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  11. 十訓抄
国史大辞典・日本大百科全書・改訂新版 世界大百科事典

国史大辞典
十訓抄
じっきんしょう
鎌倉時代の説話集。古くは「じっくんしょう」か。三巻十篇。いわゆる妙覚寺本の奥書に、「或人云、六波羅二臈左衛門入道作云々、長時時茂等奉公」とあり、著者は六波羅庁の北条長時・時茂に仕えた人物らしく、奥書と序によれば出家後の晩年、東山の庵で念仏のひまに本書を著わしたという。永井義憲は著者を紀伊の豪族湯浅宗業と推定したが、菅原為長の作とする説もある。建長四年(一二五二)十月成立。序に著作の主旨を述べ、各篇の冒頭に小序をおき当該篇の趣旨を概括し、つづいて例話を掲げ、跋文にわが身と世の無常を詠嘆している。十篇の冒頭には、「第一 可〓〓心操振舞〓事」「第二 可〓〓〓〓事」「第三 不〓〓〓人倫〓事」「第四 可〓〓人上多言等〓事」(上巻)、「第五 可〓〓朋友〓事」「第六 可〓〓忠信廉直旨〓事」「第七 可〓〓思慮〓事」(中巻)、「第八 可〓〓忍諸事〓事」「第九 可〓〓怨望〓事」「第十 可〓〓幾才能芸業〓事」(下巻)と各篇の標目を掲げ、それぞれの徳目にふさわしい説話を類聚している。本書には、少年に善を勧め悪を戒めるため、古今の物語から例話を集め、平易な和文によって説得しようとする教訓的な啓蒙意識が著しいが、また王朝文化に対する懐古と憧憬の念も強く、例話にも王朝時代の説話が最も多い。文章も古文をふまえる傾向があるが、他方説話の抄入は、それぞれの篇の主題にそった簡約な表現を心がけ、一種の実用的な文章を形成する側面が見られる。古文献以外の口承説話、たとえば平清盛・重盛父子、西行、鴨長明らに関する、他書には見出し難い逸話なども収録しており、中世説話文学のなかでも独特な世界を形成している。『(新訂増補)国史大系』一八は流布本と異本とを、『岩波文庫』は異本を底本とし、その欠脱を妙覚寺本系伝本により補い、『古典文庫』は妙覚寺本系の片仮名交り本を、それぞれ翻刻している。
[参考文献]
石橋尚宝『十訓抄詳解』、藤岡継平『十訓抄考』(石橋尚宝『十訓抄詳解』付載)、柳田国男「史論・抄物―特に十訓抄について―」(河出書房『日本文学講座』三所収)、永井義憲「十訓抄の作者」(『日本仏教文学研究』所収)、永積安明「十訓抄の世界」(『中世文学の可能』所収)
(永積 安明)


日本大百科全書
十訓抄
じっきんしょう

鎌倉中期の教訓説話集。「じっくんしょう」とも読む。その序文から、建長(けんちょう)4年(1252)、少年たちに善悪賢愚の処世の道を示すために、東山の麓(ふもと)に庵(いおり)を結ぶ老遁世(とんせい)者によって編まれたことがわかる。この編者を菅原為長(すがわらのためなが)、あるいは六波羅二〓左衛門(ろくはらじろうざえもん)入道(湯浅宗業(むねなり))と推定する説があり、どちらも明証を欠くが、後者に比較的高い蓋然(がいぜん)性が認められる。書名の由来は、「可定心操振舞事」、「可離〓慢事」、「不可侮人倫事」、「可誡人上多言等事」、「可撰朋友事」、「可存忠信廉直旨事」、「可専思慮事」、「可堪忍諸事事」、「可停怨望事」、「可庶幾才能芸業事」の10条の徳目を掲げて、各徳目ごとに例話としての説話を集めていることにある。総数540話ほどの収載説話の出典には和漢の典籍が広く用いられ、編者の教養をうかがわせる。本書はその儒教的教訓性からとくに近世以降広く読まれたが、前代王朝的美意識を引き継ぐ懐古性、宮仕えの立場から説く教訓の妥協的、消極的性格などをもって、近年はかならずしも高い評価を得ていない。しかしながら、源平争乱以降の動乱期を巧みに生き残ったしたたかな精神に裏打ちされた書という見方もあり、また平家関係説話など、他書にみえない興味深い説話も少なくない。重要な文学史的課題を担う書といえる。
[木下資一]



改訂新版・世界大百科事典
十訓抄
じっきんしょう

