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  11. 沙石集
日本大百科全書・改訂新版 世界大百科事典

日本大百科全書
沙石集
しゃせきしゅう

鎌倉時代の仏教説話集。「させきしゅう」とも読む。10巻。無住(むじゅう)の著。1283年(弘安6)成立。説話を方便として読者を正しい仏教理解へ導こうとするもの。初稿本成立後も数次にわたって添削を加えているため、諸本により内容に若干の差があるが、おおむね、本地垂迹(ほんじすいじゃく)説話、諸仏霊験説話、因果応報説話、遁世(とんせい)往生説話など仏教説話集らしい説話を集めている。それらの間に、滑稽譚(こっけいたん)や艶笑譚(えんしょうたん)などが混在し、ときとして、著者の意図を超えておもしろくなりすぎたためか、添削を経てしだいに堅苦しい話中心の説話集へと変質していった趣(おもむき)がある。同時代の地方(とりわけ東国)の民衆の生活や心情を反映した世間話や、後世、噺本(はなしぼん)の源流のようにもみられた笑話を収録している点に、最大の意義と魅力があるといえる。
[小島孝之]


『沙石集』[百科マルチメディア]
『沙石集』[百科マルチメディア]
古活字版 第1 無住(むじゅう)著 1618年(元和4)刊 国立国会図書館所蔵


改訂新版・世界大百科事典
沙石集
しゃせきしゅう

説話集。無住編。10巻。1279年(弘安2)に起筆し,83年に脱稿したが,その後も編者自身の手で数次にわたる加筆補訂が施された。序文によると,狂言綺語(きようげんきご)も仏果菩提の縁とする平安時代以来の伝統的文学観に立ち,卑近な世俗的話題を通して深遠な仏教の教義を平易に説き明かそうとしたもので,書名も,沙(いさご)を集めて金(こがね)を求め,石を拾って玉を磨く世人の所行になぞらえたものという。特定の編目も立てず,一見雑纂的であるが,巻一に神仏習合思想に基づく神明説話を収め,巻二に諸仏菩薩の霊験利益談を一括するなど,構成的にも配慮の跡がうかがわれ,説話の収録にも類纂的傾向が認められる。各巻の記事内容は,大別して説話部分と,それを例証とした啓蒙的解説部分とから成るが,その意味では仏教説話集であると同時に,法話文学ないし評論文学的側面をも兼備した作品といえよう。収載説話はインド,中国,日本の3国にわたり,その内容は,三宝称讃の説話から滑稽卑俗な巷間の話題に至るまで,きわめて多種多彩である。それらは先出の内外の文献を原拠としたものも多いが,珍重すべきは,編者の見聞を記した独自の話群である。特に編者と地縁の深い東国種の説話,編者周辺の僧俗の話題,編者の趣味・教養に発した多数の和歌説話などには興味深いものが多く,それを通して編者を含む中世の各階層の人々の生態や思想感情にも触れることができる。一方,啓蒙的解説や法話部分も一種の評論・論説文学として注目すべきもので,そこには一宗に偏しない編者の仏教理解の姿勢や,文学(和歌)と仏教の関係という中世文学的テーマに対する編者の見解などが示されている。

 本書の後代への影響は多大で,それは特に説話文学や唱導説教の領域において顕著であるが,近世に入って何度も上梓され,広範な流布を見るに及んでその影響圏もいちだんと拡大し,噺本(はなしぼん)の類はもとより,仮名草子,浮世草子にまで取材されるようになった。近世初中期の間に,《礦石集(こうせきしゆう)》正続,《続沙石集》のごとき類書が制作刊行されたのも,《沙石集》に対する人気の表れにほかならない。
[今野 達]

