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方丈記

ジャパンナレッジで閲覧できる『方丈記』の国史大辞典・日本大百科全書・世界大百科事典・日本古典文学全集のサンプルページ

国史大辞典
方丈記
ほうじょうき
鎌倉時代の随筆。著者鴨長明。一巻。広本と略本三種とがあり、広本の奥に、建暦二年(一二一二)三月末桑門の蓮胤(長明の法号)が外山(京都市伏見区日野の法界寺の南)の庵で執筆したとある。広本には、大福光寺本(重要文化財)などの古本系と嵯峨本などの流布本系の諸本があり、略本には、長享本・延徳本・真名本の三種がある。広略双方の成立関係は分明でないが、略本が補完されて広本になったとみるべきで、広本の方が整斉されており、文学として鑑賞するには、広本によるのがよいが、鎌倉時代の書物として全容を把握するには、略本にも目配りする必要がある。広本の内容は以下のとおりである。(一)序 人と栖(すみか)の無常。(二)世の不思議 若年以来経験した安元の大火、治承の辻風、福原遷都、養和の飢饉と疫病、元暦の大地震などの天災地変がきわめてリアルに描出されており、長明の筆力と作家的資質を示している。(三)世のありにくさ わが身と栖のはかなさ。(四)わが経歴 父方の祖母の家を継いだが、縁欠け身衰えて庵暮しとなり、五十で出家、大原の奥に五年過ごす。(五)日野山の方丈の庵 室内配置・備品、所のさま、石山への遠出。(六)閑居の気味「手の奴、足の乗物」に頼る清貧独居の楽しさと意義を述べ、「住まずして誰かさとらむ」といい切る。(七)結語 仏の教えは事にふれて執心なかれ、閑寂(かんせき)に着するもさわりなりとあり、「いかゞ要なき楽しみを述べてあたら時を過ぐさむ」と我とわが心に烈しく問いかけるが、「心さらに答ふることなし、たゞかたはらに舌根をやとひて不請阿弥陀仏両三遍申して止みぬ」と、人生の無常と閑居生活の楽しみを強調してきたあとで、生きることの根本について自問自答して、整然たる構成を閉じる。本書最大の難語とされる「不請阿弥陀仏」については、「いやいやながらの念仏」とする文学中心の解のほかに「阿弥陀仏は請わなくても救って下さる」とする仏教に主題を引きつけた解もある。略本・広本同文の箇所もあるが、(二)の世の不思議、(四)のわが経歴、(七)の結語に対応する叙述が略本にはない。『岩波文庫』、『日本古典文学大系』三〇、『日本古典文学全集』二七、『新潮日本古典集成』などに所収。
→鴨長明(かものちょうめい)
[参考文献]
簗瀬一雄『方丈記全注釈』
(西尾 光一)


日本大百科全書
方丈記
ほうじょうき

鎌倉初期の随筆。一巻。鴨長明(かものちょうめい)作。1212年(建暦2)3月成立。書名は長明が晩年に居住した日野の方丈(一丈四方、すなわち約3.3メートル四方)の草庵(そうあん)にちなんだもの。「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という無常観を表白する流麗な文章に始まり、五つの大きな災厄がまず記述される。京都の3分の1を焼き尽くした安元(あんげん)3年(1177)の大火、治承(じしょう)4年(1180)の旋風、同年、平清盛(きよもり)によって突如強行された福原(現在の神戸市付近)への遷都、養和(ようわ)年間(1181~82)の大飢饉(ききん)、元暦(げんりゃく)2年(1185)の大地震と打ち続く大きな災厄の前にあえなく崩壊していく平安京の光景が迫力ある筆致で描かれる。そして「すべて世の中のありにくく、我が身と栖(すみか)とのはかなくあだなるさま、またかくのごとし」と、この世の無常と、人の命のはかなさが強い語調で結論づけられる。続いて長明に訪れた「折り折りのたがひめ(不遇)」のため、50歳ころ出家、60歳に及び日野に方丈の庵(いおり)を構えるに至った経過が述べられる。庵の周辺は仏道の修養、管絃(かんげん)の修練には好適の地で、そこは長明に世俗の煩わしさから解放された安息を初めて与えた地であり、「仮の庵(いほり)のみのどけくしておそれなし」と賞揚される。しかし、末尾に至り、閑寂な草庵に執着する自らを突然否定し、「不請(ふしゃう)の阿弥陀仏(あみだぶつ)(人に請(こ)われなくとも救済の手を差し伸べてくれる阿弥陀仏の御名の意か)」を唱えて終わる。
前半でこの世の無常を認識し、後半において草庵の閑居を賞美、かつ末尾ではそれらを否定するという一編の構成はきわめて緊密である。漢文訓読調を混ぜた和漢混交文は力強く、論旨を明快なものとしている。とりわけ五大災厄の描写は緊張した文体で、的確、リアルできわめて印象的である。慶滋保胤(よししげのやすたね)の『池亭記(ちていき)』(982成立)などを倣ったものと考えられるが、『平家物語』(13世紀後半成立か)をはじめ、後の中世文学に大きな影響を与えており、『徒然草(つれづれぐさ)』(1331ころ成立か)と並んで、中世の隠者文学の代表である。大福光寺本は鴨長明の自筆かといわれる写本で、その価値は高い。五大災厄の部分を欠く「略本方丈記」といわれるものもあり、長明の自作とも後人の偽作ともいわれ、定説をみない。
[浅見和彦]


