科全書
この三生物群による物質循環は、生物群の生存の基盤といえるものである。寺川博典菌界の菌類という見方の重要性植物界と動物界に対する菌界の菌類には、原核菌類および真核 ...
20. 藻菌類
日本大百科全書
ようになった。さらにこれらの菌類は独立して進化してきたものと考えられて、系統分類学上、それぞれ菌界中の門の地位に置かれている。寺川博典 ...
21. 藻類
日本大百科全書
藻類は体制の面からは葉状植物の仲間、生殖法の面からは隠花植物の仲間とされてきた。ちなみに、藻類と菌界を構成する菌類とを比較した場合、両者は、「光合成色素をもち、 ...
22. 動物
日本大百科全書
生物を三つの界に大別したとき、植物界、菌界に対し動物界を構成する一群をいう。現在地球上には100万~150万種もの動物が生存しており、形態も生活様式も多種多様で ...
23. 二毛菌類
日本大百科全書
否定する菌類の独立起源説では、二毛菌である卵菌類とサカゲツボカビ類は、それぞれ独立群として、植物界とは別の菌界に含まれる。寺川博典 ...
24. 門(生物分類)
日本大百科全書
生物を分類するときに類別に用いる一段階の名称。界(動物界、植物界に、近年は菌界が後者から分けられる)に次いで上位の分類段階が門であって、界と綱の間に位置する。門 ...
「菌界」の情報だけではなく、「菌界」に関するさまざまな情報も同時に調べることができるため、幅広い視点から知ることができます。
ジャパンナレッジの利用料金や収録辞事典について詳しく見る▶

菌界と同じ菌類カテゴリの記事
菌糸(改訂新版・世界大百科事典)
真菌植物の本体(栄養体)を構成する分枝した細い糸状体を菌糸といい,その集まりを菌糸体myceliumという。菌糸は先端生長によって伸長し,栄養分となる有機物があり,適当な湿度や温度などの良好な外的条件が続くかぎりいつまでも生長する。隔壁がなく多核体をなすもの(接合菌類)と
子実体(改訂新版・世界大百科事典)
担胞子体sporophoreともいう。菌類において,胞子が形成される部分が集合して塊状となったもの。いわゆるキノコは大型でよく目だつ子実体である。子囊菌類の子実体は子囊果ascocarpといい,一群の子囊を2核性の菌糸(造囊糸)と単相の菌糸が幾重にもとりまいた構造をなしている。
キノコ(きのこ)(日本大百科全書(ニッポニカ))
菌類が形成する大形の子実体(胞子をつくる器官)に与えられた一般的な用語で、「木の子」の意味から生まれた。菌、茸、蕈などもキノコを意味して用いられるが、いずれも訓で「たけ」とも読み、音はキン、ジョウ、ジンである。菌は、現在では菌界を構成する菌類を意味するが、元来はキノコ
菌界(日本大百科全書(ニッポニカ))
植物界、動物界とともに生物界を構成する3要素のうちの一つである。[寺川博典]生物観の変遷と菌界 生物には植物と動物があるというのが古来の常識であった。しかし、顕微鏡が発明されて微小な生物群が発見されるようになってからは、それらを含む原生生物界または微生物界が第三の生物界
子嚢菌類(改訂新版 世界大百科事典)
酵母のように単細胞を主体とするものから,コウジカビ,アオカビ,アカパンカビなどのように糸状細胞のいわゆるカビといわれるものや,さらにマメザヤタケ,チャワンタケ,アミガサタケなどのように比較的大型でキノコ状のものまでをふくむ菌類をまとめた大群である。現在のところ1950属
菌類と同じカテゴリの記事をもっと見る


「菌界」は自然に関連のある記事です。
その他の自然に関連する記事
春一番(日本大百科全書・世界大百科事典・日本国語大辞典)
冬から春へと季節が移るころ、冬のうちとは風向きの異なる強風が急に吹き出すことがある。この現象を戒めたことばで、漁業従事者たちの間で、海難防止の意味合いで使われだしたといわれる。春一(はるいち)ともいう。冬のうちの北風、西風を吹かせた西高東低型の気圧
富士山宝永噴火(国史大辞典)
宝永四年(一七〇七)十一月二十三日に始まり、十二月八日まで続いた富士山南東側中腹付近での大噴火。大量の火山弾、火山灰が降ったため「宝永の砂降り」ともよばれる。被災地域は駿河・相模・武蔵三国に及び、江戸でも降灰があり雪が降るようであったという(新井白石
伊吹山(世界大百科事典・日本大百科全書・日本歴史地名大系)
滋賀県と岐阜県の県境を南北にのびる伊吹山地の主峰で,標高1377m。地質は古生代石灰岩よりなり,山麓の古生層は石灰岩が少ない。その地質構造は,巨大な石灰岩が低角度の衝上面で石灰岩の少ない古生層の上に衝上したものとされていたが,褶曲に衝上を伴ったもので
長良川(日本歴史地名大系)
県のほぼ中央部に東西に横たわる位山(くらいやま)分水嶺山脈中に位置する見当(けんとう)山(一三五二・一メートル)を源流とし、濃尾平野を経て、伊勢湾直前で揖斐(いび)川に合流する。地形的には河川争奪によって流域拡大がなされたとも考えられる大日
アルデバラン(日本大百科全書・世界大百科事典)
おうし座のα(アルファ)星の固有名。アラビア語で「後に続くものAlDabaran」の意で、同じおうし座のプレヤデス(すばる)よりも少し遅れて日周運動していることに由来する。日本でもいくつかの地方で「すばるの後星(あとぼし)」とよばれている。冬の夜空で
自然に関連する記事をもっと見る


ジャパンナレッジは約1700冊以上(総額750万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題の「日本最大級のインターネット辞書・事典・叢書サイト」です。日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。
ジャパンナレッジの利用料金や収録辞事典について詳しく見る▶