[索引語]
無住
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1. しゃせきしふ【沙石集】
全文全訳古語辞典
[書名]鎌倉時代の仏教説話集。無住の編著。一二八三年(弘安六)成立。庶民にわかりやすく仏法を教えるための説話集で、笑話や動物説話などに特色がある。「させきしふ」 ...
2. 『沙石集』
日本史年表
1283年〈弘安6 癸未〉 8・‐ 無住道暁, 『沙石集』 を著す(同書巻一〇末原識語)。  ...
3. 沙石集画像
日本大百科全書
鎌倉時代の仏教説話集。「させきしゅう」とも読む。10巻。無住(むじゅう)の著。1283年(弘安6)成立。説話を方便として読者を正しい仏教理解へ導こうとするもの。 ...
4. 沙石集
世界大百科事典
ようになった。近世初中期の間に,《礦石集(こうせきしゆう)》正続,《続沙石集》のごとき類書が制作刊行されたのも,《沙石集》に対する人気の表れにほかならない。今野 ...
5. しゃせきしゅう[シャセキシフ]【沙石集】
日本国語大辞典
鎌倉時代の仏教説話集。一〇巻。無住著。弘安二年(一二七九)起稿し、同六年成立。のち、作者により改訂が繰り返された。庶民を教化・啓蒙するために、説話を随所にまじえ ...
6. しゃせきしゅう【沙石集】
国史大辞典
中央に終始した知識人の持ちえないものを含んでおり、それが『沙石集』によく生かされているが、彼が、みずから告白するように(米沢図書館本『沙石集』四)無類の話好きで ...
7. 沙石集
日本古典文学全集
地方や庶民の生活が活写される。仏教論理を「砂や石」(=沙石)のような卑近な例えで説くという意味で、「沙石集」。著者は臨済宗の僧、無住道暁(無住一円)。1279年 ...
8. させきしゅう【沙石集】
国史大辞典
⇒しゃせきしゅう  ...
9. させきしゅう[サセキシフ]【砂石集・沙石集】
日本国語大辞典
〓しゃせきしゅう(沙石集) ...
10. 『沙石集』[百科マルチメディア]画像
日本大百科全書
古活字版 第1 無住(むじゅう)著 1618年(元和4)刊 国立国会図書館所蔵 ...
11. ぞくしゃせきしゅう[ゾクシャセキシフ]【続沙石集】
日本国語大辞典
鎌倉時代の仏教説話集。六巻。南冥撰。寛保三年(一七四三)序。延享元年(一七四四)刊。「沙石集」の続編で、神事仏事から世事俗事までを幅広く収めている。 ...
12. あい[あひ]【合・会・相】
日本国語大辞典
院政期点〔1080〜1110頃〕九「紫殿懐ひを慰め、黔首(きむしう)胥(アヒ)悦ぶ」*米沢本沙石集〔1283〕四・九「今すこし若くおはす時(とき)人をも相語らひ ...
13. あい‐い【愛恚】
日本国語大辞典
怒り恨むこと。*愚迷発心集〔1213頃〕「愛恚の妄海は眇眇たり、浪に漂ひて船筏を見ず」*米沢本沙石集〔1283〕五本・一「徒(いたつら)に人畜に向ひ、愛恚(アイ ...
14. あい‐かたら・う[あひかたらふ]【相語】
日本国語大辞典
源氏物語〔1001〜14頃〕明石「入道はかの国の得意にて、年ごろあひかたらひ侍れど」*米沢本沙石集〔1283〕七・一〇「京の者にてありける念仏者に此女相語(アヒ ...
15. あい‐ぎょう【愛楽】
仏教語大辞典
親しみ愛すること。 霊異記 中・一九 「誦心経之音、甚微妙、為諸道俗所愛楽」 3 心から願い求めること。 沙石集 四・一 「仏道に入因縁も、人によりて其愛楽し信 ...
16. あい‐けん【愛見】
日本国語大辞典
(1)愛と見。愛は情意的なとらわれで、愛着の心。見は理知的なとらわれで、間違った見解。*米沢本沙石集〔1283〕一〇末・一一「広(ひろく)貪淫(とんいん)を行じ ...
17. あい‐けん【愛見】
仏教語大辞典
1 愛と見。愛は情意的なとらわれで、愛着の心。見は理知的なとらわれで、間違った見解。 沙石集 一〇末・一 「広貪淫を行じて、善知識として、諸の衆生をして、愛見 ...
18. あい‐しゅう[‥シフ]【愛執】
日本国語大辞典
