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  11. 無名草子
日本大百科全書・改訂新版 世界大百科事典

日本大百科全書
無名草子
むみょうぞうし

鎌倉前期の文学評論書。1冊。『建久物語』『無名物語』などの別名がある。著者は明確でないが、藤原俊成(しゅんぜい)の女(むすめ)の可能性が強い。1200年(正治2)かその翌年の成立であろう。83歳で出家しその後多年仏に仕える老女が、京都東山あたりで花摘みをし、最勝光院近くの檜皮屋(ひわだや)で女房たちの語る物語、撰集(せんじゅう)、女性論を聞く構成からなっている。『大鏡』『宝物集(ほうぶつしゅう)』などの影響が考えられる。若い女房の発問に他の女房が答える形式で論は多く進められる。まず、この世において第一に捨てにくいものは何かという問いに答えて、月、文、夢、涙、阿弥陀仏(あみだぶつ)、『法華経(ほけきょう)』があげられ、『法華経』の句が『源氏物語』に引用されていない不満から、『源氏物語』についての多面的批評(巻々の論、登場人物論、感銘深い箇所の論)に転ずる。ついで、『狭衣(さごろも)物語』『夜の寝覚(ねざめ)』『浜松中納言(はままつちゅうなごん)物語』などのほか、現在は伝わっていない散佚(さんいつ)物語を含めた多くの物語、『伊勢(いせ)物語』『大和(やまと)物語』などの歌物語、八代集、私撰集、百首などの歌集、さらに、小野小町(おののこまち)、清少納言(せいしょうなごん)、小式部内侍(こしきぶのないし)、和泉(いずみ)式部、伊勢、紫式部などの女房や、皇后定子(ていし)、上東門院、大斎院(だいさいいん)、小野皇太后宮などの貴女の論が行われ、男性の論に入る糸口で終わっている。平安期の物語、歌集、女性についての総括的評論書ともみられ、ユニークである。『松浦宮(まつらのみや)物語』の著者に藤原定家(ていか)、『うきなみ物語』の著者に藤原隆信(たかのぶ)の名をあげている点も注意されるし、散佚物語研究の資料としても貴重である。
[樋口芳麻呂]



改訂新版・世界大百科事典
無名草子
むみょうぞうし

鎌倉時代の物語評論。著者は新古今歌人の藤原俊成女と推定される。内容は,《源氏物語》を中心に《狭衣(さごろも)物語》《夜半の寝覚(ねざめ)》《浜松中納言物語》その他散逸物語に及ぶ20編の物語についての論評,《万葉集》《古今集》以下《千載集》に至る勅撰集を取り上げた歌集評,および小野小町,清少納言,和泉式部など平安時代の代表的女流歌人に対する人物評からなり,それらを女房たちの会話の形で述べる。なかでも中心となるのは《源氏物語》に関する部分で,桐壺巻をはじめとする代表的な巻々についての批評,作中人物評,作中の印象的な場面の指摘など,それだけで本書の3分の1を占める。このような《源氏物語》への多大な関心は,《千載集》の撰者藤原俊成の〈源氏見ざる歌よみは遺恨のことなり〉に代表されるように,新古今歌人たちの《源氏物語》重視の反映であるといえるが,同時に《無名草子》の記述は,成立後200年近くを経て古典としての権威をもつに至った《源氏物語》が,平安時代末期から鎌倉時代にかけて,人々とくに女性たちにどのように読まれたかを具体的に示す貴重な資料である。批評はおおむね常識的で,ときに一面的な場合もなくはないが,この時期に書かれた藤原伊行《源氏釈》,藤原定家《奥入(おくいり)》といった男性の手になる《源氏物語》研究とは異質の,女性による最初の《源氏物語》批評の書として位置付けることができよう。
[今西 祐一郎]

[索引語]
藤原俊成女 源氏物語
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1. むみゃうさうし【無名草子】
全文全訳古語辞典
[書名]鎌倉初期の文芸評論書。作者未詳。藤原俊成の女説が有力。一一九八年(建久九)から一二〇二年(建仁二)頃成立。一巻。会話体。東山のある家で、女房達が語る、最 ...
2. 無名草子
世界大百科事典
となり〉に代表されるように,新古今歌人たちの《源氏物語》重視の反映であるといえるが,同時に《無名草子》の記述は,成立後200年近くを経て古典としての権威をもつに ...
3. むみょうそうし[ムミャウサウシ]【無名草子】
日本国語大辞典
物語評論。一巻。著者未詳だが、俊成女説が有力。建久九〜建仁二年(一一九八〜一二〇二)頃成立。八三歳の老尼が、最勝光院で女房たちの語りあうのを聞いて記したという構 ...