鎌倉時代の説話集。〈じっくんしょう〉とも。のちに出家して智眼(ちげん)と名のり,六波羅二﨟左衛門(ろくはらにろうさえもん)入道とも呼ばれた湯浅宗業(むねなり)が,まだ京都六波羅に仕えていたころに執筆したもの,と推測されている。1252年(建長4)成立。3巻。善きことをすすめ悪しきことをいましめて,少年たちが思慮分別をつける縁としようとした,と書かれる。10ヵ条の教訓をかかげ,それぞれの教訓を守った例,教訓にそむいた例を和漢にもとめ,説話を例証として説明する。10ヵ条は,〈心ばせ・ふるまひを定むべき事〉〈憍慢を離るべき事〉〈人倫を侮るべからざる事〉〈人の上に多言等をいましむべき事〉〈朋友をえらぶべき事〉〈忠信・廉直の旨を存すべき事〉〈思慮を専らにすべき事〉〈諸事を堪忍すべき事〉〈怨望をとどむべき事〉〈才能・芸業を庶幾すべき事〉である。いずれも主人に仕える俗人のための教訓,処世訓であり,儒教道徳を基盤としているが,調子は低く,通俗的である。収録説話は,〈才能・芸業を庶幾すべき事〉だけで全体のほぼ4分の1を占め,才芸重視の姿勢がうかがえる。平安時代の説話が多数を占め,随所に王朝貴族文化への憧憬の気持ちがあらわされている。説話は教訓の例証としての枠を忠実に守り,叙述に生彩を欠くが,通俗的な教訓が平易に説かれていることが中世・近世には歓迎されて多くの読者を得,また,近代にも読みつがれた。
[出雲路 修]

[索引語]
十訓抄 智眼 六波羅二﨟左衛門(ろくはらにろうさえもん)入道 湯浅宗業
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4. じっきんしょう[ジッキンセウ]【十訓抄】
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鎌倉時代中期の説話集。三巻一〇編。編者未詳。菅原為長説と六波羅二臈左衛門入道説がある。建長四年(一二五二)成立。一〇綱の徳目を主題にたて、和漢の教訓的説話を各綱 ...
5. じっきんしょう【十訓抄】
国史大辞典
[参考文献]石橋尚宝『十訓抄詳解』、藤岡継平『十訓抄考』(石橋尚宝『十訓抄詳解』付載)、柳田国男「史論・抄物―特に十訓抄について―」(河出書房『日本文学講座』三 ...
6. じっきんせう【十訓抄】
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[書名]鎌倉時代の説話集。編者は六波羅二臈左衛門入道か。一二五二年(建長四)成立。幼少の者達に教訓的な説話を十項目の道徳教義別に集めて編してある。  ...
7. 十訓抄
日本古典文学全集
「人に恵(めぐみ)を施すべき事」、「人の上を誡(いまし)むべき事」、「朋友(ほういう)を撰(えら)ぶべき事」「思慮を専らにすべき事」、「諸事を堪忍すべき事」など ...
8. じっくんしょう[ジックンセウ]【十訓抄】
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9. じゅっきん‐しょう[‥セウ]【十訓抄】
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10. あい‐かん【哀感】
日本国語大辞典
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11. あいじゃく‐しょうじ[アイヂャクシャウジ]【愛着生死】
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〔名〕仏語。苦しみの多いこの世の無常を悟らないで、生死を繰り返すこの世に執着すること。*十訓抄〔1252〕九・大江朝綱願文事「是、偏(ひとへ)に愛著生死の業なれ ...
12. あお‐ぬ・く[あふ‥]【仰─】
日本国語大辞典
〔自カ四〕(「あおのく」の変化した語)「あおむく(仰向)【一】」に同じ。*十訓抄〔1252〕七・嵯峨天皇試小野篁学才給事「わらはべの打つ無木 ...