物語〔13C前〕一〇・首渡「閻浮(ゑんぶ)愛執の綱つよければ、浄土をねがふも物うし」*貞享版沙石集〔1283〕七・六「これも男子は愛執のうすきならひなるべし」* ...
19. あい‐しゅう[‥シフ]【愛習】
日本国語大辞典
〔1257〕六・一三「人常に生界の無常を観じて愛習(アイシフ)の心に留まること勿れ」*貞享版沙石集〔1283〕八・一六「只愛習怨心のつたなき思ひをやめて、無念寂 ...
20. あい‐しらい[あひしらひ]
日本国語大辞典
二「あひしらひを目がけて、細かに足手を使ひて」(5)連歌で、付句と前句の取り合わせ。*貞享版沙石集〔1283〕五・二二「紅葉の盛りなるを見て〈略〉かまの口こがれ ...
21. あい‐しん【愛心】
日本国語大辞典
鼻虫〓」*貞享版沙石集〔1283〕七・七「此の愛心をたち、此の情欲をやめて、真実に解脱の門に入り」 ...
22. あい‐じょう[‥ジャウ]【愛情】
日本国語大辞典
〔名〕(1)相手をいとしく思う気持。人や物に対するあたたかい心。*貞享版沙石集〔1283〕八・一六「若し愛情なくは生死断絶せん」*花柳春話〔1878〜79〕〈織 ...
23. あいぜん の 法(ほう)
日本国語大辞典
「あいぜんほう(愛染法)」に同じ。*貞享版沙石集〔1283〕八・一〇「愛染の法に付て、敬愛の秘法を習ふ」 ...
24. あい‐て[あひ‥]【相手】
日本国語大辞典
〔名〕(1)物事を一緒にする一方の人。また、働きかけの対象。*米沢本沙石集〔1283〕七・一一「貧しき侍の宮仕しけるが、主の御相手(アヒテ)になりて侍ける」*太 ...
25. あい‐でし[あひ‥]【相弟子】
日本国語大辞典
〔名〕同じ先生や親方について、学んだり、修業したりする人同士。同門のでし。兄弟でし。*米沢本沙石集〔1283〕一〇本・三「宗春坊とて慈悲深き上人有りき。〈略〉師 ...
26. あい‐なら・ぶ[あひ‥]【相並】
日本国語大辞典
(「あい」は接頭語)【一】〔自バ五(四)〕いっしょに並ぶ。*米沢本沙石集〔1283〕五本・三「一つの調子を本として楽を奏する時は、余の四の音は助けとして、自(お ...
27. あい‐ねん【愛念】
日本国語大辞典
、〈略〉着物を飾り、色を好みて、人のあひ念を好み、歌を謡ひても、よく聞かれんと思ふ」*米沢本沙石集〔1283〕九・二「一切の万物は、一心の反するいはれ、始めて不 ...
28. あい‐らし・い【愛─】
日本国語大辞典
る。可憐(かれん)で情を寄せたいようなさまである。小さくて可憐である。かわいらしい。*米沢本沙石集〔1283〕一・一〇「わらはが養ひ姫は、御みめのうつくしくおは ...
29. あい‐わた・る[あひ‥]【相渡・相渉】
日本国語大辞典
〔自ラ五(四)〕(「あい」は接頭語)(1)互いに通じる。通い合う。かかわり合う。*梵舜本沙石集〔1283〕二・八「念仏・真言は大概風情あひわたり、義門互に相資し ...
30. あお[アヲ]【襖】
日本国語大辞典
せめてはならば、布の破(やれ)あおにても」*観智院本類聚名義抄〔1241〕「襖 アヲ」*米沢本沙石集〔1283〕五末・二「時雨しければせむ方なくて、田刈ける童の ...
31. あお・ぐ[あふぐ]【仰】
日本国語大辞典
2C前〕三・兼通「いとくるしげにて御むしおしやりて、あうがれさせ給ける御すがたつき」*梵舜本沙石集〔1283〕六・七「次日又説法しけるが、中間にあをぎて、『ああ ...
32. あお・る[あふる]
日本国語大辞典
阿布留又夫知」*躬恒集〔924頃〕「遅き馬はあしふちなくてあふれども、心のみこそさきにたちけれ」*梵舜本沙石集〔1283〕八・七「『此馬は尻から渡むと思よ』と心 ...
33. あか‐へい【赤幣】
日本国語大辞典
赤い四手(しで)を篠竹などの細長い木にはさんだもの。赤色の御幣(ごへい)。あかぬさ。*貞享版沙石集〔1283〕一〇・一「年たけたる御子(みこ)、赤幣(あかへい) ...
34. あか‐も【赤裳】
日本国語大辞典