4. むみょうそうし【無名草子】
国史大辞典
『群書類従』物語部所収本(題名『無名草子』)など。『無名草子評解』(冨倉徳次郎)以後、活字刊本も少なくない。 [参考文献]鈴木弘道『校註無名草子』、桑原博史校注 ...
5. 無名草子
日本大百科全書
鎌倉前期の文学評論書。1冊。『建久物語』『無名物語』などの別名がある。著者は明確でないが、藤原俊成(しゅんぜい)の女(むすめ)の可能性が強い。1200年(正治2 ...
6. むみょうぞうし【無名草子】
デジタル大辞泉
鎌倉時代の物語論書。1巻。著者は藤原俊成女説が有力。建久7~建仁2年(1196~1202)ごろの成立。物語・歌集・女流作家などをとりあげて批評したもの。  ...
7. 無名草子
日本古典文学全集
老尼が、女房たちの語りあう話を聞いて記したという構成。『源氏物語』を中心に『狭衣物語』や『夜の寝覚』、『浜松中納言物語』などの物語、歌集、小野小町や清少納言、和 ...
8. あおい[あふひ]【葵】画像
日本国語大辞典
生霊(いきりょう)にとりつかれて、夕霧を産んだのち命を落とす。謡曲、浄瑠璃の題材とされる。*無名草子〔1198〜1202頃〕源氏物語「あふひ、いとあはれに面白き ...
9. 海人の刈藻
日本大百科全書
鎌倉後期に改作された物語。4巻。原作は平安末期に成立したらしく、『無名草子(むみょうぞうし)』『風葉和歌集』にその名がみえるが、散佚した。故兵部卿(ひょうぶきょ ...
10. あまよ の 品定(しなさだ)め
日本国語大辞典
*源氏物語〔1001〜14頃〕夕顔「ありしあま夜のしなさだめの後いぶかしく思ほしなるしなじなあるに」*無名草子〔1198〜1202頃〕源氏物語「『帚木』のあまよ ...
11. あ・る【有・在】
日本国語大辞典
二六八・男こそなほいとありがたく「男こそ、なほいとありがたくあやしき心地したるものはあれ」*無名草子〔1198〜1202頃〕月「知らぬ昔、今、行くさきも、まだ見 ...
12. いい‐た・つ[いひ‥]【言立】
日本国語大辞典
始める。言い出す。*落窪物語〔10C後〕三「かくいひたちてとどまりたらむ、いとをこならむ」*無名草子〔1198〜1202頃〕「同じくは、さらばみかどの御上よりこ ...
13. いい‐た・つ【言ひ立つ】
デジタル大辞泉
いと久しう―・ち給へれば」〈枕・四九〉2 言い始める。 「同じくは、さらば帝の御上よりこそ―・ちなめ」〈無名草子〉3 うわさが立つ。 「いかにして死ぬるやらんと ...
14. いい‐ならわ・す[いひならはす]【言習・言慣】
日本国語大辞典
〔他サ五(四)〕(1)世間で習慣的にそのように言う。言い伝えてくる。*無名草子〔1198〜1202頃〕夢「あだにはかなきことにいひならはしてあれど、夢こそあはれ ...
15. いい‐ふら・す[いひ‥]【言触】
日本国語大辞典
るように言う。吹聴(ふいちょう)する。また、人々の間に言い広める。いいふる。うわさを流す。*無名草子〔1198〜1202頃〕宮の宣旨「男も女も人にもかたりつたへ ...
16. いい‐まさぐ・る[いひ‥]【言弄】
日本国語大辞典
〕四「たけたかく、さしかたにて、みぐるしかりければ、女房どもいひまさぐりて、わらはむとて」*無名草子〔1198〜1202頃〕源氏物語・男の論「さばかりおぢはばか ...
17. いくの【生野】京都府:福知山市/生野村
日本歴史地名大系
ければまだふみもみずあまの橋立和泉式部の娘小式部内侍の歌名を高めたこの歌と逸話は「袋草紙」「無名草子」「十訓抄」「古今著聞集」などにも載り、世に知られる。ほかに ...
18. いさ‐や
日本国語大辞典
1001〜14頃〕帚木「さてその文のことばはと問ひ給へば、いさや、ことなる事もなかりきや」*無名草子〔1198〜1202頃〕仏「『紫式部が法華経をよみ奉らざりに ...
19. 十六夜日記(中世日記紀行集) 302ページ
日本古典文学全集
建長四年(一二五二)以後、八十歳余で没。『新古今集』以下に百十六首入集、『越部禅尼消息』があり、なお『無名草子』作者に擬せられている。→三〇二ページ注三八。前武 ...