『方丈記』[百科マルチメディア]
『方丈記』[百科マルチメディア]
古活字版 鴨長明(かものちょうめい)作 1647年(正保4)刊 国立国会図書館所蔵


改訂新版・世界大百科事典
方丈記
ほうじょうき

鎌倉時代の随筆。鴨長明(法名〓胤)著。1212年(建暦2)成立。1巻。長明が,晩年日野(京都市伏見区)に構えた方丈(約3m四方)の庵での閑居生活のさまと心境を記す。〈ゆく河の流れは絶えずして,しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶ泡(うたかた)は,かつ消え,かつ結びて,久しくとどまりたるためし無し〉で始まる格調高い文章は,和漢混淆文の完成された形として高く評価されている。《枕草子》や《徒然草》と異なり,構想を慶滋保胤(よししげのやすたね)の《池亭記》(982成立)にならい,短編ながら整然とした構造をもつ。人と住家の無常を述べた序章に続き,その例証として長明が体験した災厄,すなわち安元3年(1177)の大火,治承4年(1180)の辻風(竜巻),同年の福原遷都,養和年間(1181-82)の飢饉,元暦2年(1185)の大地震を挙げる。さらに俗世の居住は他を顧慮しなければならず心の休まることのないものであるといい,零落一方の自分の境涯を回顧して,遁世の後に仮のものとして構えた日野の外山の草庵で,かえって心の赴くままにすごせる現在の閑居のさまをよしとするが,末尾では一転して,その閑居に執着すること自体が往生のさまたげではないかと,みずからの遁世の実質を問いつめたまま,それに答えることなく〈不請(ふしよう)の阿弥陀仏〉を二,三遍となえるというかたちで全編の叙述を終える。《徒然草》とともに広く読まれ,後代文学に与えた影響は大である。

上記の梗概は〈大福光寺本〉を代表とする広本(叙述の豊富な本)によったが,ほかに五大災厄などの叙述を欠く略本(〈長享本〉〈延徳本〉〈真名本(まなぼん)〉)がある。通説は広本を長明の自作,略本を後人の改作とするが,略本を草稿本,広本を改稿本とする考えも根強い。また,前半の五大災厄のリアルな描写を記録文学として高く評価するもの,そこに古代貴族社会の崩壊を見つめる長明のまなざしを読みとるもの,末尾の文章を厳しい自己凝視と解して評価する説,その部分を閑居賛美のための周到な韜晦(とうかい)とする説,さらには〈心さらに答ふる事なし〉とみずからの問いかけに対して黙した点に維摩経の不二法門品の方法を見いだし,《方丈記》を長明が到達した高度の宗教的境地を表明した作品と見るなど,諸説がある。
[村上 学]

[索引語]
鴨長明


新編 日本古典文学全集
方丈記
ほうじょうき
【閲覧画面サンプル】
方丈記 全体

【上記の拡大画像】
方丈記 拡大

【現代語訳】
〔一〕 
川は涸れることなく、いつも流れている。そのくせ、水はもとの水ではない。よどんだ所に浮ぶ水の泡も、あちらで消えたかと思うと、こちらにできていたりして、けっしていつまでもそのままではいない。世間の人を見、その住居を見ても、やはりこの調子だ。壮麗な京の町に競い建っている貴賤の住居は、永久になくならないもののようだけれども、ほんとうにそうかと一軒一軒あたってみると、昔からある家というのは稀だ。去年焼けて今年建てたのもあれば、大きな家が没落して小さくなったのもある。住んでいる人にしても、同じこと。所は同じ京であり、人は相変らず大勢だが、昔会ったことがある人は、二、三十人のうち、わずかに一人か二人になっている。朝死ぬ人があるかと思えば、夕方生れる子がある。まさによどみに浮ぶうたかたにそっくりだ。ああ、私は知らぬ、こうして生れたり死んだりする人がどこから来て、どこへ消えてゆくのか、を。また、いったい、仮の宿であるこの世で、誰のためにあくせくし、どういう因縁で豪奢な生活に気をとられるのか。そうして、あくせくした人も、その建てた豪奢な邸宅も、先を争うようにして変ってゆく、消えてゆく。言ってみれば、朝顔とその露に同じだ。露が先に落ちて花が残る。残って咲いているといううち