001〜14頃〕真木柱「あかも垂れひきいにし姿をと、憎げなる古言(ふること)なれど」*梵舜本沙石集〔1283〕五末・七「〓所(ぜそ)の雑仕も赤裳 ...
35. あきごう【秋郷】福岡県:筑前国/宗像郡
日本歴史地名大系
伊勢本・東急本の訓は「安支」、元和古活字本の訓は「安岐」であるが、一字の郷名は異例である。「沙石集」巻三(問注ニ我ト劣タル人事)に登場する鎮西の「秋ノ毛ノ上」を ...
36. あきつ‐しま【秋津島・秋津洲・蜻蛉洲】
日本国語大辞典
筑波山之陰〓」*米沢本沙石集〔1283〕一〇末・一一「是の故に王のいみじき徳を讚には、仁秋津嶋(アキツシマ)の外に流(つたは)る ...
37. あき の 毛(け)
日本国語大辞典
語義未詳。*米沢本沙石集〔1283〕三・三「父の跡よりも大なる所也けるを、秋の毛の上の給て下べきにてありけるに、馬鞍用途なむど沙汰したびけり」稲をいうとするのが ...
38. あく【悪】
日本国語大辞典
孰(どれ)が実か悪(アク)かわかりませぬ」【二】〔接頭〕(1)道徳、正義、法などにそむくことを表わす。*梵舜本沙石集〔1283〕七「善天狗、悪天狗と云て二類あり ...
39. あく‐えん【悪縁】
仏教語大辞典
悪い縁。外的な悪い条件。 沙石集 五本・一 「悪縁たる六塵の境に対すれば」  ...
40. あく‐くう【悪空】
仏教語大辞典
勝手気ままに悪いことをする、その間違った空の理解をいう。 三論大義鈔 一・序 「悪空性相之類、乃等苽亹」 沙石集 拾遺・八三 「空に二有。一には悪空。(略)二に ...
41. あく‐し【悪子】
日本国語大辞典
〔名〕(1)性質のよくない子。*米沢本沙石集〔1283〕九・二五「阿闍世王の悪子にあひて此を縁として裟婆世界をうとみ」*或阿呆の一生〔1927〕〈芥川龍之介〉前 ...
42. あく‐しゅ【悪取】
日本国語大辞典
〔名〕まちがって理解すること。→悪取空(あくしゅくう)。*貞享版沙石集〔1283〕三・一「悪取の空にあらず。偏少の空にあらず。住相の空にあらず。これ第一義諦の真 ...
43. あく‐てんぐ【悪天狗】
仏教語大辞典
よこしまなことに執着し、うぬぼれの強い天狗。 沙石集 七・二〇 「悪天狗は一向憍慢偏執のみ有て」  ...
44. あく の 道(みち)
日本国語大辞典
(1)(「悪道(あくどう)」の訓読)仏語。現世で悪事をした者が、死後におちて苦しみを受ける所。*梵舜本沙石集〔1283〕一〇本・六「悪業あれば悪の道に入り、善業 ...
45. あく‐ひつ【悪筆】
日本国語大辞典
〔名〕(1)粗末な筆。つくりの悪い筆。(2)へたな字。また、字がへたなこと。*貞享版沙石集〔1283〕二・五「満七十の老眼を拭うて、悪筆ながら少々裏書仕り畢ぬ」 ...
46. あさぬまむら【浅沼村】栃木県:佐野市
日本歴史地名大系
[現]佐野市浅沼町 富岡村の南に位置し、西は小屋町。「沙石集」に、「下野国アソ沼」に住み殺生を好む鷹遣が、夢の中で自分が殺した鴛の女房に責められ、翌朝雄に嘴を合 ...
47. あさ‐ね【朝寝】
日本国語大辞典
あさい。〓朝起き。《季・春》*梵舜本沙石集〔1283〕一・七「或時朝ねをしておそくはきけるを」*三体詩素隠抄〔1622〕三・五「はや夜( ...
48. あした の 露(つゆ)
日本国語大辞典
物語〔1001〜14頃〕夕顔「あしたの露にことならぬ世を、何をむさぼる身の祈りにか」*米沢本沙石集〔1283〕七・九「夕の煙とのぼり朝の露と消て、父母を見ずして ...
49. あし を 縒(よ)る
日本国語大辞典
自分の足をからみ合わせる。足をよじる。思案するさまなどにいう。*米沢本沙石集〔1283〕一・四「このかんなぎ柱に立ちそひて、足をよりてほけほけと物思ひ質(すがた ...
50. あ‐じ【阿字】
日本国語大辞典
〕「夫阿字と者、迷悟之十界に亙て、凡聖不二の体性にて候間、善悪始てをどろくべからず」*米沢本沙石集〔1283〕二・七「三僧祇の修行を一念の阿字(アジ)に越ふと云 ...
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