13. あお は 藍(あい)より出(い)でて藍(あい)より青(あお)し
日本国語大辞典
「日蓮遺文‐弘安二年正月三日上野殿御返事」の「あいよりもあをく、水よりもつめたき氷かな」や「十訓抄‐一〇・序」の「藍よりも青からんことはまことに希也といへども」 ...
14. あさ‐ごと【浅事】
日本国語大辞典
〔名〕考えが浅いこと。あさはかなこと。*十訓抄〔1252〕四・佐実罵仲正被切髻事并佐実敦正秀句事「敦正にはよも劣り候はじとて、彼が浅事どもを申しければ」 ...
15. あさ の 中(なか)の蓬(よもぎ)
日本国語大辞典
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16. 蘆屋道満
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道摩ともいう。安倍晴明と術くらべする人物として登場することが多い。《古事談》《宇治拾遺物語》《十訓抄》に,道摩法師が藤原顕光の命で藤原道長に妖術をしかけるが,道 ...
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藤原基俊仮託の歌論書。鎌倉、南北朝期成立。詠歌の心得、文字遣その他の条々について、順徳天皇著『八雲御抄』や『十訓抄』などの内容を抄出、要約して一書を成す。奥書に ...
19. あた・う[あたふ]【能】
日本国語大辞典
相当する。*今昔物語集〔1120頃か〕二三・一八「此(これ)汝が着(きる)物に不能(あたはず)」*十訓抄〔1252〕一・源順野宮歌合判事「十徳なからん人は判者に ...
20. あっ‐きょう[アクキャウ]【悪狂】
日本国語大辞典
〔名〕荒れ狂うこと。荒々しく騒ぐこと。悪騒ぎをすること。*十訓抄〔1252〕五・序「又九条殿遺誡には、高声悪狂の人に伴ふ事なかれと教へ給へり」 ...
21. あなず・る[あなづる]【侮】
日本国語大辞典
人にあなづらるるもの「人にあなづらるるもの。築土のくづれ。あまり心よしと人にしられぬる人」*十訓抄〔1252〕三・不可侮人倫事「或人云。人をあなづる事は、色かは ...
22. あなずる 葛(かずら)にたわぶれす
日本国語大辞典
相手を馬鹿にしてよけいな手出しをすることをたとえていう。*十訓抄〔1252〕三・不可侮人倫事「いふまじき言をもいひ、すまじきわざをもふるまふほどに、あなづるかつ ...
23. あの‐とう[‥タウ]【彼党】
日本国語大辞典
〔代名〕対称。対等または下位の複数の者にいう。*十訓抄〔1252〕一〇・可庶幾才能事「あの党や、今はさたに及ばずとぞ。何物をも取たまへ」 ...
24. あまのはしだて【天橋立】京都府:宮津市
日本歴史地名大系
条院(跡地は現京都市下京区)は「海橋立」とよばれ、橋立の風景を池泉に取り入れていた(拾芥抄、十訓抄)。また歌枕として「能因歌枕」「和歌初学抄」「和歌色葉」「八雲 ...
25. あま‐やか・す【甘─】
日本国語大辞典
。特に、子供をかわいがるあまりにきびしくしつけない。相手が勝手気ままな行動をするのを許す。*十訓抄〔1252〕七・序「愚かなるたぐひ、親のあまやかし、乳母(めの ...
26. あめうし に 腹(はら)突(つ)かる
日本国語大辞典
角がなくておとなしい牝牛に腹を突かれるということから、ばかにしていた相手にやりこめられることをいうことわざ。*十訓抄〔1252〕三・俊綱下播磨大宮先生義定詠尾上 ...
27. あめ‐しずく[‥しづく]【雨雫】
日本国語大辞典
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28. あ‐やつ【彼奴】
日本国語大辞典
〔代名〕他称。第三者をののしっていう。あのやつ。あいつ。きゃつ。*十訓抄〔1252〕一・肥後守盛重心藻優被登用事「主(あるじ)の殿(との)、あやつとらへよと、み ...