20. うけ‐ば・る【受張】
日本国語大辞典
いとうけばり、我うちそひ率ていで顔ならばこそ、さすがに上のおぼしめさん所いとほしかりければ」*無名草子〔1198〜1202頃〕夜半のねざめ「君達後見してあるだに ...
21. う・ける【浮】
日本国語大辞典
をうけてのたまへば」*浜松中納言物語〔11C中〕一「御目に涙をうけて、うちなげかせ給ふも」*無名草子〔1198〜1202頃〕源氏物語・ふしぶしの論「紫の上涙をひ ...
22. うのはな‐がきね【卯花垣根】
日本国語大辞典
ちかきせんざい〈略〉木どもこぶかくおもしろく山里めきてうのはながきねことさらにしわたして」*無名草子〔1198〜1202頃〕いとぐち「南面の庭いと広くて、呉竹( ...
23. 詠歌大概(歌論集) 485ページ
日本古典文学全集
集』(巻五)『十訓抄』(第六)などにも説話がある。和泉式部集・三、古来風躰抄、時代不同歌合、無名草子。近代秀歌自筆本にも。 ...
24. 栄花物語 299ページ
日本古典文学全集
巻八「はつはな」の冒頭に頼通の元服を置くのと同じ方法。以下、入内のための準備。女房や調度を調える。散佚物語。『無名草子』に「初雪といふ物語御覧ぜよ。それにぞ物語 ...
25. おおかがみ【大鏡】
国史大辞典
「世継の翁の物語」(『徒然草』)、「しげき世継の物語」(『文机談』)、「世継大鏡」(『拾遺抄註』『無名草子』)、「世継かがみの巻」(『愚管抄』)などとさまざまな ...
26. 大鏡 389ページ
日本古典文学全集
『後撰集』作者とする女性か。『後撰集』によれば、元良親王(八九〇~九四三)の恋人で宇多法皇に仕えている。『無名草子』には、村上天皇のころ活躍し、博雅三位とほぼ同 ...
27. 大鏡 390ページ
日本古典文学全集
異譚も多い。紫宸殿の南中央の門。ただし、それでは「左の楽屋」と近過ぎ、前ページ注一八引用の『無名草子』に「陽明門」とあるのがよい。「楽屋」は、相撲の節会の折、左 ...
28. おもて の 波(なみ)
日本国語大辞典
*散木奇歌集〔1128頃〕雑上「われ舟のよをうみ渡るつもりにはおもての波におほほれにけり」*無名草子〔1198〜1202頃〕いとぐち「数多年経ぬれば、いよいよ頭 ...
29. おろ‐おろ
日本国語大辞典
紫金山の鳥の黄なる翅の、をい侍るなるやうに、をろをろ承り侍れば、諸行は無常なりと観ずるを」*無名草子〔1198〜1202頃〕ふしぶしの論「人の有様はおろおろよく ...
30. 改訂 京都民俗志 181ページ
東洋文庫
 無名草子に、小町の頭骨に芒が生えていたのを抜いてやったら、風に吹かれるごとに目の痛かったのを取り除いてくれたのはうれしいから、その礼に歌才を与えようと夢にいっ ...
31. 改訂 京都民俗志 233ページ
東洋文庫
左京区貴布禰の螢石は河中にあって、石面へ群螢が集まるという。和泉式部が貴船へ百夜参りして左の和歌を詠んだ由、無名草子などに見える。 物思へば沢の螢も我身よりあく ...
32. かくろえ‐ば・む[かくろへ‥]【隠─】
日本国語大辞典
〔自マ四〕(「ばむ」は接尾語)世に隠れているという様子が見える。*無名草子〔1198〜1202頃〕女「人の姫君・北の方などにてかくろへばみたらむ人はさる事にて」 ...
33. かけかけ‐〓
日本国語大辞典
か〕四「浅ましき心の中の、かけかけしき方ざまをば、今はいかなりとも、思し寄るべきならねど」*無名草子〔1198〜1202頃〕紫式部「君の御有様などをば、いみじく ...
34. かず‐ま・える[‥まへる]【数─】
日本国語大辞典
世間で人並みに認める。*源氏物語〔1001〜14頃〕橋姫「その頃、世にかずまへられ給はぬ古宮おはしけり」*無名草子〔1198〜1202頃〕源氏物語・女の論「世に ...
35. かぜにつれなきものがたり【風につれなき物語】
日本国語大辞典
鎌倉時代の擬古物語。作者未詳。初めの一巻だけが現存。「無名草子」の成立以後で、文永八年(一二七一)成立の「風葉和歌集」に、四六首の歌が収録されているので、それ以 ...