【目次】
方丈記(扉)
凡例
方丈記(扉)
巨椋ノ池 周辺地図
〔一〕ゆく河
〔二〕安元の大火
〔三〕辻風
〔四〕都遷り
〔五〕飢渇
〔六〕大地震
〔七〕世にしたがえば
〔八〕わが過去
〔九〕方丈
〔一〇〕境涯
〔一一〕勝地は主なければ
〔一二〕閑居の気味
〔一三〕みずから心に問う
解説

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あやす。 ❸物事に強い好感の情をもつ。好む。大切にする。 「いま、草庵を愛するもとがとす」〈方丈記・みづから心に問ふ〉(仏のお教えは、何事にも執着するなという) ...
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日本国語大辞典
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日本国語大辞典
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15. あか‐だな【閼伽棚】
日本国語大辞典
載せる棚。あかのたな。*今昔物語集〔1120頃か〕二〇・三九「閼伽棚の下に、花柄多く積たり」*方丈記〔1212〕「南、竹の簀子(すのこ)を敷き、その西にあかだな ...
16. あから‐さま
日本国語大辞典
二条の院にだに、あからさまにも渡り給はず」*色葉字類抄〔1177〜81〕「白地 アカラサマ、偸閑 同」*方丈記〔1212〕「おほかた、この所に住みはじめし時は、 ...
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全文全訳古語辞典
陰暦の七・八・九月をいう。 「秋は、ひぐらしの声、耳に満てり。うつせみの世をかなしむほど聞こゆ」〈方丈記・境涯〉秋は、ひぐらしの声が、耳に満ちる(ほど聞こえる) ...
18. あ・く【明く】
全文全訳古語辞典
「明くる年は立ち直るべきかと思ふほどに、あまりさへ疫癘うち添ひて、まさざまに、あとかたなし」〈方丈記・飢渇〉翌年は(飢饉にも)立ち直ることができるかと思っている ...
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日本国語大辞典
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20. あ・く【飽く】
全文全訳古語辞典
またこんなふうに。❷望みなどが満たされすぎていやになる。あきあきする。あきる。 「魚は水にあかず」〈方丈記・閑居の気味〉魚は水にあきあきしていやになることがない ...
21. あげ‐て【挙─・上─】
日本国語大辞典
110頃〕八「凡そ紕(まが)ひ紊(みだ)れたる所、胡(いか)んぞ勝(アケ)て言ふ可けむや」*方丈記〔1212〕「いはむや所により身の程にしたがひつつ、心をなやま ...
22. あげ-て【挙げて】
全文全訳古語辞典
〔副詞〕いちいち取り上げて。残らず。 「心を悩ます事は、あげて数ふべからず」〈方丈記・世にしたがへば〉(人それぞれに)心を悩ます事は、一つ一つ数えあげることがで ...
23. あさ【麻】
日本国語大辞典
衣類の総称。→あさ(麻)の衣(きぬ)・あさ(麻)の衣(ころも)・あさ(麻)の喪服(みそ)。*方丈記〔1212〕「藤の衣、あさのふすま、得るにしたがひて肌(はだへ ...
24. あさ-ひ【朝日】
全文全訳古語辞典
」〈枕草子・九月ばかり〉(夜降った雨があがり)朝日がたいそうくっきりと(東の空に)出た時に。方丈記 ゆく河の(3) 「こぞ」知らず、生まれ死ぬる人、いづかたより ...
25. あし の 乗物(のりもの)
日本国語大辞典
馬や車などの乗物がなくて、足で歩くこと。また、その場合の足。*方丈記〔1212〕「今、一身をわかちて二(ふたつ)の用をなす。手の奴、あしののりもの、よくわが心に ...
26. あ-じ【阿字】
全文全訳古語辞典
不生不滅であることを表すとする。 「額に阿字を書きて、縁を結ばしむるわざをなむせられける」〈方丈記・飢渇〉(死者の)額に「阿」の字を書いて、阿字本不生の仏縁を結 ...
27. あじき‐な・い[あぢき‥]【味気無】
日本国語大辞典
あまりならんは、さばかりありがたうめでたかりける御心の深さも、今更にあぢきなくや言ひなされ給はん」*方丈記〔1212〕「さしもあやふき京中の家をつくるとて、宝を ...
28. あたい[あたひ]【価・値】
日本国語大辞典