29. あらい‐おと・す[あらひ‥]【洗落】
日本国語大辞典
〔他サ五(四)〕洗ってよごれなどを除く。*十訓抄〔1252〕六・敏行不浄写経為冥途妨事「清書の〓紙を書けがしけるとて、文字をあらひ ...
30. あらい‐す・てる[あらひ‥]【洗捨】
日本国語大辞典
あらひす・つ〔他タ下二〕洗って汚れを取り捨てる。*十訓抄〔1252〕六・敏行不浄写経為冥途妨事「文字をあらひ捨たる水、黒大河と成て」*日葡辞書〔160 ...
31. い【網】
日本国語大辞典
や白波たちぬればしたなる草にかけるくものい」*色葉字類抄〔1177〜81〕「網 イ 蛛網」*十訓抄〔1252〕一・余五大夫救蜂蜂報恩事「岩のもとにて、蛛といふも ...
32. いい
日本国語大辞典
表わす語。*今鏡〔1170〕九・真の道「更に読み給ふにも同じやうにいいと泣き居りければこそ」*十訓抄〔1252〕一・皇嘉門院女房問虫鳴声事「三条殿に虫の鳴きしこ ...
33. いい‐あが・る[いひ‥]【言上】
日本国語大辞典
*落窪物語〔10C後〕二「やがてただいひにいひあがりて、車のとこしばりをなん切りて侍りける」*十訓抄〔1252〕八・三条公不怒狼藉事「此殿の侍と物をいひあがりて ...
34. いい‐かか・る[いひ‥]【言掛】
日本国語大辞典
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35. いい‐つぎ[いひ‥]【言継・言次】
日本国語大辞典
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36. いえ[いへ]【家】
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37. い‐おう[ヰ‥]【威応】
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38. いきま・う[いきまふ]【息】
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41. い‐ご[ヰ‥]【囲碁】
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42. いさか・う[いさかふ]【叱】
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43. 和泉式部
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の説話集に見え,病む小式部が母のために命ながらえたいと祈ったところ,一度は病が治ったという《十訓抄》などの話とともに,母と娘の愛情の話として語られた。無常を感じ ...
44. いずみしきぶ【和泉式部】
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の説話集に見え、病む小式部が母のために命ながらえたいと祈ったところ、一度は病が治ったという『十訓抄』などの話とともに、母と娘の愛情の話として語られた。無常を感じ ...
45. いたまし・い【痛・傷】
日本国語大辞典
ふびんだ。痛々しい。いたわしい。*春華秋月抄草嘉禎四年点〔1238〕「痛哉 イタマシキカナヤ」*十訓抄〔1252〕一〇・陸奥守師綱郤藤原基衡賂斬信夫郡司季春事「 ...
46. いだし‐ぬ・く【出抜】
日本国語大辞典
〔他カ四〕他人のすきをみて先を越してする。だしぬく。*十訓抄〔1252〕七・俊綱欲得笛吹成方大丸笛事「始めはゆゆしくはやりたちたりけれども、終にいだしぬかれにけ ...
47. いちいん‐だらに【一印陀羅尼】
日本国語大辞典
〔名〕(陀羅尼は「呪(じゅ)」の梵語)仏語。「いちいんじゅ(一印呪)」に同じ。*十訓抄〔1252〕一〇・源三位頼政射〓事「僧徒の勤には八宗の修学 ...
48. いち‐ぐう【一遇】
日本国語大辞典
〔名〕一度会うこと。一回出会うこと。*十訓抄〔1252〕一・行尊侍鳥羽上皇御遊用意琵琶緒事「千載の一遇なりとなむ中務申しける」*日葡辞書〔1603〜04〕「Ic ...
49. いちじょう‐ぼだい【一乗菩提】
仏教語大辞典
1 一乗真実の悟りであって、二乗・三乗のような方便の悟りではない、という意。 十訓抄 六・一〇 「忽に十善の王位をすてゝ一乗菩提のみちにいらせたまひけり」 2 ...
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日本国語大辞典
〔名〕ある一つの技能、芸能、才能。*十訓抄〔1252〕一〇・源経信秀歌事「人の身には一能の勝るるだに有がたきに」*文明本節用集〔室町中〕「一能 いちノウ」*日葡 ...
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