36. かた‐びか〓し【片引】
日本国語大辞典
〔形シク〕(「かたひく(片引)」を形容詞化したものか)ひいきしたくなる。*無名草子〔1198〜1202頃〕源氏物語・女の論「いとほしき人、紫の上、限りなくかたび ...
37. 近代秀歌(歌論集) 457ページ
日本古典文学全集
時代不同歌合。詠歌大概にも。今昔・巻十九に関連説話あり。和泉式部集・三、古来風躰抄、時代不同歌合、無名草子。詠歌大概にも。 ...
38. ぎこものがたり【擬古物語】
国史大辞典
創作し享受し続けた。それは平安物語の延長にほかならず、「物のあはれ」を本質とした。鎌倉時代前期成立の『無名草子』や文永八年(一二七一)成立の『風葉和歌集』によれ ...
39. ぎこものがたり【擬古物語】 : 擬古物語/(一)
国史大辞典
創作し享受し続けた。それは平安物語の延長にほかならず、「物のあはれ」を本質とした。鎌倉時代前期成立の『無名草子』や文永八年(一二七一)成立の『風葉和歌集』によれ ...
40. くらき【暗】
日本国語大辞典
集〔1187〕釈教・一二三一「鷲の山月を入りぬと見る人はくらきにまよふ心なりけり〈西行〉」*無名草子〔1198〜1202頃〕月「勢至菩薩にてさへおはしますなれば ...
41. ぐんしょるいじゅう【群書類従】
国史大辞典
竹とりの翁物語 三一〇 住吉物語 三一一 秋の夜の長物語・鳥部山物語・松帆浦物語・児教訓 三一二 無名草子 三一三 拾遺百番歌合・百番歌合・源氏物語願文 三一四 ...
42. 源氏物語
世界大百科事典
したという《更級日記》の作者が好例である。鎌倉時代にはそうした人々の手になる評論書として,《無名草子》のほか《源氏人々の心くらべ》《源氏狭衣歌合》《伊勢源氏十二 ...
43. 国文学全史 2 平安朝篇 180ページ
東洋文庫
じたり〔古物語類字抄〕。第一巻の散快したるはいうまでもなけれど、余は終の巻妻を失した窪信ず。無名草子羨松の事記して、「蓬吉野山の姫蒼いとく惜しき人なり、式部卿宮 ...
44. 国文学全史 2 平安朝篇 185ページ
東洋文庫
宮下清計(『堤中納言物語』「新註国文学叢書」講談社 昭和二六年刊)等によって研究され、巻一以下の物語、『無名草子』『風葉和歌集』『拾遺百番歌合』等を資料として、 ...
45. 国文学全史 2 平安朝篇 261ページ
東洋文庫
既に散供しまたは残閉せる古物語の面目を今日より窺うに足るべき資料は、拾遺百番歌合、風葉和歌集、無名草子を最とす。拾遺百番は源氏、狭衣の和歌を左右に分ちて合せたる ...
46. 国文学全史 2 平安朝篇 277ページ
東洋文庫
以上を今伝われるとりかへばやの梗概とす。されど鎌倉時代に既に同名異物の二種の本あり、風葉集、無名草子もとりかへばや、今とりかへぱやの二類を挙ぐ。さらば今日伝われ ...
47. 国文学全史 2 平安朝篇 279ページ
東洋文庫
かくいうは、今とりかへぱやによりて論.ぜしなり。さらば古本とこれと如何なる点において相違せりや。無名草子はほ父その消息を漏せり。まず古本とりかへぱやの一斑を説い ...
48. 国文学全史 2 平安朝篇 283ページ
東洋文庫
 の単なる修正本ではなく、全くの改作本であることを明らかにした。なお、『無名草子』の評言に関しては、 鈴木弘道「無名草子に於ける今とりかへばや論」(『平安末期物 ...
49. 国文学全史 2 平安朝篇 284ページ
東洋文庫
  成立年代については、『無名草子』の成立以前であることは明らかであるが、『浜松中納言物語』『狭衣物語』 の影響があることが指摘され(清水泰「とりかへばや物語考 ...
50. こころ の 色(いろ)
日本国語大辞典
〈藤原師尹〉」*山家集〔12C後〕下「懐かしき君が心のいろをいかで露も散らさで袖に包まん」*無名草子〔1198〜1202頃〕文「なかなかうち向ひては、思ふ程も続 ...
「無名草子」の情報だけではなく、「無名草子」に関するさまざまな情報も同時に調べることができるため、幅広い視点から知ることができます。
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