あたひ)を不限(かぎら)ず玉を買ひ取て、本の寺の仏に返し奉り給て、盗人をば免(ゆる)しつ」*方丈記〔1212〕「頼むかたなき人は、自らが家をこぼちて、市に出でて ...
29. あた・う[あたふ]【能】
日本国語大辞典
*今昔物語集〔1120頃か〕二・四〇「程遙にして輙(たやす)く来り給はむに不能(あたは)じ」*方丈記〔1212〕「おのれが身、数ならずして、権門のかたはらにをる ...
30. あた・ふ【能ふ】
全文全訳古語辞典
にあたはず」の形で)可能である。できる。 「深く喜ぶことあれども、大きに楽しむにあたはず」〈方丈記・世にしたがへば〉心から喜ぶことがあっても、思いきって楽しく振 ...
31. あたま=に[=へ]来(く)る
日本国語大辞典
〉一番鶏・一「ふとあたまへ来たのは、目を覚ますすぐ前までみてゐたやうな気のする夢だった」*方丈記私記〔1970〜71〕〈堀田善衛〉四「食い物の豊富かつ空襲から安 ...
32. あたら【惜・可惜】
日本国語大辞典
氏物語〔1001〜14頃〕朝顔「いでや、御すき心のふりがたきぞ、あたら御疵(きず)なめる」*方丈記〔1212〕「いかが要なき楽しみを述べて、あたら時を過ぐさむ」 ...
33. あだ【徒】
日本国語大辞典
14〕哀傷・八六〇「露をなどあだなる物と思ひけむわが身もくさにおかぬばかりを〈藤原惟幹〉」*方丈記〔1212〕「我が身と栖との、はかなく、あだなるさま、またかく ...
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はかない。もろい。 「すべて世の中のありにくく、我が身とすみかとの、はかなくあだなるさま」〈方丈記・世にしたがへば〉すべてこの世の中が暮らしにくく、自分の身と住 ...
35. あぢき-な・し
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36. あ・つ【当つ】
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43. あと を 留(とど・と)む
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このわたりをばあやにくに情無く」*大日経治安二年点〔1022〕五「四方の相重なり普(アマネシ)」*方丈記〔1212〕「火の光に映じて、あまねく紅なる中に」*太平 ...
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背の長さ七尺(ひろ)余(アマリ)」*源氏物語〔1001〜14頃〕帚木「ななとせあまりがほどに」*方丈記〔1212〕「よそぢあまりの春秋をおくれるあひだに」(2) ...
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野白内証鑑一之巻目録自分の行状の弁解をした野郎の話秘密の色遊びはばれたが、始めより末に至って情勢が好転した野郎の大臣。その相手は羽ぶりのよい撞木町の女郎。悪性をささやいてすすめる耳塚の駕籠屋。客に肌を見せない白人の話 外面は菩薩のようだが内情は
豊後国風土記(日本古典文学全集)
豊後の国。郡は八所、〔郷は四十、里は百十〕駅は九所、〔みな小路〕烽は五所、〔みな下国〕寺は二所〔一つは僧の寺、一つは尼の寺〕である。

豊後の国は、本、豊前の国と合わせて一つの国であった。昔、纏向の日代の宮で天下をお治めになった大足彦の天皇
魯迅 その文学と革命(東洋文庫)
中国近代文学の父であり,偉大な思想家でもある魯迅は,知識人としての苦悩のなかで,中国の「寂寞」を見つめ,自らをも傷つける「革命」を志向する。著者会心の魯迅伝。1965年07月刊
論語徴(東洋文庫)
秦・漢以前の古文辞に対する確固たる自信から孔子の言論を読みとく,論語の注釈のなかでもっとも論争的な注釈書。卓抜した孔子論を展開するとともに,徂徠自身の思想も開陳する。第1巻は,学而,為政,八佾,里仁,公冶長,雍也,述而,泰伯。1994年03月刊
近世和歌集(日本古典文学全集)
年内立春 去年と今年の二本の緒で縒り合わせて掛けて同じ年が一本にまとまらないように、こんがらがってなかなか理解できない春はやって来た。やや趣向倒れの感がある。長嘯子としては機知を働かせたのだろうが。鶯 軒端の梅が咲いていて、一晩中鶯の到来を
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